第15話 夢の想い(2)
私は愛している。
お兄ちゃんを。いや。.....渚さんを。
だから私は友人に背中を押されたのもあって渚さんに告白する事になった。
放課後になってから私は指定場所に指定した公園に向かう。
渚さんには連絡してある。
今日.....公園で話があると。
付き人として和希ちゃんも一緒だ。
だけど。
あまりにも心臓がバクバクする。
こんな私が良いのだろうか。
本当に告白とか。
そんな資格が.....あるのだろうか。
本当に私に。
「じゃあ私は隠れて待っているからね。結果を見据えるよ」
「.....ほ、本当に私.....良いのかな」
「うん。今回は上手くいかなくてもいいの。気持ちを伝えるのが大切だよ。こういうのは先ずは想いを伝える事が大切だから」
そんな感じで和希ちゃんは言ってくる。
私はその言葉に赤くなりながら頷く。
それから私は隠れた和希ちゃんを見ながら公園の入り口を見ると。
そこには渚さんが来ている所だった。
手を挙げて私に近付いて来る。
「よお。こんな場所に呼び出しってどうしたんだ?夢」
「.....うん。おに.....じゃない。渚さん」
「.....え?.....な、渚.....さん?」
パーカー姿の渚さんが目を丸くして驚きながら私を見てくる。
その姿を見ながら胸に手を添えてから。
それから顔を上げる私。
意を決した。
赤くなった顔でジッと渚さんを見据える。
そして告げる。
「.....夢?」
「私の気持ちを受け取って下さい。私は貴方が大切な人として好きです」
「.....!!!!!」
「渚さん。私は.....兄妹じゃない。貴方が真面目に好きです。だから是非.....付き合って下さい」
私は全力の想いを。
途中でつまづきながらも伝える。
するとその言葉に渚さんは少しだけ悩む反応をする。
そして、夢。お前が俺を好いている事は知っている、と予想外の答えを発した。
それから、俺も真剣に考えていたんだ、と話す。
俺達は兄妹だからな、とも。
私はビックリしながら渚さんを見る。
「それは.....」
「何というか俺は誰とも付き合わない事にしていた。だけどな。.....夢。お前の姿を見ていて思ったんだ。俺は.....この先誰かに好きって言われても真剣に考えようって。だからゴメン。今の告白は今は受け入れられない。考えさせてほしい。でもお前の気持ちは本当によく分かった。有難うな」
「.....な、渚さん.....!」
まさかの言葉に涙が浮かんでくる。
渚さんにそんなに考えてもらえて嬉しい。
思いながら私は涙を流す。
嬉しい.....本当に。
「私ね。有難う。渚さんに何を言われるか。どんな反応されるか分からなかった。こんな私が告白しても良いのかって思ってた。.....だから.....考えてもらえていたのが凄く嬉しい」
「.....当たり前だろうな。俺はお前の兄なんだ。仮にもな。例えば小馬鹿にされていたとしても.....そんな妹の考えを真剣に考えるのは俺の責務だと思うから」
「うん。.....有難う。渚さん」
「だから待っていてくれるか。答えは必ず出すから」
「.....有難う。渚さん」
すると、うわ。きもーい、と声がした。
背後を見ると.....そこに何故か鈴原が居てそして和希ちゃんが手を握られて捕まっている。
???を浮かべて鈴原を見ている渚さんを他所に思いっきり、和希ちゃん!!!!!、と絶叫してしまった。
「ねえねえ。アンタってさ。女の子も男の子も好きになるんでしょ?キモイね」
「.....ああ。鈴原。お前.....」
「何?もしかして告白されているのを見たのを腹立てているとでも?サボりのアンタの告白とかぶっ壊して問題無いでしょ」
そんな事を言いながら鈴原はヘラヘラする。
私の中に静かな怒りが湧く。
するとその怒りを抑える様に渚さんが手で遮った。
そして目の前の鈴原を見る渚さん。
「.....哀れだな。お前」
「.....は?」
「いや。何というか言って良いか。お前の妹が悲しんでいたぞ。お前の事で」
「.....アンタまさかと思うけど私の妹に接触したの?」
猛烈な勢いで形相が変わる。
だがそれでも、そうだ、と答える渚さん。
そのまま渚さんは真剣な顔のまま、お前が哀れすぎて何も言えない、と話した。
すると鈴原が激昂した様な感じで和希ちゃんを手放す。
それから、アンタ何?何が哀れなの?私の。何が言いたの、と語気を強めて早口言葉の様に言いつつ詰め寄って来た。
「鈴原。俺は当初はお前を憎んでいた」
「.....は?」
「.....だけど今となってはお前の姿を見てずっと哀れだとしか思えなくなった。お前の妹が可哀想だって。そう思うしか無いんだ。.....お前は.....昔は真面目だったそうじゃないか。.....それなのに全部おじゃんにしたって。お前に可哀想以外の言葉に何がある?本当に可哀想だよお前も.....何もかもがな」
「テメェ!!!!!」
思いっきりバシッと渚さんを平手打ちする鈴原。
私は、お前!!!!!、と言いつつ詰め寄ろうとしたが。
渚さんが遮る。
そして、鈴原。気が付いているか。今の平手打ちだが手が震えているぞ、と言う渚さん.....え?
「.....は.....?」
「お前も実際は全て動揺しているんだろ」
「.....アンタ......」
「なあ。鈴原。お前が救いたいものは何だ」
「.....」
歯を食いしばった鈴原。
あーあ!!!!!
気が狂ったわ、と言いながら唾を吐いてからそのまま鈴原はその場を後にする。
虫唾が走るんだよテメェ、と言いながら。
私はその姿を静かに見送ってからそのまま渚さんに駆け寄る。
唇が切れて血が出ていた。
「大丈夫?渚さん.....」
「鈴原をおちょくったのは俺だ。それにこれも計画のうちさ。.....アイツには動揺になったろ。多分だけど」
「.....そんなの.....無茶し過ぎだよ.....」
「まあそれは良いけど。.....なあ。夢。お前の友人か?其方は」
困惑している顔をしている和希ちゃんを見ながら渚さんは言う。
笑顔で、だ。
私はその姿を見ながら、うん、と頷く。
そして、改めて紹介する、と真剣な顔をした。
「.....飯場和希ちゃんだよ」
「こんな形の.....複雑な感じになってゴメンなさい。お兄さん」
「.....大丈夫だ。にしてもこうやって見守ってくれるなんて良い友達を持ったな。夢」
そんな言葉を渚さんは言ってくれる。
笑顔で。
私は涙を浮かべながら、うん、と頷いた。
そして渚さんの顔を見つめる。
だから好きなのだろう。
私はこの人が、と思えた。
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