2 元男の子 

「りょ~~ぉまっ!」


 力強さの中に少女特有の甘さを含んだ声が背中から飛んでくる。

 と同時にうなじに柔らかく温かい感触が伝ってきた。


「やめろってあおい、あんまベタベタしてっと周りの連中に勘違いされるだろ」


「別にいいじゃん減るもんじゃないし。相手が涼真なら何の問題もないじゃん」


 鼻で笑って見せたのは日向蒼ひなたあおい

 俺の幼馴染でゲーム仲間。

 元は黒髪が良く似合う美少年だったが、病気の治療の副作用で女の子になってしまった。

 髪の毛も退色し、艶やかな銀髪のポニーテールになった事で元の雰囲気は殆ど残っていない。

 胸?あぁ…すっげぇ大きいぞ。



「良くない。ぜんっぜん良くない」


「男同士ならともかく僕はもう女の子だよ?しかも幼馴染み!大手をふってイチャつけるじゃん」


「お前、こっちの心の準備ってのもあるんだぞ。ある日突然幼馴染が女子になってみろ。距離感やら今までがさつにやってた事を改めなきゃなって思う事もあるんだ」

 

「まぁそれもそっか。それにしても、へぇ~涼真が改める、かぁ♪可愛いとこあるね」

感心してるあたり蒼もこれまでの俺に思うところがあるようだ。


「それよかさ、放課後パフェ食べにいくの付き合ってよ。キンスタにすごく美味しそうな店の記事あってさ。僕も食べたくなった!」


「え、いいけどお前、今日検査だろ?そっちはどうすんの?」


「問診だけだからすぐ終る~。そのあとお店に直行!んふふ~♪何食べよっかな~」


 俺がそう聞くのは理由があって蒼はまだ女の子の体になって日が浅い。

 病院での経過観察があるので時折帰宅するのが遅くなってしまう日がある。


「甘いもの目当てなのは女子力上がっていいとは思うけど、もう少しこう…言葉ももう少し女の子らしくできないのか?」


 見た目や趣向は実に女子らしくなったが、肝心の性格や言葉遣いはまだ少年っぽさが残っている。


「二人で一個のパフェ食べような♪」


 思わぬ提案にドキッとした。


「蒼、…からかってんだよな?」


「さぁ~?♪ どっちでしょうね~♪」


 蒼はスマホの画面を指でスライドさせながら俺を煙に巻いた。

 正直に言うと、胸が高鳴った自分に少し腹が立った。

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