【土斧】のカイラナ(sideサラ
私は頭を冷やす為、山奥に住んで人里に滅多に降りてこない【土斧】のカイラナのところへと向かっている。
カイラナは人間嫌いのドワーフでありながら私とレオンのことを鍛えてくれていた。
彼なら今の私に適切なアドバイスをくれるのではないか、そんな期待を抱いて。
「問題はあの人本当にどこに居るかわからないところなのよね……」
私とレオンは世界最強を目指す為に様々な人を師事した。
その中でもトップクラスに会いにくい人物がカイラナだ。
人間が嫌いすぎて人前に滅多に姿を現さないのもそうだが、ドワーフ自体が好んで土の中に家を作る。
そして定住を滅多にしない。
その性質上、一度チャンスを逃すと次会えるのが何年後になるかわかったものではない。
私はドワーフが今住むとされる付近で師匠の名前を叫んでみる。
「師匠! 居ますかー!」
「お前サラか?」
すると土の中から身長が低く髭がもじゃもじゃと生えているおじいさんが出てくる。
私とレオンの師匠カイナラだ。
カイナラには食べれるものの見分け方、水源の見つけ方、土の使い方など冒険者に必要なことを色々と教えてもらった。
「そうです。サラです!」
「レオンはどうした?」
「今日はその事を相談しにきたというか……」
「何か事情がありそうだな。まあ入れ」
私は招かれるままに土の中にあるカイナラの家へと足を踏み入れた。
ドワーフの家は基本的に招待された者しか入れないようにプロテクトがかけられている。
なので人族でありながらドワーフの家に入れることは自体かなり珍しい。
私はカイナラにことの顛末を説明する。
「大方お前が悪いな」
「……そうですよね」
「昔からお前達のことは見てきたからわかるが、サラがとびっきりわがままなのは人間が嫌いな俺が見てもわかる」
「そのわがままのせいで私は……レオンを……」
「……そういう素直な面をレオンにも見せてやればいいものを。人はどうしてそう意地を張るかね」
これは意地、なのだろうか。
私からすると精一杯の強がりだ。
レオンの前では強くありたい。
レオンの前では強い【銀灰の英雄】サラでなければならない。
そんな1人の女の子の強がりだ。
「人の考えることは俺にはよくわからん。だがな、自分が間違っていないと思っていても、許されないと分かっていても頭を下げねばならない時がある。サラはレオンに一言でも謝ったか?」
私は師匠の言葉にハッとする。
確かに私は自分のことばかりでレオンには謝ることなんて考えてもいなかった。
真っ先に謝らないといけないのは私の方なのに。
「師匠! ありがとうございました! 許されないかもしれないけどすぐにレオンには謝りに行ってきます!」
私はお礼を言うと師匠の家を飛び出した。
◆◆◆
「やれやれ。手のかかる弟子だ……」
俺はサラが家を飛び出す時に破壊した扉を眺めながらぼんやりとレオンとサラに出会った頃のことを思い出していた。
本当に何も知らない12のガキの頃だ。
レオンとサラは冒険者になると村を飛び出したのはいいものの、人間の町に着く前に俺達の村の前で力尽きかけていたのを保護したのがきっかけだったか。
「何も知らなかった餓鬼が一丁前に恋なんてしやがって。サラもレオンも立派に成長してんだな……」
「おい! カイナラさっき来てたお前の弟子はどこ行った?」
「帰ったよ! おい暇か? 今夜は火酒でも飲もうじゃねぇか」
「カイナラが酒? 珍しいな。弟子が出て行った時依頼じゃないか? あっもしかしてまた逃げられたか?」
「うるせぇ! 飲むぞ!」
その日ドワーフの集落周辺では楽しそうに地上で酒を酌み交わすドワーフが多く見られたという。
———
皆様のおかげで異世界日間50位付近でとても嬉しいです!
pv数もかなり増えてきていて皆様には感謝の言葉しか浮かびません。
星ハートブクマをくださる方々、読んでくださっている方々に改めて感謝を!
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