第21話乱れ心を治すには
恋愛問題で悩み体調を崩したマクシミリアン・ロベスピエール
が休んでいる間に議会や公安委員会の組織内ではダントンの勢力が増しており、
ロベスピエール派を圧迫していた。
「どうしよう。ムカつくけどオーギュスタンの言う通りじゃないか。
他ならぬおれが先生の心を乱れさせ、足を引っ張ってしまったなんて。
もうあの偉大な方の隣にいる資格はない」
いつになく沈んだ様子でデュプレ家を訪問した天使(サン・ジュスト)は、
乙女のように頬を染めて嬉しそうに駆け寄ってきた
マクシミリアンから後ずさりしながらこう告げた。
「先生、おれたち少し距離を置きましょう。これからは恋人(男)として
ではなく、先生を支持する一人の議員として仕えさせていただきます。
毎日、議場やジャコバンクラブで顔を合わせるのだし、
もうここに来るのはやめにします。それでは……」
ドアノブに手をかけ、今にも帰ろうとしていた天使の背後でどさりと音がした。
「先生、大丈夫ですか!?」
驚いた天使は倒れた恋人(男)のもとに駆け寄った。
「うう、苦しい。ここをさすってくれなければ死んでしまう」
童貞はあばた面に苦悶の表情を浮かべて床の上で
のたうち回りながら、腰の辺りを指さした。
「わかりました。おれにできることなら何でもするので言ってください」
真に受けた天使が中性的な顔に似合わずごつい手でなでまわしている
間中、自称病人はハアハアと荒い息をしながら白目をむいてのけぞっていた。
そのうち、指は段々と下の方に移動していき、下腹部に到達した。
童貞の悪知恵にまんまと引っかかった天使は長い間、
指で柔らかい部分をもみもみした。調子に乗った童貞は
「ああ、直接手で触れてくれないと痛みが収まらない」
と言いながら目にもとまらぬ早業で服を脱ぎ捨て、
貧相な脚をむき出しにした。
「マクシムったら、仮病使う時までドエロなんだから」
エロ天使は笑いをこらえ、だまされたふりをしながら
しなびたソーセージをこねくり回すのであった。
「おや、顔色がよくなりましたね。もうそろそろ、お暇していいですか?」
清廉の士とは名ばかりの童貞はわざとらしくうめき声をあげてこう言った。
「おお、今すぐたまったエキスを全部搾り取ってくれないと
今度こそ死んでしまうよ。君だけがこの病を治すことができるのだ」
天使はソーセージを何のためらいもなくほおばり、
喉の奥深くまでくわえこんだので童貞は快感のあまり、大声をあげて
身をくねらせた。天使はあふれ出る大量の肉汁を飲み干して
「治療」を施しながら、
「やっぱりマクシムの味が一番好き」
などと考えていた。その思いが通じたのか、童貞は
「あああ! わしは元気になったぞ! 思う存分抱いてくれ!」
と叫んで四つん這いになった。
「その前にマクシム、お返しにおれのエキスも吸い取ってよね!
いやあん! マクシムったら、うますぎ!
本当におれが初めての男なの!?」
いつもは言葉を発するために使う舌と唇が縦横無尽にはい回り、
絶妙な刺激を与えたので、淫乱な天使はあっという間に絶頂に達した。
「そんなにおいしい? さあ、今度はマクシムの中を
おれで満たしてあげる」
ドSな天使は目を閉じてうっとりしながら
しゃぶっている童貞の口からソーセージを
引っこ抜くと、もう一つの口に
差し込んで、激しくかき回すのだった。
「ルイ、わしだけを見てくれ! 絶対に浮気しないと誓ってくれ!」
童貞は小さな目に涙をためて叫んだが、魔性の天使はにっこり笑って何も答えなかった。
その頃、かつてジロンド派の女王として一世を風靡した
ロラン夫人の身柄を確保するため、国民衛兵が邸宅に踏み込んでいた。
「マダム・ロランですね、ご同行願います」
「フン!
わたしのかわいい
ロラン夫人が地下から呼び出した異形の魔獣たちが
バリバリ音を立てて招かれざる客を貪り食うのを横目に見ながら、
夫人はシャルロット・コルデーにある命令を下した。
「暗殺の天使の名に恥じぬよう、このシャルロット・コルデー、
必ずや、ロベスピエールをこの世から消し去ると誓います」
コルデーはペガサスにまたがって、デュプレ家のある方角に飛んで行った。
「フフフ、今度は思い切った手段を使ってやるからな。
覚悟しろよ、童貞眼鏡!」
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