決着と襲撃

 開始と同時にマリアがレイピアを抜き、僕めがけて突き立てた。

 幸いにマリアの身長が高くないおかげでリーチも減っている。

 僕はなんとか身体を捻り、レイピアの先端を避けた。

 レイピアは剣の先端に当たらなければ致命傷にはなり得ないはず。

 それを考えると身長があまりないマリアとは相性があまり良くないようにも思える。


「これは避けるんだ。じゃあ次はこれで」


 マリアが呟いた途端にレイピアの形状がサーベルへと変化する。

 一体全体どういうカラクリかはわからないが元よりこの勝負に勝つつもりは毛頭ない。

 暫く時間を稼いでいい勝負を演出して倒れることが目標だ。

 振り下ろされるマリアのサーベルを僕は自分のソードでかろうじて弾く。


「これもダメかー。君、中々粘るね」

「なんのことかわからないんだけど」

「体重かったりしない?」

「いえ全然」


 そんなやりとりをしたのも束の間、また武器の形状が変化する。

 次は東の島国に存在するカタナと言われる武器だ。

 僕はさっきと同じように振り下ろされるカタナをソードで受ける。

 ……が重い。

 さっきまでと明らかに何かが違う。


「おっやっと効いてきた?」

「効いてきた?」


 僕は思わずおうむ返しで聞き返してしまう。

 別に彼女が毒を仕込むようなタイミングはなかった。

 それに魔法を唱えるようなタイミングも。

 にしても体が重い。


「さぁ仕上げといきましょう。死なないでね?」


 カタナの形がグレートソードへと変化する。

 あんな大きい剣の一撃をまともに受ければ僕の命はないに等しい。

 だけど重くて動かない。


「はぁこんなところで僕は死ぬのか……」


 目の前に迫り来るグレートソード。

 頭の中では走馬灯がぐるぐると駆け回る。

 僕は思わず目を瞑り、死なないことを祈った。

 数秒経っても斬られた感覚がない。

 恐る恐る目を開けた先に待っていたのは【常闇の安寧】で装着して外し忘れていたラカンからの指輪が煌々と輝き、マリアを場外へと吹き飛ばしていた。


『勝者! ラッキーボーイレオンだぁぁぁぁ!!!』

「えぇ……」 


 指輪は仕事を終えたかのように光を収縮させ、黒ずみ砕け散った。

 こうして僕のコロシアム出場はほとんど戦うことなく終わってしまった。

 マリアと対戦した時の体が動かなくなる感じがなんだったのかも結局わからず仕舞いだったし……。

 というかティナとラカンから貰ったアイテムに命を救われてる。


「今度ご飯でも奢るか……」


 僕はそんなことを考えながらティナの元へと向かった。

 

◆◆◆


「ここはどうお考えですかな? アルメリア王女殿下」

「ですから先ほどから申し上げています通り、そこはミストリナ帝国と協力してですね」


 ミストリナ帝国との会議はいつも大変だ。

 隣り合う大国同士手を取り合うことにはなっているが、どちらの国も相手の国力を削ることしか頭にない。

 それ故に厳しく責め立てられることも多く、精神的に疲労する。


「そういえば【銀灰の英雄】辞めたそうだな」

「ええまあ。国力の低下に繋がりますし治安の維持が大変になるのでできれば続けて欲しかったのですが……」

「セストリアにはまだ強い冒険者が沢山居るだろう? ミストリナなんて1人しか居ないんだから困ったものだ」

「でもその1人が【銀灰の英雄】に匹敵するじゃないですか」


 そんな他愛もない話をしていたその時、会議室の外で大きな爆発音が鳴る。

 それと同時に会議をしている部屋に黒尽くめの集団が乗り込んできた。


「アルメリア王女とミストリナ帝国宰相のアッシだな?」

「貴方達は……」

「俺達は黒銀の翼。この帝国を変えようとする者たちだ」


 その言葉を聞いたのを最後に私は意識を手放した。



————

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