コロシアム2

『スペシャルゲストの参戦だぁぁぁ!』

『うぉぉぉぉ!』


 マイクを持った司会者が大きな声で叫びたてる。

 観客も大盛り上がりだ。

 迷った末に僕は結局コロシアムに参加を決めた。


『今日のスペシャルゲストは……は?』


 司会者が僕のプロフィールを見て思わず素っ頓狂な声をあげる。


『ははは! こいつは狂ってやがるぜ! セストリア王国では5年連続ただのBランク冒険者レオン! おいおいミストリナ帝国のコロシアムを舐めたお子ちゃまかー!?』


 うんうん。

 僕もそう思うよ。

 多分僕がミストリナ帝国の住人だったら怒り狂う。


「殺せー!」

「すっこんでろ素人ー!」


 予想通り、罵詈雑言の嵐だ。

 僕としてはは予想通りだし特に問題はないんだけど。

 隣にいるティナがプルプルと怒りを覚えてか震えてる。

 ティナの怒りが爆発する前に司会者の挨拶が終わってくれると僕は何より嬉しい。


『それじゃあ会場も盛り上がってきたところで1回戦の開幕だぁ!』


 なんとかティナの怒りが爆発する前に司会者今日のコロシアムの開幕を宣言する。

 さてどうやって勝とうかな……。


◆◆◆

 

『1回戦はコロシアムのベテラン! ポール! バァサース! セストリア王国からの刺客 レオン!』

「お前がセストリア王国からの刺客か」

「別に刺客ってわけじゃないんだけどなぁ……」


 そんなことを呟いていると1回戦開始のゴングが鳴る。

 相手はかなり大柄で頭頂部の毛が悲しい。

 武器はグレートソードの中でも大きめのものを装備していた。

 ここから導き出される結論は……。


『おおっと? レオン選手不思議な動きを始めたー!』


 僕は僕とサラの村に伝わる伝統的な謝り方土下座をしていた。

 ただどうやらミストリナ帝国にはそういった風習がないようで全然対戦相手のポールは気がついていない。


「餓鬼が! 舐めた動きしやがって!」


 ポールが大きくグレートソードを構えたところで体制を大きく崩す。

 ポールはそのまま後頭部をコロシアムの地面へとぶつけ、気絶した。


『おおーっとポールが珍しくミスをした! レオン選手一回戦を突破だ!!!』

『うぉぉぉぉ!!!』

「え?」


 会場が大盛り上がりする中、ただ1人僕だけは困惑していた。


◆◆◆


『これはレオン選手! またまた勝ったぁ!!! 強い強すぎるぞこの男ぉ!』


 気がつけば僕は準決勝までをストレートで勝利していた。

 僕が攻撃した回数は0回。

 勝手に相手がミスをして自爆してくれている。

 不思議なこともあるものだ。


「マスターすごい」

「いや僕は何もしてないんだけど」

「流石マスターこれだけの猛者を倒しながら謙遜なんて」


 本当に僕は何もしてないんだって。

 ティナの勘違いも程々に矯正していかないといけないかもしれない。


◆◆◆


 選手控室で決勝の呼び出しを待っていると不意に金髪の少女に話しかけられた。


「君がセストリア王国のラッキーボーイね」

「誰ですか?」

「私はここのチャンピオン。決勝はああはいかないから」

「あっはい」


 それだけ告げるとチャンピオンは僕の控室から出ていった。




————

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