2 小鳥遊参戦
午前の休憩時間中に俺と蒼は雑談をして時間をつぶしている。
「なぁ涼真」
「ん?」
「僕しばらく涼真がそばにいてくれないとダメかも」
「なに、もう弱音ですか?まだそんな時間経ってないだろ?」
「周りからジロジロ注目される身にもなってよ…」
「この状況が続くなら確かになぁ…」
二人が視線を横に向けると先には目を輝かせた女子や男子が一様に蒼を見つめている。
「数日で落ち着くと思うけどな」
俺がそうボヤくと蒼は大きなため息を付いて突っ伏せた。
「はぁぁぁぁぁ…これがまだまだ続くのかぁ…」
『ごめん、俺は慣れていく気がしない』
俺は心の中で謝った。
お淑やかなな女の子も良いが、蒼と俺のラフとも言える精神的距離感の近さと現実感のない美しさのギャップはなんとも言えない心地よさがある。
そこへスタスタと小鳥遊がやってきた。
「日向さん、次体育だけど体操服は大丈夫?」
「うん。ちゃんと用意してきてるよ。」
「じゃあ着替えは私と一緒にしよっか。周りがみんな女の子だと緊張するでしょ?」
「ゔ…それはきついかも…」
汗がにじみ出る蒼。
「俺はその辺何もできないからな。小鳥遊、頼むよ」
「任されましょう♪」
ほんといい子なのだ、小鳥遊は。
男子や女子にも支持されてる理由がよくわかる。
見た目の可愛さや成績の良さもあるが、何より面倒見が良い。
人との距離感の保ち方が絶妙なんだ。
「俺も見習いたいな」
「「へ?何が??」」
蒼と小鳥遊が口をそろえて俺を見る。
「なんでもない、なんでもない!」
人付き合いが面倒な俺からすれば、小鳥遊のような性格は素直に生きていきやすいんだろうなと羨ましく見える。
今日の体育の内容はバスケットボールで俺のクラスの男子全員鼻息が荒い。
それもそのはず、蒼の体操着が見られるからだ。
しかもブルマと来たもんだから興奮しないほうがおかしいというもの。
「なんだ来生、今日はやらないのか?」
クラスメイトの高木がコート脇で座り込む俺に話しかけてきた。
「あーうん。腱鞘炎になってさ。久々にゲームをやりすぎたみたいで」
苦笑しながらワケを話すと高木は肩をすかせて女性の体育教師に歩み寄る。
「先生、自分もトレーニングしすぎて両肩の痛みが強いんで休んでいいすか?」
「貴方もなの?最近多いわね体痛める子…。内容再考したほうがいいかしら…いいわ、コート横で見学してて」
「うっす!」
こっちに向かってやったぜ、とピースして見せる高木。
よせ…バレるぞ…。
横に座りすと他の生徒の運動を俺と一緒に眺め始めた。
こいつの名前は
ツーブロックショートヘアのいかにも分かりやすい体育会系の見た目をしたやつだ。
こいつとは中学からの仲で蒼以外で比較的仲のいい友人の一人だ。
元サッカー部でゴールキーパーを専門でやっていたが、女癖が悪くて退部させられた恥ずかしい過去をもってる。
それでも気さくなやつなので特に偏見もなくいい話し相手にお互いなってる。
そうこうしている内に着替えを済ませた女子達が体育館に合流してきた。
同時に男子一同から歓喜の声が上がる。
「うぅ…、いちいち大げさだよ…」
恥ずかしそうにうつむき加減で入ってきた蒼。
タイトな体操服は蒼の大きな胸を一層大きく演出し、赤いブルマは適度に肉づいたお尻を艶やかに形作っている。
『エロいな…蒼…』
あまり顔には出さないようにしていたが蒼のブルマ姿はそれはもう眼福の一言だった。
「おい、来生見ろよ!日向のブルマだぜ!」
クラスメイトの高木が俺の肩を引き寄せ一緒に蒼を拝もうとけしかけてくる。
「そんな興奮すんなよ、俺は別に…」
「元男とはいえど今は立派な銀髪美少女だぞ?男として羨望の眼差しを送り、女の子として立てないのは野暮ってもんだろ?」
「言いたいことはわかるが俺そういうの苦手なんだって」
がっついて性欲を表に出すのはどうも俺の性に合わない。
本音は全力握り拳だが。
「お前も男ならもうちょっと性欲や他の感情ひっくるめて素直に表現しろって。そんな感じだと肝心な時に伝えるべき言葉が出てこなくて泣きをみるぞ?」
「それっぽい事いってるがつまるところ感情丸出しで生きろって事じゃねーか」
「そういう事♪」
「はぁ…おまえ生まれる時代を間違えてんじゃねーの?」
「よく言われる。…うほぉ!やっぱ日向も女の子だな!お尻に食い込んだブルマを指でさりげなく直してるぜ!あの仕草がたまんないんだよな…!」
「聞いてるこっちが恥ずかしい」
呆れていると蒼が一瞬こちらに視線を向けてきた
「「!!!」」
お互いそこそこ距離があったにもかかわらず察しあったかのように
顔を赤らめて顔をそむけた。
「…やっぱ涼真も気になるのか…オレの体操着…」
クラスの女子が4チームにワケられ交代しながら試合を開始した。
蒼と小鳥遊は同じチームなので自然と男子の目線も蒼達のチームに集中する。
相手チームの女子にボールが渡り、誰にパスしようか迷っている。
「頂きっ♪」
「速い!」
蒼がスキを見逃さすスティールを決めボールを奪う。
その鮮やかな流れに小鳥遊も思わず声を上げる。
蒼はそのまま低めにドリブルをしながら3ポイントラインまで攻め込んだ。
だがどうも表情が優れない。
「くっそ…む、胸が重い…重心バランスが安定しないからドリブルしずらいったらないぜ…!」
カットインで切り込むフェイントを入れたあとにすかさず3ポイントシュートを放つ。
放ったボールはキレイな孤を描き、ネットのみの音を周囲に届けながら鮮やかに得点を奪った。
「日向ちゃんすごい!」
小鳥遊が称賛の声をもって蒼に駆け寄ってきた。
「アハハ、流石に昔の体のようには動けなかったよ」
蒼はどこか違和感を治すように胸のあたりをゴソゴソしている。
「…胸、痛いの?」
「痛くはないんだけどその…揺れて動きにくいというか…////」
「あぁ~~…、ブラがちゃんと合ってないのかもね…お店でちゃんとしたの買ってたほうがいいかも…」
「ん…実は放課後涼真と一緒に下着を買い直しに行こうかと思ってさ」
「へ…?」
何言ってんのといわんばかりのキョトンとした目で蒼を見る。
「ん…?だから…涼真と一緒に…」
「ダメダメ!何言ってるの!!男の子と一緒に下着買いにいくなんて!!」
顔を真赤にした小鳥遊がアワアワしながらあれこれ説明している。
「え、でも涼真だから大丈夫だし他に頼れる奴m…」
「アタシも行くから!アタシも!」
「…???ま、まぁいいけど涼真は連れてくぜ?誘ったのオレだし…」
そういうと蒼はそのまま試合を続けに戻っていった。
「はぁ…日向ちゃん隙だらけだよ…」
「なぁ来生、お前日向をちゃんと女として見てるのか?」
「なんだよいきなり…」
突拍子もない高木の質問にぎょっとする俺。
「いやあれだけ可愛いくなった日向でおまけに胸もお尻も大きいと来たもんだ。普通の男子ながらメロメロなのにお前全然トキめいてないじゃん」
「お前ほどガツガツしてないだけで俺だって蒼の事はちゃんと女としては見ようとしてるよ」
「してる?」
「そりゃお前たちと違って蒼とは付き合いが長いんだ、それが突然女の子になりましたって言われても慣れるのには時間かかるのは当然だろ」
「模範解答だよなぁ」
「うるせぇ~」
二人で言い合っていると女子の試合終了のホイッスルが鳴る。
息の上がった蒼が横目にあたりをみながら腰に手を置き呼吸を整えている。
「「たまんねぇな…あの尻…」」
「「えっ?」」
不意に呼吸があった俺と高木は思わず互いを見合わせた。
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