和解と静止

 サラの振るう剣は一見なんの変哲もない鉄の剣だ。

 だが、サラがその剣を振るうたびに周囲の温度が驚くほど低下する。

 フィーネは古代兵器オーパーツだから温度の低下は関係ない。

 同じ剣筋では受けられると判断したフィーネはサラが剣を受け止める寸前に剣の軌道を無理やり捻じ曲げる。

 人であれば腕の骨が折れていてもおかしくない剣筋の軌道の変化にサラは反応できない。

 そのはずだった。

 それなのにサラは氷をフィーネの剣とサラの体の間に作ることでフィーネの剣を受け止め、回避する、


「サラ強いね」

「この状況下で平然と動けている貴女の方がおかしいと思うんだけどね……」

「それはそうかも」

「とりあえずサムさんに謝って2度とこんなことしないって誓えるなら手を引くけど?」

「そこのハゲはぱぱを殺すって言った。それをそのまま放置することはできない。ぱぱに害をなすモノは全部消さないと」

「そう。あくまで引く気はないのね」

「当たり前。ぱぱを殺そうとするモノは……イタッ」

「フィーネそこまでにしときなさい」

「ぱぱ!」

「レオン!?」


◆◆◆


 ギルド本部に用事のあった僕はぶらぶらと鼻歌を歌いながら寄り道をしてゆっくりと向かっていた。

 用事といっても護衛の結果と諸々の書類を届けるだけの雑用だ。

 いつもは誰かに任せているのだが、今日は朝起きたら、フィーネが居なかったことが引っかかりこちらにきていないかを聞くのも兼ねて自分の足で向かっている。

 そしてギルド本部に到着した僕が最初に目にしたのはギルド本部の半分が氷に覆われ、それを破壊する見覚えのあるシルエットの幼女だった。


「2人ともどうしてこうなったんだ?」


 僕はもっともな疑問を投げつける。

 おそらくこの場の当事者以外の人間全員が疑問に思っているだろう。


「そこの子供が急にサムさんを殺そうとしたから咄嗟に……」

「そこのハゲがぱぱを殺すって言うから消さないとって……」

「2人とも言いたいことがあるのはわかる。けどやりすぎだ」

『ごめんなさい……』


 2人の謝罪が重なる。

 サムさんが殺すだのなんだの言ってるのは言葉の綾で口癖みたいなものだ。

 

「サムさんもサムさんですよ。こんな子供の前で殺すとか物騒な言葉使わないでくださいよ」

「お、おう。それは確かにすまなかったな……」

「それでギルド本部の弁済は誰か持つんですか? これ」


 僕は半壊したギルド本部を指差しながらサムさんに聞く。

 一応サムさんも悪いとはいえ、僕のギルドの元仲間と仲間がやったことだ。

 弁済はおそらく最高の仲間達キャマラッド持ちになるだろう。


「今回は俺も嬢ちゃんに悪いこと言っちまったしギルド本部で持つぜ。嬢ちゃんすまなかったな……」

「わかったならいい」

「じゃあ僕はこれで」


 サムさんとフィーネの和解を見届けた僕はサラが居たことを思い出し、その場を後にしようとした。

 だがそれをサラが見逃すわけがない。


「待って! レオン!」


 僕を静止するサラの声がギルド本部へと響き渡った。


 

 




————

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