第20話 買い物.....?(2)
こんな私にデートの資格は無い。
そう思ったが.....渚さんは納得してくれた。
それから私達は歩いて行く。
防波堤から去ってからそのままウィンドウショッピングをし始めた。
「わー.....可愛い」
「.....ああ。服か。そういうの好きだよな。女の子って」
「そうだね。でも私はこういうのには興味無いけどね。.....高い服は要らないかな。中古品でも良いかも」
「そう言うのお前だけだぞ多分」
「私はかなり物欲が無いからねぇ」
そんな感じで楽しげに歩く。
何という楽しい日なのだろうか。
そんな事を思いながらウィンドウショッピングを楽しんでいると。
目の前に人だかりが出来ていた。
私は?を浮かべて渚さんも、何事だ?、と言いながら居る。
見ると.....。
「スッゲェな。花梨ちゃん!」
「花梨ちゃんこっち向いてー!」
「花梨ちゃん!」
何と日本で有名なモデルの花梨が居た。
苗字は分からないが花梨である。
日本中で有名なモデルと言えるが.....何でそんなモデルが?
思いながら渚さんと一緒に見ていると。
「興味あるか?夢」
と渚さんが聞いてきた。
私は?を浮かべて、何が?、と聞き返すと。
モデルだよ、と答える渚さん。
私はその言葉に一瞬だけ考えてから否定した。
「振り向いてほしいのは1人だけだから」
「お前な.....」
「それ以外に興味は無いよ。高いしね。服は」
「.....そうか」
そんな感じで、じゃあ行くか、と渚さんは話した。
私は頷きながら歩こうとする。
その時だった。
ちょっと待って下さい、と声が。
背後を見るとスーツ姿の男性が立っている。
「.....?.....何でしょう?」
「貴方.....可愛い方ですね。.....是非ともファッションモデルやってみませんか」
「.....ふぇ?」
男性はマネージャーの様な感じだ。
私は困惑しながら居ると。
渚さんが、待て、と声を発した。
それから私の前に立ちはだかってから。
「.....すまないが妹が困っているから」
「ああ。すいません。.....それはご無礼を致しました。是非とも私めの名刺をお渡しするのでもしご興味がありましたらご連絡下さいませ」
「.....」
私は名刺を受け取る。
プロダクションプロデューサー服部永生(はっとりながう)と書かれている。
そして渚さんも名刺を受け取りながら眉を顰める。
それから、では忙しいので.....失礼します、と服部という名の男が頭を下げてモデルと一緒に去って行った。
「.....胡散臭いな」
「.....そうだね.....。でも.....」
「興味あるのか?」
「いや。無い。でもお金が稼げるよね?」
「.....まあそうだな。モデルなんだから仕事は仕事だろ。詳しく無いけど」
私は顎に手を添える。
そして名刺を見ていたが。
数秒してハッとしてから、うん。後で考えよう、と呟いて渚さんを見る。
これは置いておいて。
デートの続きしよ、と言う私。
「夢」
「.....ん?何?渚さん」
「こういうのはしっかり考えろよ。.....簡単にOKを出して良い世界じゃ無いから」
「当然だよね。.....分かってる。多分やらないと思うしね」
「.....まあそこら辺はお前だから問題は無いと思うけどな」
私達はそう会話しながら。
歩き出していると。
またウィンドウに格好良いものが飾られていた。
有名ブランドのネックレス。
男性ものだが。
「.....」
でもモデルをやったらこういうのも買えるよね、と考えてしまう。
渚さんにプレゼントしたいなぁ、と思う。
だけどそうだよね。
真剣に考えないと、と思う。
「こういうのも着けても似合わないよな。俺」
「.....そんな事無いよ。渚さん。格好良いと思う」
「.....そうかな」
「うん。だけど買えないけどね」
「そうだな」
でも。
渚さんの誕生日が来たら。
是非とも贈ってあげたい気がする。
こういうネックレスなら似合う。
きっとそう思う。
「しかし凄いな。モデルスカウトされるとはな」
「.....私は可愛く無いけどね。なのに何でだろ?凡人だよ?」
「有難く気持ちだけは受け取った方が良いとは思う。こういうのってなかなか無いだろうしな」
「そうだね。私も初めての経験だよ」
私はきっとこの好きな人の隣に居るから。
だから輝いて見えたのだろう。
私1人なら有り得ない。
思いながら私達は小さいがこの町のデパートに入った。
そうしていると、ちょっとトイレ行ってくる、と渚さんが言う。
「あ。気を付けて」
「ああ。じゃあな。待っててくれ」
そして渚さんはトイレに行く。
私はほうっと息を吐きながらそのまま壁に寄り掛かる。
すると目の前.....先程のモデルが。
私を見て驚いていた。
「.....貴方.....さっきの?」
「.....あ、はい」
「.....」
サングラスを外した。
そして私をジッと見てくる。
よく見ると.....この人。
額に傷がある。
どうなっている、と思っていると。
「.....貴方.....私と同じ目をしているね」
「.....それはどういう.....」
「苦労したんじゃないかな。貴方は。.....私はヤングケアラーだったってやつだけど」
「.....!」
「でもそれはそうとして。さっきの.....服部の言う事は無視でも構わないからね。それを言いそびれていたから」
私に対して笑みを浮かべる花梨。
その姿を見ながら私は顎に手を添える。
それから、私はやらないです。好きになった人が居るので、と答えた。
花梨は、そうなの、と笑みを浮かべる。
「.....人を大切にする気持ちは大切よ。.....しっかり持ってね」
「.....有難う御座います」
「それにしても貴方可愛いわね。.....妹みたい」
「.....」
もし。
お姉ちゃんが私の近くで生きていたら。
こういう感じだったのだろうか。
思いながら私は花梨を見る。
すると花梨は腕時計を見て、あれ。時間ね、と言う。
「.....またね。貴方とはまた会えそうな気がするわ」
「.....」
そして花梨は手を振ってから去って行った。
と同時に渚さんが戻って来る。
私は渚さんに、どうした?、と問われたが。
何でもない、と首を振ってから答えた。
恐らくだがもう会う事は無いだろう。
そう思ったのだが。
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