第九話

 闇の中で声がする。だが素性は分からない。


「分かってるだろうな?」


 闇色の熊の仮面の被った者が言う。


 「分かっている」


 闇色のからすの仮面をかぶった者が答えた。


 「我々はこの異能力さゆえに迫害されてきた」


 闇色の狼の仮面をかぶった者が言った。


 「尊敬もされたが、迫害もされた」


 「魔女狩りは恐ろしいものだ」


 「病魔の呪文を知っているがために病魔を流行させたのはベルダーシュのせいにされて火あぶりにされたものは数知れぬ」


 「ベルダーシュのための理想の部族を築くのだ」


 「御意」


 「そのためには顧問になったりする体制側のベルダーシュは抹殺せねばならぬ」


 「それにしても酋長を脅して闇のベルダーシュになるのは妙案」


 「ベルダーシュでない酋長など傀儡くぐつにすぎぬ」


 「流浪のベルダーシュは我々の呼びかけにどう反応している」


 「興味半々、反発半々といったところでしょうか?」


 「この闇の神殿に向かい、儀式を受け闇のベルダーシュになれば転移魔法も覚えられるというのに」


 「この世界はベルダーシュが支配するべきなのだ」


 「酋長はベルダーシュでなければならぬ」


 「引退制度などもってのほか」


 「新入りよ、もし我々を裏切ったら壮絶な苦しみを与えてから死なせてやる。ゆえゆえ変な気は起こさぬようにな」


 「御意」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る