告白

第14話 夢の想い(1)

私はお兄ちゃんが大好きだ。

恋人とか恋愛とかそういうので。

という事を理解した。


私は.....その事を理解してから。

お兄ちゃんの側に何時でも居たいと思う様になった。

そんな事を考えながら私は今日も学校に行く。


明日は土曜日で休みだ。

丁度明日.....お兄ちゃんと約束の買い物に出掛ける事にした。

楽しみだな、と思いながら私は廊下を歩いていると背後から声がしてくる。

夢ちゃん何処に行くの?、と。


「和希ちゃん」


「中庭?一緒に行きたいかな」


「そうだね。じゃあ一緒に行こうか」


飯場和希(いいばかずき)。

ボブヘアーに髪留めを着けている可愛らしい女の子。

とても可愛い女の子。

私の友人であり.....心から大切な人だ。

そんな事を考えていると、ジュース奢るよ、と和希ちゃんが話した。


「有難う。その気持ちだけ受け取っておくね」


「え?売店で本当に奢るつもりだったよ?」


「ダメダメ。そういうのは受け取れない。こういうのは公正にいかないと」


「もー。何時もお固いなぁ」


「だってそうでしょ?お金も勿体無いからね」


ウインクする私。

和希ちゃんはかなり穏やかな性格をしている。

ホワホワしているって言えるのかも知れないが。

そんな和希ちゃんはLGBTQの存在である。


女の子や男の子を好きになる様な感じだ。

私の事を.....同じ異性ながらも好きだと言っている。

それは.....恋の好きだ。


「私の恋人だから。だからその分大切にしたいから」


「.....うん。有難うね」


「だからその分.....恋を応援したい」


「もー!!!!!お兄ちゃんはそんな感じじゃ無いから!」


「え?違うの?」


「心から好きだけどね!でも.....」


そんな悩みを抱えて中庭に来た。

それから歩いて外に出ると。

和希ちゃんが立ち止まって顔を上げてくる。

夢ちゃん。今.....告白した方が良いと思う、と。

私は言葉に見開いた。


「何それ?兄妹だから?.....でもそれって血が繋がってないよ。血が繋がっていたら最低だけど。そんな固定観念に拘る必要ってないと思う」


「.....和希ちゃん」


「私は.....おかしいなって思う。そんな固定観念を何時までも思うのは。貴方が大切だから思ってるの」


「うん。分かる。貴方はそういう人だから」


「.....うん。じゃあ何で告白しないの」


うん。何でかって言えばね。

ライバルも居るから、と答える私。

それから、私はまだ許されてないかも知れないしね、とも。

小馬鹿にしていた事を、だ。


「だから準備期間が大切.....」


「そんなの必要無いよ」


「え?」


「そうやって後回しにするの駄目だよ。ライバルの人に負けちゃうよ?」


「.....うん」


「今日告白したらどうかな」


私も一緒に行く。

だから告白して、と言ってくる和希ちゃん。

私は赤面しながら、でも、と言うが。

駄目。負けてほしくないの、と言ってくる和希ちゃん。

それから真剣な顔になる。


「.....私の命の恩人である夢ちゃんが一番に幸せになってほしい」


「.....和希ちゃん.....」


「駄目もとで告白して。お願い」


「.....」


赤くなる私。

そしてグラウンドを見る。

そこでは運動部の生徒がいるのだが。


それを見てから目を閉じる。

それから開けた。

グッと拳を握り締める。

その生徒達を見てから和希ちゃんに向いて。 


「分かった。告白する」


「うん。その意気だよ。.....私も陰ながら伺うから」


「.....来るの?それは.....」


「だって逃げる可能性だってあるよね。ダメダメ。そういうの」


「.....でも.....」


「良いから。逃げたら駄目だからね」


私は真っ赤になる。

そして俯いてから顔を覆う。

それから和希ちゃんに向いた。

分かった、と言いながら。

そうしてから、頑張る、と話す。


「.....それでこそ夢ちゃん。私の夢ちゃんだね」


「.....本当に無理矢理だけどねぇ」


「だってこうしないと逃げてばかりじゃん」


石階段に座りながら私に向いてくる和希ちゃん。

私は、まあそうだけど.....怖いんだよね、と言いながらスカートを押さえながら丁度真横に腰掛けてみる。

そして和希ちゃんを見る。


「そこら辺だけが後ずさるよねぇ。夢ちゃんって」


「.....だって臆病だし。こんな私だし」


「.....お姉ちゃんを殺された事?」


「そうだよ。殺人鬼の娘だよ?」


「そんなの全く関係無いから」


私の姉が殺された事は和希ちゃんは知っている。

それは信頼出来るからだ。

でも和希ちゃんだけだ。

こういう.....重要な事を話すのは。

そしてお兄ちゃんと今の家族だけだ。


「.....そういうのって関係無い。だって.....お母さんが酷いだけでしょ。.....夢ちゃんが殺した訳じゃ無い」


「.....うん。確かにね」


「だから私は告白しても良いと思う。.....まあ小馬鹿にしていたのは駄目だけど」


「.....それも照れ隠しだったからね」


「うん。照れ隠しだよね?.....反省しているんだから。だから告白して。今日」


「.....無茶苦茶だけど.....自信が付いた。有難うね」


私が本気で恋をした人だから。

だから.....貴方には幸せになってほしいだけ。

と言いながら私を見てくる和希ちゃん。

男前の顔だった。


「.....幸せにならないと許さない」


「本当に良い友人を持ったよね。私」


「.....うん。それは私も」


満面の笑顔の和希ちゃん。

今はこうして笑っているが。

昔は違った。


和希ちゃんは入学式の日に電車に飛び込もうとしていた。

それを私が止めてから救ったのだ。

必死に説得して。

それから友人同士になった。

こうして深い友人になったのだ。


「人生は不思議だね」


「箱庭って言うけど.....絶対に違うよね」


「そうそう。世界は広いね」


そうして風を感じていると。

キーンコーンカーンコーンと音がなった。

帰らないといけない。

思いながら私は、行こうか。和希ちゃん、と手を握る。

和希ちゃんは、うん、と柔和に反応した。


そして。


友人の言葉で無理矢理ながらも私は告白する事になった。

駄目もとで。

お兄ちゃんに異性として、だ。

兄妹じゃなく。

それをぶっ壊して恋する1女子として。

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