逃走と傷心(sideサラplusレオン
サラの静止を僕は無視してギルド本部の出口へと走る。
今、サラの言葉を聞いてしまったらパーティーから僕を捨てたサラをきっと許してしまう。
あの時のすれ違いは言葉や感情では整理しきれない。
ただこれは僕のエゴでしかなく、ただただサラを傷つける最低の選択だ。
それは頭では分かっている。
だけど感情がそれ以外の選択を許してくれない。
「ぱぱ逃げて良かったの?」
いつの間にか追いついてきていたフィーネにそう問われる。
「本当はダメなんだろうな……」
「じゃあ今からでも戻って――」
フィーネの言うことはもっともだ。
今からでも戻ってサラの言葉をよく聞き、許すなり許さないなりの結論を出すべきと言うのはその通りだろう。
「だけど僕は戻れない」
「なんで? あの人悪い人じゃなかったとフィーネは思うよ? ぱぱがそういうなら戻らなくてもいいと思うけど、フィーネは戻ったほうがいいと思う」
幼いフィーネの言葉は恐ろしくまっすぐだ。
それ故にフィーネの言葉はナイフの様に僕の胸を刺す。
実際サラは悪い人間ではない。
目標に恐ろしく真っ直ぐで弱者にも強者にも全ての者に平等に接することのできる優しさも持っている。
だけどそんなサラを近くで見てきたからこそ、そのサラに捨てられたという事実が僕に重くのしかかる。
◆◆◆
問題を解決してギルド本部を後にしようとするレオンを私は呼び止める。
あの時のことはすれ違いだったって勘違いだったって謝らないといけない。
「待って! レオン!」
私の必死の叫びにレオンは足を止めることなくギルド本部の出口へと走って出て行ってしまった。
フィーネと呼ばれた少女もレオンの後を追う。
私は一歩を踏み出せなかった。
走ればきっとレオンにだってフィーネにだって追いつけただろう。
村に居た時から私はレオンより足が速かったから。
だけどどうしても勇気が――後一歩を踏み出す勇気が出なかった。
「はぁ……なんで私こうなんだろ」
自分の不甲斐なさに思わず溜息が出てくる。
目の前まできた絶好のチャンスを逃し、挙句再会は最悪の形だった。
私はレオンと一緒に昔みたいに楽しく冒険がしたいだけなのに。
なんでそんな細やかな願いすら叶わないのだろう。
こんなことなら【銀灰の英雄】なんて2つ名も世界最強という肩書きも要らなかった。
ただただあの村で楽しく2人で仲良く過ごして結婚してそのまま生涯を終えれば良かった。
そんな感情が胸いっぱいに溢れ出てくる。
「……っどうしてこうなっちゃったんだろう……」
私は気がつくと涙を流していた。
自分の不甲斐なさと最強という存在のギャップ、そして幼馴染の男の子との埋まらない距離感。
その全てがもどかしくて、でも私1人ではどうにも出来ない。
いくら世界最強と回りにチヤホヤされようと私は無力だ。
ならばこそ私は私の考える世界最強にならないといけない。
そう決心した私はギルド本部を後にした。
————
少し暗い話ですいません。
いつもご覧いただきありがとうございます!
星ブクマハートくださる方と読んでくださっている方に感謝を!
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