24 中間発表!そして次の試験ですか!?
さあ、この時間がやってきました。
幾つもの夜を超え、わたしは中間試験に挑みました。
とにかく頑張りました。
今日はその結果発表の日。
贅沢は言いません、どうか合格ラインは突破していて下さい……!!
ヘルマン先生がその結果が書かれた張り紙を、廊下に張り出します。
成績順に上から下へと名前が記載されています。
「わたしの名前は……!?」
下から見始めるのが当然になっているのが悲しい性ですが、仕方ありません。
大事なのは名前があることです。
……あ。
「ありました!ちゃんと名前が載っています!」
歓喜!
これで後期もアルマン学園の生徒として通い続けられます!
「安心して、みんな合格だから」
ヘルマン先生もどこかホッとしたような表情です。
落第者が出なくて済んで嬉しいのは先生も同じようです。
「しかも、しかもですよ……?もっとビックリなことが起きてしまいました」
それはわたしの順位です。
入学してきてから常にラピスだ石ころだ、底辺だと言われ続けてきた日々。
そんなわたしのツラい日々もようやく報われる日が来たのです……!
「なんと、わたし!下から二番目なのですっ!!」
そうですっ!底辺脱却!
これで、もうわたしを蔑む人もいなくなることでしょう!
ぼっちからの卒業です!
「うおお……ウソだろ。このオレが最下位だと……!?」
張り紙を見て戦慄しているのはマルコ君でした。
その様子を見て、ヨハン君はなだめます。
「まあまあ。落ち込むなよ」
「そりゃ無理あるだろ!?さすがに最下位はマズいって!」
ふっふっふ……アルマン魔法学園は結果が全ての修羅の道です。
残念でしょうが、このブローチは貴方のモノ。
この底辺の証を差し上げましょう……!
左胸のブローチを外し、手の中へ。
このままヨハン君にプレゼントしてあげます。
「ねえ、あんた」
「うわっ!なんですかっ!?」
と思えば、声を掛けてきたのはシャルでした。
学園内で声を掛けるなんて珍しい……。
きっと今は結果が張り出された紙面に夢中で皆がごった返しているから話しかけるのもオーケーとしているのでしょう。
「それ、渡そうとしてる?」
シャルはわたしの手の中にあるブローチを指差しています。
「うん。最下位から脱却したから、この証を渡そうと思って……」
「言っとくけど、総合順位に変動があるのは学年末にある進級試験が終わってからよ。この中間試験ではランクは動かないわ」
「な、なんですって……!?」
「そりゃそうでしょ。学力も大事だけど、魔法士を育成するんだから魔法の実力があればこそに決まってるじゃない」
「な、なるほど……」
わたしの胸から離れたブローチは、瞬く間に帰ってくるのでした。
望んでません、この不名誉な称号帰ってきて欲しくなかったです。
「そういうシャルは何位……?」
「4位よ」
「4位!?」
一つ順位が上がっています!
「一つだけ上がる所とか、わたしと同じだねシャル!」
「……わたしとあんたの1を同じにして欲しくはないけど……」
ちなみに上位5名は相変わらずの皆さん。
ミミアちゃんとシャルの順位だけが入れ替わっているのでした。
「さすがステラホルダーさんたち、盤石だね」
「これは前哨戦、勝負は進級試験よ。本当の順位はその時に出るんですからね」
おお、やる気に燃えています。
わたしも見習わないと……。
「はい、オッケーね。それじゃ皆、次授業でしょー。第三演習室に集合ねー」
次の時間は魔法実技が行われるのでした。
◇◇◇
「よし、じゃあ一人ずつ実技見せてもらうから中間試験の成績下位から順番に第一演習室に来てね」
ビクリ、と背を震わせたのはマルコ君です。
「せ、先生!アレですか!?説教ですか!?」
「いやいや……合格はしてるんだから、そんなことしないって。君たちの成長を見せて欲しいだけだよ」
なるほど……後期に向けて段々と実技に力を入れて行くわけですね……。
これは頑張り所です。
ヘルマン先生とマルコ君は第一演習室へと姿を消していきました。
「……おい、次お前だぞ」
数分後、げっそりした顔でマルコ君が帰ってくるのでした。
「あ、ありがとうございます……。ですが、マルコ君は大丈夫ですか?」
「なにが?」
「何やら顔が疲れている様ですけど……」
「……行けば分かる」
なにやら重々しい雰囲気だけを残していくのでした……。
その足で第一演習室へと向かいます。
「お、次はエメ君だね」
疲れ切っていたマルコ君とは対照的に、ヘルマン先生は涼しい顔をしていました。
「あ、はい。何をするんでしょうか?」
「進級試験」
「早くないですか!?」
中間試験はまだ終わったばかり!
進級試験はまだ数か月、先のはずではっ?!
「と、同じ内容のことをします」
「……つまり、本番ではないのですね?」
「そうそう。僕はみんなに進級して欲しいからね。現段階の課題を提示してあげようと思って」
「それは、現段階では必ず合格出来ないという意味ですか?」
ヘルマン先生はわたしの質問に口元を緩ませます。
「まあ、無理だろうね。特にエメ君、きみにはね」
……うう。
そうやって名指しで言われると傷つくのです。
「何をすればいいのでしょうか?」
「僕の展開する防御魔法を突破してくれたら、それでいいよ」
「……え?それでいいのですか?」
ちょっと驚きです。
進級試験には初級魔法の獲得が必須条件と聞かされていましたが。
「うん。僕に被弾することは考えなくていいよ、仮に防御魔法を破って直接届いたとしても僕自身の退魔力を持ってすればかすり傷にもならないだろうから」
「さ、さすが先生です……」
すごい自信です。それを裏付けする実力もお持ちなのは分かりますが……。
「ま、魔法を使えない君には必要のない説明だろうけどね」
「……むう」
初級魔法を使え、という試験なら確かに無理がありますが、防御魔法を壊せというのなら勝機はあります。
「どうしたのエメ君?」
「耐魔力は凄いかもしれませんが、物理攻撃は大丈夫ですか?ヘルマン先生」
「まあ、全力でやってみなさい――
詠唱と同時、ヘルマン先生を取り囲むように魔力の結晶で構成された防壁が展開されます。
五大元素を介しない、純粋な魔力のみでの防御魔法。それはコストが掛からない代わりに、大気に溢れる元素を使用しないため脆くなりがちな魔法です。
「
わたしは魔術による身体強化で駆け抜け、魔法の壁に肉薄します。
「
加速の勢いを利用したまま、腕力強化で腕を振り抜きます。
――ガンッ!!
「あ、づっ……!!」
痛めたのは、わたしの拳。
マジックウォールにはヒビ一つ入っていません。
「ね?全然ダメでしょ」
「ま、まだですっ……!ストレングスアグメント!」
間髪入れずに二撃目を叩き込みます……が。
「あぐっ……!」
やはり、最初の勢いを利用してすら届かなかった一撃。
二撃目が届くことはありません。
「うん、エメ君。噂は色々聞いてるよ?」
「はい……?噂ですか……?」
「うん、リア君の魔法を反らしたのは勿論、セシル君の魔法防御を破り、魔獣を倒したのも君なんだろ?」
「あ、はい……まあ……」
「その種が魔術だけではないってことは想像がつくんだよね」
「ええっと……」
やはり、ヘルマン先生も勘づいているのですね。
わたしに魔術以外に何かあるのだと。
「それとね、僕は全力で来いと言ったんだよ。エメ・フラヴィニー?ラピスの君が力半分で進級するつもりなの?この学園を舐めているのかい?」
「……!!」
い、いつになくヘルマン先生の目が据わっています……!
わたしが何かを隠していると確信しているご様子……!
「わ、分かりました。やります……」
こうなってしまってはやるしかありません。
魔眼を発動させます。
――ギィィン
魔力を可視化させるこの眼で、マジックウォールを見通します。
魔法の綻びを探し……て……。
「……ウソです。魔法の構築に一切の綻びがありません……」
わたしの異能と魔術を持ってしても、先生のマジックウォールを突破するビジョンが視えませんでした。
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