第二話
二人は試練の洞窟にたどり着く。その先には闇しかない。僕は冥界に行くのであろうか?
「小炎」
なんとザイロは右の掌に小さい炎を持つかのように現した。凄い。だから
「行くぞ? どうした?
「そんなことないです!!」
精一杯の声。だがロインの声は震えていた。
「ふっ」
明らかにザイロは冷笑しロインを見下す眼差しを見せる。またか。またこの視線か。
鍾乳石から雫が落ちる。静かだ。その静けさを破る者が現れた。
洞窟に入ると巨大な
――ぐえっ! ぐえっ!
――ぎいっ! ぎいっ!
病弱で鈍くてドジなロインはこんな弱小の獣にすら立ち向かえない。
体の半分が尾となる蝙蝠はロインに向かって尿を振りかける。甘く見てはいけない。これは強毒の尿なのだ。
「うぎゃああ!!」
ロインは焼けただれた。このままでは死ぬ……。
「お前は何やってるんだ!! 尿ぐらいよけろ!」
そう言うとザイロは回復魔法を唱え左手に渦巻く風をロインに当てた。
「ありがとう」
「行くぞ」
巨大蜘蛛は超音波や糸で攻撃して来る。なんとこの糸も強酸であった。
「うげええええ!」
「だから! お前は何やってるんだ!!」
ザイロは右手の掌を業火に変えた。
「業火の術!!」
そういって巨大蜘蛛を業火で
「行くぞ」
しかしすぐ歩くとロインは落とし穴に落ちた。掌の炎を消し両手でロインを掴まえて事なきを得た。洞窟は真っ暗になっていた。ザイロは掌に炎を再び灯す。すると闇の世界が再び小さい光に満ちた世界になった。
もうザイロはロインを助ける事すら無言になった。ザイロは擦り傷だらけのロインに回復魔法を唱えた。
そして二人は祭壇の場所までやってきた。ザイロは掌の炎を投げる事で次々松明を灯していく。そしてザイロの手から炎が消えた。
ザイロが石で出来た扉を閉め、扉の前に立つ。ロインが逃げないようにするためだ。
「これから、お前を監視する」
やがて二人に呼び掛ける声が響く。
――その子はベルダーシュになりたいというのだな
「はい」
ザイロが答える。するとなにか不思議な風がロインを襲う。ロインの
――その子はたしかにベルダーシュになる資格がある
この風は神様そのものだろうか?
――だが、ベルダーシュになるということは己の性を捨てるという事
――出来るか?
「はい」
ロインに迷いはなかった。惨めな生活とおさらばしたかった。
――ではそなたに力を送り込もうぞ
すると声がする方角から突如光の珠が生まれ光の矢が次々突き刺さる!
矢が突き刺さるたびにロインの力がどんどん
光の矢がなくなったかと思うと光の珠が消えていた。
――魔法を唱えてみろ
ロインは言われた通り魔法を唱えると小炎の魔法を唱えることが出来た。あのザイロと同じ魔法を!!
「すごい」
――今日からお前はベルダーシュだ
「試練に合格したようだな」
――風になれ
(風になれ? どういう事だろう?)
呼びかけが止まった。
――俺は風になれなかったがな
(?)
「聞かなかったことにしてくれ」
ザイロは石の扉を開けた。
「たしかに見届けた」
「帰るぞ」
「はい!!」
帰りもザイロの高等魔術で次々敵を葬る。氷の刃に敵を切り裂く風の刃など様々な魔法だ。数々の魔法にロインは思わず見とれてしまう。ザイロは戦闘時のみ両手が使えないため松明係はロインのものとなった。初めて僕は人の役に立ったのであろうか?
(俺にこんな魔術が使えるんだろうか?)
ロインは不安になってきた。
「何ぼーっとしている! 村に帰るぞ」
鍾乳石から雫が落ちる。静かだ。入口に戻った証拠だ。洞窟を抜けるといかに太陽が偉大なのかが分かる。その太陽を遮る森の緑の色も。
二人は洞窟を出て村に帰った。
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