普通のわからない少女と銀灰の英雄

「普通ってなんだろう……」


 フィーネはぱぱにぎるどで命令されてからずっと考えていた。

 ぱぱの言う普通ってどういうことなんだろうか。


「うーん……」


 考えても考えてもわからない。

 フィーネにとっての普通は邪魔なモノを殺して倒して排除することだったから。


「とりあえず明日はぱぱ達を観察してみる」


◆◆◆


 ベッドとは恐ろしいモノだ。

 フィーネは昨日のうちにもうちょっと誰を観察するか考える予定だったのに気がついたら寝てた。


「今日はぎるどで様子をみようかな」


 そうと決まれば行動するのみだ。

 フィーネはぱぱの部屋のベッドから飛び降り、道行く人にぎるどの場所を聞く。

 多分あの人が1番強そうだしあのお姉さんでいいや。


「ぎるどってどこですか?」

「可愛いねー!お父さんにお弁当でも届けに行くのかな?」

「ぱぱに会いに行きたい」

「そうなんだ! パパの仕事は何かわかるかな?」

「冒険者。ぎるどますたーって呼ばれてた」

「ならまずはギルド本部に行ってみよ。そしたら何かわかるかも。お名前はなんていうのかな?」

「フィーネ」

「そうなんだ。可愛い名前だね! 私はサラ。よろしくね」


◆◆◆


「ここがギルドだよ」


 サラが案内してくれたぎるどはぱぱのぎるどじゃなかった。


「ここ本当にぎるど? ぱぱのところとは全然違うけど」

「ギルド本部って言って色々なギルドを統括しているところよ」

「ふーん」


 フィーネにはよくわからない。

 とりあえずぱぱのギルドの人を探さないといけない。

 フィーネは今日普通のぱぱを観察すると決めたのだ。


「それでぱぱは何処に居るの?」

「えーと……」


 お姉さんが困ったような表情を浮かべる。

 

「おっサラじゃねぇか」


 階段からハゲが降りてくる。

 あのハゲなら何かを知ってるかもしれない。


「ハゲ、パパを知らない?」

「なんだこのガキ。おいサラこれ誰のガキだ?」

「知りません! 道迷ってるみたいだったんでギルド本部にとりあえず連れてきたんです」

「そうか……。俺はギルド総支配人のサムってもんだ。お前の親は誰だ?」


 ハゲたおじさんは明らかに怒っている。

 もしかしてサラが怒らせた?


「ハゲ、落ち着いて。サラに悪気はない」

「……おい」

「サムさん落ち着いてください! 相手は子供ですよ!」


 何故かハゲたおじさんの怒りのボルテージが上がった気がする。

 ハゲたおじさんはサラが嫌いなのかな?


「それでパパじゃわからねぇよ。名前はわかんないのか?」

「確かぱぱはレオンって呼ばれてたと思う」

「レオンだと……? ははは! あのクソガキ次きたら殺す!」

「ぱぱを殺す?」

「あ?」


 フィーネは普通に生きろとそうぱぱに言われた。

 だけどぱぱを殺そうとするモノからぱぱを守らなければいけない。

 だからこのハゲはここで殺さないと。


「それは許さない」


 フィーネは全力で魔力で練った剣をハゲたおじさんに向かって振るう。

 入ったと思った瞬間に隣のサラがフィーネの剣を受け止める。

 軌道は完璧だった。

 いくら強そうとはいえ普通の人間に反応できる速度を超えていたように思う。


「誰かは知らないけどレオンの名前を使ってあまつさえ、サムさんを殺そうとするなんて許されないよ。それに私、今ちょっと機嫌が悪いみたいだから手加減できなかったらごめんね?」


 正直、サラを甘く見ていた。

 サラの纏う雰囲気が尋常ではないモノへと変貌を遂げている。

 こんなことになるならもっと弱い冒険者を捕まえるんだった。

 フィーネは初めて後悔をした。

 

 





————

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