3 蒼の変化1
まだ蒼が女の子になる前、春先のある日の出来事だった。
体育でランニングをしていた時の事、蒼が血相を変えて倒れてしまった。
俺が近づくより早く同じクラスの女子である
栗色のショートボブが特徴の女子でクラスでの人気者だ。
「
小鳥遊の慌てぶりから相当まずい状況である事が想像ついた。
「蒼ッ!!!」
俺が駆け寄ると蒼の顔からは血の気が引き、息も荒くなってしまっている。
「大丈夫か!?おい!」
体を揺すって意識を確認しようとしたが小鳥遊が止める。
「だめ!救急車呼ばなきゃ!」
誰よりも冷静だったのは小鳥遊だった。
その後の小鳥遊と先生の的確な指示で救急車を手配し、俺は蒼が心配で救急車に同乗して一緒に病院へ向かった。
連絡を受けかけつけた蒼の両親が医師の診断結果を聞かされうなだれていたのを鮮明に覚えている。
「涼真くん、蒼に付き添ってくれてありがとう。」
「あ、いえ…大事な親友なんで当然です。それよりあの! 蒼は!?」
挨拶や労いのやり取りよりも蒼の容態のほうが気がかりで仕方なかった。
「これから手術が始まるわ。後は私達が残るから貴方は学園へお戻りなさいな」
優しく母性のある声で諭され自然と緊張感が抜けていくのがわかる。
普段の蒼からは想像もつかないくらいギャップを感じるお母さんだ。
立ち振舞いもどこか上品さを感じる。
「…わかりました。これ、俺の番号です。何かあったら連絡ください」
「ありがとう。結果は必ず連絡するわね」
そう言うと俺は軽く頭を下げ、学校に戻った。
当然だけどその日の授業はまるで内容を覚えていない。
蒼の事で頭がいっぱいだった。
「意外だな…俺、あまり他人には興味ないって思ってたのに」
「蒼…無事に帰ってこいよ」
親友の入院がきっかけで自分の中の見えない一面が見えてきた日。
こうして短いようで長い、蒼がいない一ヶ月が始まった。
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