デズ教会ときな臭い噂(sideティナ
「そういえばだが、いとしの我が娘よ。セストリア王から最高の
「いえまだです……」
私ことティナは一度最高の
「でもお父様、私はそういう目的で最高の
「うるさい! 口答えをするな」
父であるデズ教教皇グレイから叱責と平手打ちが飛んでくる。
更に頭に血の登った父の叱責は止まらない。
「いいか? 私がわざわざお前をあんなゴミの溜まり場に預けたのは【慧眼の担い手】に価値があるからだ。そうでなければ冒険者なんて野蛮な職業にお前を浮かせたくはなかった! お前には高貴な血が流れているんだぞ! お前をそこまで育て上げるのに幾らかかったと思っている!」
私は思わず俯く。
父の悪いところだ。
教皇という地位に執着するあまり周りが全くと言っていいほど見えなくなってしまっている。
お母さんが生きていた頃はこうじゃなかったのに……。
「グレイ様そんなにお叱りになられてはティナが可哀想ではありませんか」
そしていつもこの暴走した父を諌めるのはデズ教会教皇補佐ケインだ。
父は権力に執着しているのが目に見えて分かるからまだマシ。
この男は本当に何を考えているのかが一切透けてこない。
「そうか。ティナすまなかったな……」
「いえ……」
そしてケインに諌められた後、父は必ず大人しくなる。
それも昔のような優しい父になるわけではなく、正気を何かに吸われたような状態と化す。
私としては別に父がこの先どうなろうとデズ教会がどうなろうと構わないと思っている。
だけどお母さんと過ごしたあの部屋だけは守らなければいけない。
デズ教会総本部2階奥の一室だ。
あそこだけは父が優しかった頃の記憶もお母さんが生きていた頃の記憶も全てが詰まっている。
もしケインがあそこをどうにかしようとしているのならその時は――。
「ティナ?」
「すいません。ぼーっとしてました。なんですか」
「ゆっくりでいいから最高の
「わかりました」
今のデズ教会はもはやケインの持ち物だ。
私は空返事をしてその場を後にした。
◆◆◆
「なんだか最近きな臭いな……」
「そうですか? 別にいつものセストリアの日常という感じはしますが」
「そうかなぁ。僕が最近変なことに巻き込まれすぎなだけかな?」
僕はあの後、結局勇気が出ずにギルド本部に戻れなかった。
サラとは僕の気持ちが整理できたら改めてきちんと話し合おうと思う。
それはとは別に最近嫌な噂ばかり耳にすることが増えた。
例えば誰かが国家転覆を企てているとか、冒険者協会が破綻するとかデズ教会では人体実験をおこなっているとか。
どれも根も歯もない噂だが、火のないところに煙は立たない。
「まあ気のせいならいいんだけど……。とりあえず僕はフィーネと遊んでくるよ。書類仕事は午後からやるから」
「はい。お気をつけて」
最近の僕の日課はフィーネと町を散歩することだ。
最近は可愛すぎて色々と出費が嵩んでる気がするが多分気のせいだろう。うん。
◆◆◆
「至急セストリア王都で調査してほしいことが。はい。レオンギルドマスターがきな臭いと。はい」
私ことエマはギルドマスターが部屋を出て行ってからすぐにことの真相を確かめるべく、セストリア王都にいる元商人仲間に連絡を取った。
あのギルドマスターのことだ。
自分で解決できるが私達に手柄を渡すことでギルド全体の利益を考えているのだろう。
私ができることは少しでもギルドマスターの心労を減らすことだ。
「それにはまず噂の出どころを調べないとね……」
こうして私の忙しい1日がまた幕を開けたのだった。
————
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