7 幼馴染が女の子になって俺のドキドキが止まらない!2

 心臓がとてつもなく大きい鼓動で高鳴っているのが体を通して分かる。

 耳から心臓が飛び出てもおかしくないくらいだ。


「蒼が…女の子に…まじかよ…。ど、どんな顔してあいつの前に出ればいいんだ」

 短い時間の中で様々な思考が巡る。


「蒼…」

 蒼はずっと下を向いたままゆっくりこちらへ歩いてくる。


「「っ!」」


 席の横まで来た瞬間、一瞬だが俺の顔を見た。

 恥ずかしいのか頬を赤らめまるで好きな人に自分の生まれた姿をさらしているかのような表情をしている。


『正直エロい…エロすぎる…』


 情けないことに、俺は生まれ変わった蒼を前にした瞬間反射的に欲情した。


『すまん…蒼…おまえ可愛くなりすぎ…!』


 元男とはいえ、あまりの可愛さに自分の感情を抑える事ができない自分を深く恥じた。


 ガタッ


 蒼が椅子を下げ、ゆっくりと着席する。

『蒼が後ろの席に…いる…。これ…コロン…か?めちゃくちゃ甘い匂いするじゃねーか…ふざけんなよ、蒼の奴色気づきやがって…!!』


 何故か怒りまで湧いてくる。


『見舞いを拒否ったりPineで頑なに声を聞かせなかったのはそのせいか…』


 過去のやり取りを思い出すと合点がいかなかった事がすべて繋がった。


『く…クソ…よりにもよってガチ恋の対象が元男の幼馴染かよ…』

 蒼に対する感情や今後どうしていくかの不安で頭が真っ白になる。


 そんな思考のモヤを橘先生の声が払ってくれた。

「じゃあ来生くん、彼女の事…よろしくね?」


「えっ!?…」


「貴方が一番彼女との付き合いが長いと聞いてるわ。私も貴方になら任せられると思っています。引き受けてくれるかしら?」


 先生の言わんとすることは分かる。体が変わり心の変化がついていけるかまだ分からない。

 これまでの人生で一番付き合いが長い俺に蒼へ寄り添ってほしいと言っている。

 そんなの拒む理由はない。モヤは晴れた。


「…はい。大丈夫です」


 俺の返事に納得したのか優しい笑みをうかべた先生は朝礼を締めて

 受け持ちの教室へ向かっていった。

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