王都と蛇女

「確かエリッサは王都に向かったんだよな」


 僕は大量にある書類仕事を捨て王都へ向かうか考えていた。

 エマさんへの言い訳はフィーネに色々なモノを見せてあげたかったとでも言おう……。


「とりあえず誰にも伝えずに王都に行けばバレないでしょ」


 エマさんには本当に申し訳ないとは思う。

 だけど僕にもやらなければならない時がある。

 決心を固めた僕はフィーネを誘い、王都へと向かった。


◆◆◆


「でもパパ良かったの?」

「何がだ?」

「えーと……お仕事サボって」

「フィーネはいい子だな。ははは」


 ギルドマスターが仕事をサボっていいわけがないのだけど、僕は元々辞めたいから問題はない。

 ただこんな子供にそれを指摘されると僕は自分の不甲斐なさで泣きそうになる。


「ぱぱあれって」


 そんな現実逃避をしているとフィーネが不意に路地裏を指差す。

 そこには下半身が蛇で上半身が人間の謎生物が闊歩していた。


「見ちゃいけません」


 僕はティナに視線を逸らさせる。

 王都も物騒になったモノだ。

 あんなものが路地裏の不良共を仕切ってるなんて。


「でもぱぱあれこっちに向かってきてるよ」

「え?」


 裏路地から表通りへまるで僕らを獲物として定めたかのように一直線へ向かってきている。

 速度もかなり速く普通に走っても追いつかれるだろう。


「フィーネあれ倒せる……?」

「わからない。けどぱぱの命令ならやってみる」


 フィーネが短刀を構える。

 ここは幸い王都の外れだ。

 一般住民に被害が及ぶことはほとんどない。

 少し区画が破壊されるかもしれないが、後でアルメリアに謝れば何とかなる範囲だ。多分。

 蛇女がこちらに向かって蛇の尻尾を振り下ろす。

 フィーネはそれを軽々と受け止め、尻尾の先を切断した。


「ぎゃぁぁぁぁ!」

「こんなことで悲鳴をあげるなんて痛みに慣れてないんだね」


 フィーネはそう呟きながらも容赦なく攻め立てる。

 蛇女はなす術もなくボロボロになっていく。


「【慧眼の担い手】がこんな強いだなんて聞いてません……!」


 そう呟くと蛇女は路地裏の闇の中へ消えていった。

 追おうとするフィーネを僕は静止する。


「やめとこう」

「なんで? あの強さならフィーネは仕留められたよ?」

「嫌な予感がするんだ。あれは殺しちゃいけない」

「……わかった。パパがそういうなら」


◆◆◆


「お父様! 聞いてません! なんで【慧眼の担い手】とやらの護衛があんなに強いのですか!」

「はて護衛?」

「こーんなちっちゃい幼女です!」


 はて幼女など最高の仲間達キャマラッドに居ただろうか。

 予想される事態は【慧眼の担い手】がこの事態を見越して新しいメンバーを入れたか、護衛として雇ったか。


「レイン。その幼女の容姿を教えなさい」


 私は計画を計画通りに進めるべく護衛の排除へと動くのだった。



 

 

 


————

来週から更新頻度落とすかもしれません。

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