銀灰の英雄3(sideサラ
【銀灰の英雄】をという2つ名は正直身の丈に合っていなかった。
【銀灰の英雄】様と呼ばれるたびに浮かぶのは幼馴染のレオンの顔だ。
幼い頃に誓い合った世界最強になったら結婚して田舎で暮らそうという約束。
私は昔から腕っぷしには少しばかり自信があった。
だから彼を守りながらでも2人でパーティーで世界最強になれるとそう思っていた。
「それがどうしてこうなっちゃったんだろ……」
レオンに正論を叩きつけられ、立ち尽くすことしかできなくなった私はふとそう呟く。
数年前までは楽しく2人で冒険できていたはずなのに。
少なくとも師匠に師事していた頃のレオンはとても楽しそうだった。
今のレオンは何にも誰にも期待していない。
そんな目をしていた。
「元【銀灰の英雄】」
「【聖女】ティナさん?」
「ギルマスと何の話をしたの」
「そうですねー。他愛もない話ですよ。冒険中は様々な支援していただいたのでそれのお礼も兼ねて」
「嘘。絶対にそういう話じゃない。だったらなんで戻ってきたギルマスが最高の
「それは……」
私は言い淀む。
あの約束はレオンとの秘密だ。
私とレオンを繋ぐ唯一の鎖だ。
絶対に誰にも話せない。
ただ何かは話さないとティナさんも納得しないだろう。
「私とレオンは元パーティーメンバーなんです」
「……もしかして捨てたの? 高ランクの冒険者にはたまにあることだけど」
「捨てたと言う表現は少し違います。たまたまタイミングが全部悪い方向に重なって結果そう見える形になってしまったといいますか……」
「それでも捨てられた方がそう思っているならそれを訂正しない限り事実は変わらない」
「その通りだと思います……。ただ今更訂正する勇気がないのです」
ティナさんの言う通りだ。
別に私はレオンを捨てたわけじゃない。
実際に私のギルド金庫はレオンは知らないかもしれないが、共用で使えるようになっているしレオンの元に戻る気もあった。
ただあれよあれよといううちに【銀灰の英雄】として祭り上げられ、タイミングを完全に逃した。
ただそれだけなのだ。
ちょっとしたすれ違い。
そんなものの積み重ねと言えるだろう。
「まあいいや。とりあえずしばらくギルマスには近づかないで。折角私達が数年かけてマシにしたのに悪化したら迷惑」
「マシにした?」
「わざわざ部外者に話すことじゃない。貴女は貴女のやる事をやったらいい。私もギルドのメンバーもギルマスに近づかなければ何もしない」
「わかりました……」
それだけを告げるとティナさんはギルドハウスの中へと消えていった。
甘いことを言うと本当は最高の
だけど今のままの私じゃだめだ。
そう考えた私は山奥に居る私とレオンの師匠の元へと向かうことにした。
———
2回目。
星ブクマハート本当にありがとうございます。
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