第12話 鈴原御幸の過去

翌日の事だ。

俺は外に出てから春香と接触していた。

春香は俺に呼び出されたのをかなりビックリしていたが改めて話がしたい。

そう思って俺は春香を呼び出した。

此処は近所の公園である。


「渚から呼び出してくれるなんてね」


「.....ああ。すまんな。話がしたいと思った。.....イジメの。学級の崩壊について」


「うん。きっとそうだろうと思った」


「お前相当.....やつれたんじゃないか」


「やつれたね。食欲も無い」


「.....」


俺は、テヘヘ、と苦笑する春香の姿を見ながら溜息を吐く。

イジメによるものか。

それとも俺に対するものか。

よく分からないが.....それでも現に食べれてないのだから。

学校に行く意味が無い。


「.....春香。学校を暫く休む事にしたんだよな?」


「うん。そういう感じになってる。南ちゃんもだけど」


「.....」


「.....ゴメンね。私が悪いよね。.....君を悩ませているの」


「全ては鈴原が原因だ。.....だからそんなに悩んでない。根本の原因は奴だから」


「.....渚.....」


俺を潤んだ目で見てくる春香。

そして何かを決心した様にしながら俺を見てくる。

渚。今までの事は全部謝りたいって思う、と言ってくる。

それから、上から目線になっちゃうかもだけど許してとは言わない。今の状況が落ち着いたら考えてくれれば良いから、と言ってくる。


「ああ。.....分かった」


「.....今は私達をどうにかしないとね」


「そうだな。取り敢えず俺達をどうにかしないとな」


「.....渚だけでも学校に行けたらね.....」


行く時は全員だ、と切り出す俺。

そして笑みを浮かべて春香を見た。

春香は俺を驚きの眼差しで見てきながらも。

うん、と頷いた。

そして涙を拭ってから、今頃はみんな勉強しているのにね、と言う春香。


「.....仕方が無いな。戻れないんだから」


「そうだね。.....戻れないからね」


そんな会話をしていると。

目の前の道路を中学生ぐらいの子が歩いて行った。

そして引き返して俺達を見てから。

複雑な顔で近付いて来た。


「あの」


「.....はい?」


「もしかして最上さんと山部さんですか」


「.....え?何で名前を何で知ってんだ」


「.....私は鈴原優樹菜(すずはらゆきな)って言います。不登校支援の学校に通っています」


その髪の毛を短髪にして男みたいな格好の女の子は。

俺達にそう告げてから目線をずらしながら鞄を背負い直した。

そして改めて俺達を見てくる。

俺と春香は愕然としていた。

まさか、と思いながら。

顔が似ているが。


「.....鈴原の妹さんか何かか」


「.....そうです。.....姉が.....悪い事ばかりしていて.....」


「そうか」


「お姉ちゃんは狂ってます。.....私を守る為に」


私を守る為に?、と春香が不思議そうな感じで言う。

するとその優樹菜さんは、はい、と沈む様に口を開いた。

そして、お姉ちゃんは昔は相当に真面目だったのにあんなに狂ったんです。イジメっ子になったんです、と答える。

俺は?を浮かべて見る。


「.....私、イジメで嵌められたんです。クラスメイトに。.....そしてその居場所を守ろうと.....私を守ろうとしたけどお姉ちゃんも教師とかに感情の闇に嵌められて不良という渦に飲まれました」


「.....つまり鈴原がおかしくなった原因もイジメか」


「です。.....私を守ろうとしたから.....お姉ちゃんは崩れたんです」


「鈴原がそんな過去があるなんて」


「.....だな」


鈴原は叫んでいたのかも知れない。

彼女のやった事は全然許せないが.....だけど。

守りたいものがあったのだな。

思いながら俺は優樹菜さんを見る。

優樹菜さんは手を広げて見つめる様にしてから。

号泣し始めた。


「.....迷惑ばかりだけど.....それでも良いお姉ちゃんです」


「そうなんだな」


「はい.....」


私にとってはお姉ちゃんは全ての希望です。

でも今は嫌いです。

だってイジメをするから。

そして不良になってしまった。

だから嫌いです。

でも私は心底は嫌いになれないです、と言ってくる優樹菜さん。


「.....優樹菜さん」


「.....はい」


「鈴原は悪い子だ。.....だけどその中でも事情は知った。.....だから話し合ってみる」


「そうしてくれるだけで希望が湧きます.....」


取り敢えず優樹菜さんの事を出してから。

アイツと話をしよう。

全く許せないけど。


だけど.....一筋の希望があるなら話し合う価値はある筈だ。

そしてアイツも反省を見せれば。

多少は許すつもりだ。


まあそれは.....後々の話だが。

思いながら俺は空を見上げる。

そして優樹菜さんを見る。


「今日は学校なのか」


「はい。フリースクールに近い学校でした」


「.....今は奴とは全く話す気にはならないけど。.....でも分かった。いつかアイツと.....取り敢えず話してみる」


「渚.....」


「.....0では無いから。.....だから頑張ってみる」


そして俺は深々と頭を下げる優樹菜さんと別れてから。

鈴原の顔を思い浮かべる。

だがやはり悪寒がする。

今は話せないな。

そう考えながら.....春香を見た。

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