聖霊魔法と実験
「ここがセストリア王国の王都……」
「あれ? エリッサは初めて?」
「うん。ティナ先輩達が王都に言ってる間は別の依頼で出かけたりして着いていけてなかったから」
確かに言われるとその通りだ。
この前アルメリアの護衛の時もエリッサはタイミング悪く最高の
「それじゃ王都を観光と行きたいところだけど」
「今回はやめとこう。流石に指名依頼が優先だ」
「そうだね。でどんな方法でデズ教会を見張るつもり?」
「精霊魔法ってティナ先輩は聞いたことがあるか?」
精霊魔法。
耳にしたことぐらいはある。
確かエルフ族にだけ使えると言われている特殊な魔法の一種だ。
人の使うそれとは発動のプロセスが違うとか何とか本で書いてあったと記憶してある。
「聞いたことはある。ただ見たことはないからどんなのかはわからない。私達の使う魔法とは発動の方法が違うっていうのは見たことある気がするけど……」
「おー知っているのか。流石ティナ先輩だな。じゃあ路地裏で一回使うからみててくれよな」
そう言われ王都の路地裏に連れ込まれる。
路地裏は人の目が届かない都合上危険が多い。
だからこそ人目がないのだが、何故王都に初めて来たはずのエリッサがそれを知っているのだろうか?
「見えるか? この光が精霊の光だ」
そんな些細な考えを頭から捨て、私はエリッサの手のひらを眺める。
そこには確かに緑色の光が存在した。
「これが精霊……」
「そう。精霊はエルフ族にしか基本的に懐かない。だから精霊にお願いして使う精霊魔法もエルフしか使えないってわけだな」
「理屈は理解した。にしても不思議」
私は精霊を触ろうと手を近づける。
その瞬間にエリッサの手のひらの光が消えた。
「聖霊は臆病だ。人間が手を近づけたらすぐ隠れちまう。だからこそ監視には最適ってわけ」
「なるほど。じゃあ私からも私の力の秘密を1つ教える。私の治癒は人を蘇らせられる」
「……本当に言ってるのか?」
「うん」
「それレオンには……」
「むしろマスターしか知らないよ」
「そうか……」
神に願って貰った能力だ。
代償を考えるとこのぐらいの特典はあってもいいと私は思う。
何故ならこの能力をもらうことを代償に私は笑うという表情を失ったのだから。
「とりあえず調査に行こう。私は幸い王都の出身だからデズ教会の近くには詳しい」
「それは頼もしいな。やっぱりティナ先輩を誘って正解だった!」
私とエリッサは見晴らしが1番良く、デズ教会がよく見える位置に宿を取り、エリッサを精霊を飛ばしたのだった。
◆◆◆
「それで今日の成果はどうだった?」
「はい。今日は能力開花の兆候が見られました」
デズ教会の地下深くで怪しげな男2人が人の入った巨大な入れ物を眺めながら会話をしていた。
中には年端も行かない少女から成人男性まで様々な人が入れられている。
「神から能力を人為的に授かれるか。これはデズ教会の悲願でもある。実際【聖女】であるティナは神から能力を授かったわけだしな」
「そうですね。ティナ様から血を分けて貰えればそれが一番早いのですが……」
「だめだ。この実験は誰にも勘付かれるわけにはいかない。万一外にバレでもしたらデズ教会の権威は地の底まで落ちる。くれぐれも気をつけてくれよ」
「わかっております。では実験を続けます」
男が機械のスイッチを入れる。
それを見届けた初老の男は地下室を後にした。
————
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