【占星】からの呼び出し

 書類仕事というのはとてもいい。

 憂鬱な事を考えずに機械的に仕事をすることができるから。

 あの後ティナに色々と聞かれることはなかった。

 大方優秀な彼女のことだ。

 自分で聞き出し、予想したのだろう。


「そういえばギルドマスター、ギルド本部から出頭の命令が来てますが」


 僕がこの部屋に戻ってきてから静観を貫いていたエマさんがそんな事を口に出す。

 ギルド本部に呼び出されることを冒険者達は出頭と呼ぶ。

 なぜなら呼び出される要件がいい事である場合がほとんどないから。

 ただ呼び出しに応じずにいると所属しているギルドに迷惑がかかる関係上、渋々行く羽目になる。

 

「えーと誰か僕の代わりに行けそうな人居ませんか? 例えばアルフレッドとか」


 僕もギルド本部に行くのはあまり好きじゃない。

 何故なら無理難題な依頼をさも当然のように押し付けてくるからだ。

 そもそもBランクぐらいの実力しかない僕にドラゴンの撃退とかグリフォンの討伐とか押し付けるか?

 なので大体はSランク冒険者のアルフレッドかラカンに僕の代わりに言ってもらうことが多かった。

 彼らなら実績も十分だし、ドラゴンとかグリフォンの専門家だ。

押し付けられてもなんとかなる。


「それがギルドマスターを指名しての呼び出しでして……」

「すいません。それ誰からって書いてますか?」

「【占星】ソフィリア様です。ギルド本部でもかなりの大物ですね」


 僕はその名前を聞いた瞬間にため息が出る。

 【占星】のソフィリアの名の通り、人の未来を見たりできるちょっと変わった人だ。

 ただその能力を存分にギルド運営に使った結果、今はかなりお偉いさんになっている。

 そして僕とサラの師匠の1人だ。

 冒険をする際の様々な持ち物やダンジョンへの挑み方なんかを教えてくれた。


「……はぁ。わかりました。今回は僕が行きます」


 僕はギルド本部へと行く準備をする為に書類仕事を早く片付けることにした。


◆◆◆


「憂鬱だ……」


 次の日、僕はギルド本部へと足を運んだ。

 絶対にサラとのことを聞かれるし、いらない依頼も押し付けられる。

 そんなことを考えながらギルド本部の扉を開ける。


「こんにちは。新規登録ですか?」


 受付に着いた途端に発せられる言葉は慣れたものだ。

 僕は見た目が冒険者じゃない。

 腕も細いし剣も杖も持っていない。

 だから大体は勘違いをされる。

 でもギルド本部だけあってきちんと説明をすればほとんどの人はわかってくれる。


「ギルド本部の呼び出しです。手紙はこちらに」


 受付のお姉さんがその手紙を凝視する。

 手紙に穴が開くのではないかと思うほどに。

 

「お兄さん、これどこで盗んできたの?」


 その結果出た結論がこれらしい。


「別に盗んでません。早くソフィリア様を呼んできてくれませんか?」

「手紙は本物と断定致しましたが、貴方が最高の仲間達キャマラッドのギルドマスターであるという保証はありません。どうぞお引き取りお願いします」


 どうやら面倒なことになりそうだ。




———

順調に皆様からの評価をいただけてとても嬉しいです。

本当にありがとうございます。

 

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