第19話 買い物.....?(1)

渚さんのお父様。

つまり.....渚さんの亡くなられたお父様が丁度、目黒先生の教え子だったという。

私は衝撃を受けた。

そして私のお母さんも目黒先生の教え子だった様だ。

私はもっと衝撃を受けた。


「私の教え子達は皆、数奇な人生を歩んでいるからな」


「そう.....ですね」


「君の母親の事は.....本当に申し訳無かった。そこまできっちり教育として教えれなくて。私の教え子だったにも関わらず」


「.....それは予測出来ないです。だって.....そうでしょう?」


「まあ確かにそうなのだが.....」


そんな感じで会話をする私達。

渚さんは飲み物を買って来ると席を外した。

その間の会話だ。

私達は顔を見合わせて笑顔を浮かべる。


「君は最上を好いてどうするんだ?この先」


「私はゆっくりいきます。今はまだ何も考えれませんから」


「そうか」


「私は渚さんを幸せにします。そして渚さんと結ばれなくても.....渚さんを幸せにします」


「君の気持ちは大きいな。その感情があれば最上は幸せだろう」


「私は反省ばかりですよ」


「.....それでも今は反省しているんだろ?だったら良いじゃないか」


それから私達は海を見つめる。

防波堤から、であるが。

私は笑みを浮かべて真っ直ぐに見る。

良い海の色だなって.....そう思える。


「君は強いな」


「.....私ですか?私は強く無いですよ?」


「いや。強いと思う。山部もそうだが強い。だが.....何か優し過ぎる気もするがね。複雑な思いも抱えすぎだと思う」


「そうですね.....揺らいでます」


「やはりな。.....揺らぎはそれなりにして。勉強も頑張ってな」


「はい。有難う御座います。目黒先生」


この人は.....あまり近寄りずらかった。

だけど全然.....イメージと違う。

こんなにも良い先生だと思わなかった。

私は思いながらそのまま渚を見る。


「君は反省している。時に最上が許すって言ったから。もう大丈夫だ。君はしっかり前を見据えたまえ」


「何というか春香さんも見据えています」


「.....未来を見据えるんだ。その調子でな」


「.....はい。先生。.....ところで先生」


「何だね」


「.....聞いたんですけど.....昔生き別れた男の子が居るって.....」


「ふむ。その恋はもう必要無い。私には生徒が居るからな。全ての」


そんな事を言いながらも。

悲しげな顔をしていた。

シガレットの形のお菓子を食べる。

私は?を浮かべて見る。

タバコは吸わないんですか?、と。


「馬鹿な。私は君達生徒の前では吸わない。それはきっちり分けないとな。.....だけどこうしてお菓子を食べてないと何だか気持ちが複雑でね」


「.....そうなんですね」


「君も酒を飲み始めたら分かる。そういう年齢になったらな」


「その時に先生は居ますか」


「私は死なないさ。.....何はともあれ頑丈だから」


「そうですね」


そうしていると渚さんが戻って来た。

缶を3つ抱えている。

そして私達に渡して来てからそのまま腰掛ける。

私達に少しだけ複雑な顔をした。


「優樹菜さんによるとですね。.....鈴原が目を覚ましたそうです」


「.....そうか。行かねばなるまいな。私の生徒だから」


「鈴原って何故こんなにも救いようが無かったんでしょうか」


「.....君達は十分に活躍した。.....彼女の心の支えにはなっている。.....だが一歩及ばなかったのだろうな。私も役に立たなかった。彼女の心を変える事は出来なかった。それだけが無念だ」


「先生.....」


思い出すよ。

10年以上前の事をな。

私が.....彼女を成長させて来た事を。

事件を知った事を。

愕然とした事をな、と言う目黒先生。


「彼女は虐待を受けていた。.....それを変える事は出来なかった。だからその分.....今に生かそうとしたのだが失敗だった。教師失格だ」


「そこまでは無いですよ先生」


「そう言ってくれるんだな。.....でも私が悪い。今回はな」


「.....」


言いながら目黒先生はパキッとシガレットを折る。

それからボリボリと食べた。

私達にも1本ずつくれて。

それを食べる。


「長さが短くなりましたね」


「.....それはまあ砂糖菓子だから。燃料費も高騰しているのだろう」


「俺達の関係は長く居たいですね」


「君は上手い事を言うね。座布団を渡そうか」


「渡さなくて良いですよ?」


クスクス笑う私達。

すると目黒先生は立ち上がってから、それでは私は鈴原の所に行く。君達を送り帰してからな、と言うが。

その言葉に赤くなって私は渚さんの袖を掴んだ。


「.....デートしたいです」


「.....おま.....人前で.....」


「ハッハッハ!!!!!青春だ!良いだろう。私は君達を置いて行く。楽しみたまえ」


「.....はい」


そして私達はそのまま先生を見送ってから。

そのまま私は渚さんを見る。

渚さんは赤くなっていた。

それから頬を掻く。

私は笑みを浮かべる。


「.....じゃあ行こうか?」


「で、ですね」


それから私達はデートを始めた。

と言うよりも買い物だけど。

そんな感じで私は歩き出した。

何て素晴らしい日だろう。

そう考えながら。

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