3 蒼の体操着

そうこうしている内に着替えを済ませた女子達が体育館に合流してきた。

同時に男子一同から歓喜の声が上がる。


「うぅ…、いちいち大げさだよ…」

恥ずかしそうにうつむき加減で入ってきた蒼。


タイトな体操服は蒼の大きな胸を一層大きく演出し、赤いブルマは適度に肉づいたお尻を艶やかに形作っている。


『エロいな…蒼…』

あまり顔には出さないようにしていたが蒼のブルマ姿はそれはもう眼福の一言だった。


「おい、来生見ろよ!日向のブルマだぜ!」

クラスメイトの高木が俺の肩を引き寄せ一緒に蒼を拝もうとけしかけてくる。


「そんな興奮すんなよ、俺は別に…」


「元男とはいえど今は立派な銀髪美少女だぞ?男として羨望の眼差しを送り、女の子として立てないのは野暮ってもんだろ?」


「言いたいことはわかるが俺そういうの苦手なんだって」

がっついて性欲を表に出すのはどうも俺の性に合わない。

本音は全力握り拳だが。


「お前も男ならもうちょっと性欲や他の感情ひっくるめて素直に表現しろって。そんな感じだと肝心な時に伝えるべき言葉が出てこなくて泣きをみるぞ?」


「それっぽい事言ってるがつまるところ感情丸出しで生きろって事じゃねーか」


「そういう事♪」


「はぁ…おまえ生まれる時代を間違えてんじゃねーの?」


「よく言われる。…うほぉ!やっぱ日向も女の子だな!お尻に食い込んだブルマを指でさりげなく直してるぜ!あの仕草がたまんないんだよな…!」


「聞いてるこっちが恥ずかしい」


呆れていると蒼が一瞬こちらに視線を向けてきた


「「!!!」」


お互いそこそこ距離があったにもかかわらず察しあったかのように

顔を赤らめて顔をそむけた。



「…やっぱ涼真も気になるのか…僕の体操着…」



クラスの女子が4チームにワケられ交代しながら試合を開始した。

蒼と小鳥遊は同じチームなので自然と男子の目線も蒼達のチームに集中する。


相手チームの女子にボールが渡り、誰にパスしようか迷っている。


「頂きっ♪」


「速い!」


蒼がスキを見逃さずスティールを決めボールを奪う。

その鮮やかな流れに小鳥遊も思わず声を上げる。


蒼はそのまま低めにドリブルをしながら3ポイントラインまで攻め込んだ。

だがどうも表情が優れない。


「くっそ…む、胸が重い…重心バランスが安定しないからドリブルしずらいったらない…!」


カットインで切り込むフェイントを入れたあとにすかさずシュートを放つ。

放ったボールはキレイな孤を描き、ネットのみの音を周囲に届けながら鮮やかに得点を奪った。


「日向ちゃんすごい!」

小鳥遊が称賛の声をもって蒼に駆け寄ってきた。


「アハハ、流石に昔の体のようには動けなかったよ」

蒼はどこか違和感を治すように胸のあたりをゴソゴソしている。


「…胸、痛いの?」


「痛くはないんだけどその…揺れて動きにくいというか…////」


「あぁ~~…、ブラがちゃんと合ってないのかもね…お店でちゃんとしたの買ったほうがいいかも…」


「ん…実は放課後涼真と一緒に下着を買い直しに行こうかと思ってさ」


「へ…?」

何言ってんのといわんばかりのキョトンとした目で蒼を見る。


「ん…?だから…涼真と一緒に…」


「ダメダメ!何言ってるの!!男の子と一緒に下着買いにいくなんて!!」

顔を真赤にした小鳥遊がアワアワしながらあれこれ説明している。


「え、でも涼真だから大丈夫だし他に頼れる奴も…」


「アタシも行くから!アタシも!」


「…???ま、まぁいいけど涼真は連れてくぜ?誘ったのオレだし…」

そういうと蒼はそのまま試合を続けに戻っていった。


「はぁ…日向ちゃん隙だらけだよ…でもそこがカワイイ…」





「なぁ来生、お前日向をちゃんと女として見てるのか?」


「なんだよいきなり…」

突拍子もない高木の質問にぎょっとする俺。


「いやあれだけ可愛いくなった日向でおまけに胸もお尻も大きいと来たもんだ。普通の男子ながらメロメロなのにお前全然トキめいてないじゃん」


「お前ほどガツガツしてないだけで俺だって蒼の事はちゃんと女としては見ようとしてるよ」


「してる?」


「そりゃお前たちと違って蒼とは付き合いが長いんだ、それが突然女の子になりましたって言われても慣れるのには時間かかるのは当然だろ」


「模範解答だよなぁ」


「うるせぇ~」



二人で言い合っていると女子の試合終了のホイッスルが鳴る。

息の上がった蒼が横目にあたりをみながら腰に手を置き呼吸を整えている。


「「たまんねぇなぁ…あの尻…」」


「「えっ?」」


不意に呼吸があった俺と高木は思わず互いを見合わせた。

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