6 幼馴染が女の子になって俺のドキドキが止まらない!
『明日学園行くからよろしくね』
蒼から一通のPineが飛んできた。
『もう退院できんのか、早いな』
『来週には戻るって言ったじゃん』
そういやそんな事言ってた気がする。
安堵感で記憶力が落ちたのだろうか。
『わかった、気をつけてな』
『大丈夫だって!』
ようやくいつもの日常が戻ってくる。
ゲームでのラックマッチもブランクを埋めるべく猛練習をしようと蒼と約束してある。
自然と心が躍る。
翌日朝礼が終わった後に担任の橘先生が改まった口調で皆に語りかける。
「みんな、日向君だけど、実は昨日退院したわ」
「おぉやったじゃん!!」
倒れた時が状況だけに皆心配してたようで心底安心したような面持ちだ。
「倒れ方からヤバかったし心配だったけど大丈夫だったのね」
クラスメイト達も嬉しそうに歓声を上げる。
「実は今日来てるのよ」
ピタっと静まる教室。
「へ?だったら入ってくればいいのになんでこないんだ?」
ある生徒が疑問を口にする。俺も同感だ。
「みんなにも事実を受け止めてもらいたいからこの場を設けてるの」
「今から日向君が入ってくるけど、きちんとみんなも向き合ってほしい。いいわね?」
「????」
わけがわからずザワつく教室。間をおかず先生が声を上げる。
「日向君、入って」
ガラガラとゆっくりドアがスライドしていく。
そして開ききったドアに佇む人を見て―
「「「おおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!????????」」」
教室内が驚きの声で地鳴りのように震える。
俺も声を張り上げた一人だ。
何なら驚きのあまり立ち上がっている位だ。
その少女はゆっくりと壇上まで歩み上がり一呼吸おいて―
「や、やぁみんな…ただいま。日向蒼だよ」
「「「まじかよおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」」」
男子女子共に目玉が飛び出んばかりに蒼と名乗る少女を凝視し様々な感想を驚きともって述べている。
「クッソかわええええ…」
「まじかよ、え…女になってんじゃん…」
「あれほんとに日向…?」
「いや本人だってほら、顔つきまんまじゃん!」
皆が驚くのも無理はない。
かつての黒髪は艶やかな銀髪へと退色し、急速な肉体の変化に伴って伸びたであろう髪の毛はシュシュでポニーテールとして纏められ以前の蒼の雰囲気を残していた。
顔も元々美少年と言われるほど顔立ちが良かったので、とても可愛らしい少女の顔へと変化している。
薄いながらもメイクをしており、ほのかに赤みがかったリップは色気をもって蒼の口元を飾っていた。
そして何より当の本人の蒼は皆の顔を見るのが恥ずかしいのか怖いのか、視線を泳がせながらも頬を赤らめ時折周りを見ながらもうつむいていた。
そしてトドメが―
「で…デケェ……!」
一人の生徒が上げた一言だった。
そう、デカイのだ…胸が。巨乳。蒼の胸は文句なしの巨乳に成長していた。
年頃の男子がオチるには十分な条件が揃ってるよね。
男子生徒はもれなく目が釘付けになっている。
その…俺もその一人のうちなんだよね。すんません…。
「あお…い…」
俺は手や腋から汗が止まらないのがはっきり自覚できている。
だからこれは現実なんだと認識できた。
「…!……っ」
蒼が俺を一瞬見つめ、恥ずかしさと後ろめたさの混じったなんとも言えない表情をうかべてうつむいてしまった。
そんな動揺が渦まく場を橘先生が手を叩いて締めた。
「はい皆静かに!見ての通り、日向君は無事手術も成功しましたが、治療の副作用により女の子になってしまいました。こんなご時世ですからみんなもちゃんと一人の個人として接してあげてくださいね」
「は…はい」
「は~い…」
「…たまんねぇ…」
各々隠しきれない動揺をなんとか抑え一様に返事をしてこの場は収まった。
「じゃあ日向く…ごめんなさい、日向さん、来生くんの後ろの席へ」
「は、はいっ!」
一瞬体を強張らせた蒼は上ずった声で返事をし、こちらへ向かって歩き始めた。
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