帝国最強の【碧眼の勇者】と依頼

「アルメリア王女が攫われたらしい」


 黒尽くめの黒銀の翼とやらを追っていた僕と【星屑】メアリーはそんな噂を耳にする。


「まずいですね」

「まあそうね。黒銀の翼とやらの要求が何かはわからないけど……」


 ミストリナ帝国側としては秘密裏に救援を送ることはあっても、表立って助けはしないだろう。

 何故なら表向きミストリナ帝国とセストリア王国はそこまで仲が良くない。

 敵の要人が削れ、国力を削げるならと考える勢力も少なからずいるはずだ。


「【星屑】殿。一旦追うのは後にしてアルメリア王女殿下を救出しにいきましょう」

「それはいいけど見当はついてるの? 黒銀の翼とやらがどこにいるかすらわからない状態なのに」

「そこはまあミストリナ帝国には彼女が居ますから」

「あぁそういえばいたわね。【碧眼の勇者】が」


 ミストリナ帝国には【碧眼の勇者】と呼ばれる【銀灰の英雄】に匹敵する冒険者がいる。

 ミストリナ帝国唯一のSランク冒険者で一説によるとミストリナ帝国では、彼女が強すぎて彼女以外Sランク冒険者と認められず。

 それこそがミストリナ帝国でSランク冒険者が1人しか存在しない理由に他ならない。


「とりあえずミストリナ帝国のギルド本部に顔を出してみましょう」


◆◆◆


「ここがミストリナ帝国の……」


 【星屑】メアリーが感嘆の声を上げている。

 それもそのはず。

 ここミストリナ帝国のギルド本部は世界で1番豪華と言われる作りをしている。

 金やダイヤモンドをふんだんに使用し、絢爛さと権力を誇示していた。

 それら全てを可能にしているのが【碧眼の勇者】フィーネだ。


「失礼。【碧眼の勇者】は居られるか? できれば面会を頼みたいのだが」


 僕は受付の若い女性にそう聞く。

 

「【剣聖】アルフレッド様と【星屑】メアリー様で御座いますね。奥でフィーネ様がお待ちです」


 突然尋ねた手前、何か嫌味の1つでも言われるか、はたまた追い返されるかと思っていたが、どうやら向こうも用事があるらしい。

 僕と【星屑】メアリーは奥の部屋へと何事もなく通された。


◆◆◆


「久しぶりといえばいいでしょうか? 【剣聖】アルフレッド、いや弟君と呼べばいいかしら?」

「はぁ……。お久しぶりです。姉さん」

「元気そうで何よりだわ。それでそこの子がガールフレンド?」

「ガ……! 違うわよ! 私は【星屑】メアリー! いつか世界最強になる魔法使いよ!」

「あらあらそうなのね」


 久しぶりに会う【碧眼の勇者】もとい姉さんはとても楽しそうだ。

 僕と姉さんは最強こそがステータスという国の生まれだった。

 それぞれが別の最強を目指す為に別の国の冒険者になったが、お互い今は丸く冒険者をしている。

 ただいつもは威厳がある姉さんは僕に会うと崩れるのでできれば会うのは避けたかったのだが、今回ばかりは仕方がない。


「それで依頼は?」

「アルメリア王女殿下の噂は聞きましたか?」

「あーそういえばそんな噂聞いたわね」

「アルメリア王女殿下の奪還が今回の依頼です。姉さんなら大方見当がついてるでしょう?」

「まぁねぇ。ただお金で協力しても面白くないのよねー」


 姉さんは【碧眼の勇者】として仕事をしているうちに一生生きていけるぐらいの金額を稼ぎきっている。

 だからこそ依頼を受ける基準はそこ以外の報酬だ。

 僕から出せる報酬は1つ。

 後から僕が怒られることでアルメリア王女殿下が救われるならそれでいい。


「最高の仲間達キャマラッドのギルマスに合わせると言ったらどうでしょう?」

「……ふーん。セストリア王国全てのSランク冒険者を裏から操っているとされている彼?」

「ええ」

「いいわ。協力してあげる。黒銀の翼のアジトは……」


 こうして僕とミストリナ帝国最強の冒険者【碧眼の勇者】と【星屑】の共同作戦が始まった。




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