メンバー選出と王女

「マスターが2つ名を持ってるなんて知らなかった」


 王宮からでた僕はティナに2つ名について問いただされていた。

 別に僕としても欲しくてもらったわけじゃない。


「あれはちょっと昔色々あってね」


 これで誤魔化し切れるほどティナの頭は悪くないのを僕はわかっている。

 だけどサラとのことはあまり深掘りされたくはない。

 聞いてる側も聞かせる側もあまり愉快な話ではないから。


「……まあ今はそれでいい。それでアルメリアの護衛メンバーはどうするの?」

「アルメリア?」

「王女様の名前。もしかしてマスター知らなかった?」

「いやいや知ってはいるよ。ただティナが名前で呼んだのに驚いただけで」

「私とアルメリア幼馴染だから」


 それは初耳だ。

 だけどティナはデズ教会教皇の娘だし教会が王宮に取り入る為にティナを使っても不思議じゃない。


「意外と驚かないんだ」

「そう言うこともあり得るなって想像できただけだ。別に驚いていないわけじゃないぞ」

「そう。それで誰を護衛添える?」

「そうだなぁ……。幼馴染ならティナには来てもらうとして王都に他のSランク冒険者っていたっけ?」

「アルフレッドは?」


 僕はティナに言われ、そういえばと思い出す。

 エメラルドドラゴンの討伐依頼をこなした後、王都に滞在しているはずだ。


「それならアルフレッドとティナでいいな……」

「マスター流石にもう1人は欲しい」


 そこに関してはティナの言う通りだ。

 火番の見張りは2人交代の方が効率がいい。

 それに王女様の護衛となるとそれなりに腕が立つ方が嬉しいが、最高の仲間達キャマラッドのSランク冒険者全員が護衛につくのはあまり良くない。


「仕方ないか……」


 僕は伝手を使い、【占星】ソフィリアの紹介を頼ることにした。


◆◆◆



「それで【占星】ソフィリア様に呼ばれてきたと思ったらなんであんたがいるのよ!」


 師匠なんでこの人を寄越したんですか……?

 僕は目の前で怒っている少女を見ながら遠いところを見ていた。


「【聖女】のあんたもいつまでこのポンコツのギルドにいるのよ!」

「うるさい。世の中【星屑】ごときには理解できないことがある」


 そう何を隠そう師匠が応援に寄越したのはSランク冒険者【星屑】メアリーだった。

 そしてメアリーと僕はちょっとした因縁がある。

 メアリーが所属する天命のエデンズサンダーが狩ることに失敗したドラゴンの討伐を最高の仲間達キャマラッドで引き受け、無事成功させたことがある。

 それ以来僕とサラは天命のエデンズサンダーというかそこのギルドマスターの【星屑】メアリーから目の敵されていた。


「あらティナ久しぶりね」


 そんな一触即発の空間にのほほんとした空気が入り込んでくる。

 王女のアルメリア殿下だ。


「……久しぶり」

「元気にしてた? 最近王宮に来ても全然私の部屋に遊びに来てくれないから寂しかったんだよー?」

「わかったからくっつかないで……」


 ティナが珍しく押されている。

 僕は少し珍しい光景を眺めているとアルメリア殿下の馬車からアルフレッドが降りてきた。


「アルフレッドなんでそこに?」

「エメラルドドラゴン討伐のお礼として乗せていただきました。ギルマス久しぶりですね」


 この男は髪色もこの国では珍しく強さの象徴とされる赤だし、顔も格好いい。

 勿論、女にもモテる。

 そのくせ地位と名誉と権力と女に興味がないという聖人君子のような人間だ。

 だからこそ僕達も王国も全幅の信頼を置いているわけだが。


「これで全員でしょうか? 最高の仲間達キャマラッドのリーダーの……ええと」

「レオンです。アルメリア殿下の噂はかねがね聞いております。メンバーはここに居る4人で護衛をさせていただきます」


 僕はサッと頭を下げる。

 長いモノには巻かれた方が楽でいい。

 僕に下げられない頭はないのだ。

 こうして僕とSランク冒険者のアルメリア殿下護衛の任務が始まった。



————

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