ギルド本部へ(sideサラ
【聖女】との約束を思い出した私は最高の
「それで【銀灰の英雄】様がなんの用だ?」
「サムさん私はその2つ名はもう捨てたの。今はただのサラよ」
「……お前」
「何? 私はギルド本部には迷惑がかかりにくい形で2つ名を返上したはずでしょ?」
「そこじゃ……いや、いいか。それで要件は?」
「レオンに会いたいんですが、ギルド本部でどうにかなりませんか?」
私がそう告げた途端にサムの態度が一変する。
さっきまで敵意なんてないくたびれた様子だったのに、急に昔のように鋭いナイフの様な視線を向けてくる。
「どのツラ下げてレオンと会う気だ?」
「私はただレオンに謝りたくて……」
「謝りたいだと? 今更か?」
「今更?」
「サラ、てめえは勝手に2つ名を放棄しただけかもしれねぇ。それがどれほど周りに迷惑をかけているのか理解してないわけじゃねぇよな?」
「それは……でも!」
私にだって言い分はある。
【銀灰の英雄】と呼ばれるたびにのしかかる重たいプレッシャー。
【銀灰の英雄】には失敗が許されない。
何をするにしてもそうだ。
全ての物事に対してサラではなく【銀灰の英雄】でなくてはならなかった。
「でももだってもねぇよ。俺だって2つ名持ちだ。逃げ出したくなるのだってわかる。だがなやり方があっただろ!」
「でも私はもう……」
私はもう限界だった。
世界最強という看板の重さは今までの人生の何よりも重くてレオンとの約束がなければ、もう少し早く挫けていたと思う。
「とにかく今のサラをレオンに会わすわけにはいかねぇ。【占星】の元で頭でも冷やしてもらったらどうだ?」
「……わかりました」
なんで誰もわかってくれないんだろう……。
私は別にレオンの横に立てるなら【銀灰の英雄】じゃなくても世界最強じゃなくてもよかったのに。
「普通の冒険者として生きられたら幸せだったのかな……」
そんな私の呟きはギルド本部の喧騒の中へと消えていった。
◆◆◆
「サラも馬鹿だね」
私は同じギルド本部に居る【占星】ソフィリアの元へと赴いていた。
私とレオンのギルドでの師匠だ。
「やめてくださいよ。私自身もそう思ってるんですから……」
正直、重荷だったとはいえ誰の判断も仰がずに【銀灰の英雄】を辞めたのは後悔している。
思えばあそこから全てが狂った。
「そういえば獅子の
「噂には聞いてましたが……」
「『2つ名冒険者の身体のケアやその他の要望に答え、力を出し切れるようにサポートをしなければならない』っていうのが、ギルド本部の最優先事項だからねぇ」
私は最高の
2つ名冒険者の引退や2つ名の返上によるペナルティの重さは殺人や国家転覆に匹敵する。
そこまで考えの回らなかった私が全面的に悪い話だ。
「それでこれからどうするんだ?」
「私はレオンにどうしても会いたいです。サムさんにはああ言われましたけど、それなら尚更謝らないといけないと思うんです!」
「……サラはレオンのことをどう思ってるんだい?」
「大切な幼馴染で将来を誓い合った大切な……その、人です」
「そうかい……。じゃあレオンの居場所は教えられないね」
ソフィリアはそれっきり黙り込んでしまった。
私はレオンのことを大切に思っている。
レオンだって私のことを大切に思ってくれているはずだし、謝ればきっと許してくれるはずだ。
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