決勝の開始と黒銀の翼

『さぁ! チャンピオンのマリア登場だぁぁぁぁ!!!』

「いけー!」

「あんなラッキーボーイ殺しちまえー!」


 とんでもない罵声が飛んでくる。

 ずっとあんな勝ち方ばかりしていたらそうなっても仕方ないか。


「僕だって勝てたらラッキーだとは思ってたけどまさかあんな勝ち方を5回もするなんて思わなかったよ……」


 僕はボソリとコロシアムの冷たい石の床を踏みしめながら呟く。

 数戦勝って綺麗に状況を良くしてフェードアウトする予定だったのに……。

 何か別の思惑が裏で動いてるんじゃないだろうな?


「セストリア王国のラッキーボーイはまさか私と戦うなんて思わなかったって表情ね?」

「どうだろうね……。ただ君と対戦するのは荷が重いとだけ言っておくよ」


 こうして僕とチャンピオンマリアの戦いが始まった。


◆◆◆


「最高の仲間達キャマラッドのギルドマスターを押さえつけることには成功してるか?」

「抜かりなく。今最高の仲間達キャマラッドのギルドマスター はコロシアムのチャンピオンと戦っているはずですぜ」

「まさか俺達黒銀の翼が最高の仲間達キャマラッドのギルドマスターを勝たせてるなんてあいつらは気が付いてないだろ」

「ならばこそミストリナ帝国に叛逆を起こすなら今しかない」

「そうか。ならば僕達は君を止めなければならないかな?」


 コロシアムの裏で怪しい話をしていた黒ずくめの男2人は驚愕する。


「なっ貴様らは……」

「最高の仲間達キャマラッドの【剣聖】と天命のエデンズサンダーの【星屑】!?」

「ギルマスが二手に別れると言ったあたりから何かあるとは思ってましたが、まさかこんなことが起きているとは思いませんでした」

「まさかそこまで読まれていたとは……」

「『マスターには何かが見えている』とティナさんが言って意味がようやくわかった気がします」


 僕はにわかには信じ難い出来事を目の当たりにしてギルマスの能力の高さを再確認する。

 やはりあの人には何かが見えているに違いない。

 だからこそ僕の出来ることはあの人補佐を全力でこなすことにある。


「で【剣聖】こいつらどうするの?」

「勿論、全員捕縛します。できれば殺さないでもらえると助かりますね」

「俺達は黒銀の翼だぞ! 俺達を捉えたらどうなるかわか、ガッ……!」


 僕は黒銀の翼とやらの構成員が全てを話し終える前に剣のグリップの部分で頭を殴りつける。

 殴られた悪党は額から血を流しながら後ろへと倒れた。


「くそ! これでもくらっとけ!」


 もう1人を仕留めようと動いた瞬間に煙が地面へと充満する。


「……逃げられましたか」

「これレオンになんて報告するの?」

「そうですね。このままではギルマスに顔向けできませんしもうちょっと追ってみましょうか」

「【剣聖】ならそういうと思ってた。【剣聖】が言わなかったら私が言ってたわ」


 こうして僕と【星屑】は黒銀の翼を追うことになった。


 



————

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