第13話 甘いよそれは。お兄ちゃん

「今は駄目に決まっているでしょ。お兄ちゃん」


「.....夢.....」


「何?イジメを受けていたから?だから何?そんなの言い訳。だからお兄ちゃんは許すの?一部だけでも?.....それは.....甘いよ。お兄ちゃん。私が言える立場じゃ無いけど.....でも絶対に駄目。まだ甘い」


「.....それだけ怒る気持ちはわからんでも無いが.....」


帰って来てから。

放課後になって帰って来た夢に全て説明した。

俺の身を案じてくれる。

そしてそれ故にかなり反発した。

俺の意見に。


「.....お兄ちゃん。私は姉をこの世から消された。.....それも全部お母さんのせいだけど。.....でもお母さんだって現にお母さんの親から虐待されていた。.....だから虐待していたらしいの。鈴原と同じ様な感じで精神が死んだらしい。でもそれでもお母さんは気持ちが一切変わらず私の姉を殺した。その事を考えると変わるとは思えない。今の鈴原が。だから私は怖い。お兄ちゃんが殺される。お兄ちゃんの人格が殺されるのが」


「.....夢.....」


「私は絶対に許せない。そして私の心には傷があるから。その分絶対に今は許せない。まだ何か見ないといけない。見据えないといけない」


「.....そうだな。確かにそうなのかもしれないな」


お兄ちゃんはお人好しすぎる。

だからそんなだから.....私が好きになって.....、と言うが。

聞こえない。

そう聞こえた様な気がしただけだ。

だから.....、以降が聞こえない。


「.....?.....何を言った?」


「な、何でもない!!!!!だからお兄ちゃん!まだ鈴原は様子見で!」


「は、はい!」


「.....今は許すには早いよ」


「.....分かった。確かにその通りだな。お前の意見も尊重する。.....流されそうになっていたが」


そうだな。

甘すぎるのかもしれないな俺は。

思いながら俺は.....夢を見る。

すると、うむ、と夢は頷いた。

そうしてから夢は、ねえ。それとは別だけどお兄ちゃん、と言ってくる。


「.....お買い物に付き合ってくれないかな」


「買い物?そんなものに付き合ってどうする?」


「えっと.....嫌なら.....良い」


「.....」


夢がモジモジする姿を見ながら。

目黒先生の顔が浮かんだ。

俺は顎に手を添えてから、分かった、と答える。

それから夢に笑みを浮かべる。


「お前が付き合ってほしいならお前と付き合う」


「ふぇ?」


「.....え?」


「お、お兄ちゃん.....付き合ってほしいって?」


「.....あのな.....!?何を誤解している!?い、言い間違えた!!!!!」


そ、そうだよね!ahaha!、という感じで表現する。

俺は赤くなりながら、何を言ってんだか.....、と思いながら首を振る。

それから、まあそれは置いて。付き合うよ。買い物、と言う。

すると夢は、有難う。お兄ちゃん、と笑顔を浮かべた。


「.....」


「.....どうしたの?お兄ちゃん」


「.....何でも無い。ただ人付き合いってのは大変だな、と思ってな」


「あー.....まあそうだよね」


夢は頷きながら、うんうん、とする。

すると、私もね。お兄ちゃん。実は.....悩ましいの。人付き合い、と言ってくる。

俺は?を浮かべながら、それはどういう意味だ?、と答える。

そう言うと夢が、私ね。LGBTQのお友達が居るの、と言ってきた。


「.....LGBTQって.....性的少数者ってやつか?」


「そう。でも女の子でも男の子でも愛せるんだって。.....世界的に有名なアーティストのロックのあの人もそうだったけどね」


「.....ああ。例のな」


「嫌がらないでね」


「.....何も言ってないだろ。大歓迎だよ。そういう人も。人は人だ。.....でも悪い意味じゃないけどなかなか配慮するのが大変そうだな」


「でも彼女の事は素晴らしいって思ってる」


言いながら俺を見てくる夢。

俺は、是非ともお会いしたいないつか、と笑みを浮かべた。

すると夢は、うん。今は色々あるし周りの関係で調子が悪いから、って言ってる。

お兄ちゃんの事はね、と話した。


「.....その娘も許せないって言っているから」


「話したのか」


「学校中で噂だよ。だって.....現に学級崩壊みたいなのが起こしているし」


「.....まあそうだな。全て鈴原のせいでもあるけど。学級崩壊かもな」


「そうだね。だから私も隠していたけど隠しきれなくなった。噂が噂を呼んでしまって.....ゴメンねお兄ちゃん」


「何でお前が謝るんだよ。意味が分からない」


言いながら俺は夢の頭に手を触れる。

それからガシガシと頭を撫でた。

すると夢に思いっきりジト目を向けられる。

お兄ちゃん。女の子の髪の毛は命だって事は知ってるよね?そんな事をしたら準備した時間も無駄になるんだけど、と言ってきた。


「.....す、すまん」


「クス。まあお兄ちゃんだから許すけどね」


「.....そうか」


そして夢はクスクスと笑ってから改めて俺を見てくる。

それから指を差して言ってくる。

先ず鈴原は許すには早すぎる事、と。

そうしてから、その件がもしこの先片付いたら私の友人に会ってほしい、とも。

俺は、分かった、と返事しながら柔和になる。


「.....ねえ。お兄ちゃん」


「.....何だ?」


「もし、もしだけど」


「ああ」


「私が恋人になってって言ったら彼女にしてくれるかな」


「.....」


数秒真剣に考えた。

そして顎がガクッと落ちる。

何を言ってんだ!?

兄妹だって言ってんのに何を!?

俺はボッと赤面する。


「お前.....!?」


「アハハ。冗談だよ」


「だ、だよな」


だけどその顔が少しだけ悲しげなのはどういうこった。

思いながらも聞かない事にする。

これは聞かない方が良い様な気がしたから、だ。

心臓が高鳴る。

あくまでおちょくっているだけではあるだろうけど.....。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る