第11話 生徒会長になる

家に帰宅してから夢が帰って来たのを見計らい。

俺はリビングのドアを開ける。

それから驚く夢を見た。

夢は俺を見てから見開いている。


「どうしたの?お兄ちゃん」


「.....夢。正直言ってな。俺はお前を許せない部分も多々ある。.....だけどな一部だけでも許そうと思う。.....お前も苦労を重ねて来たから。お前の言葉に納得したよ。気持ちも納得した」


「お.....お兄ちゃん?」


有難うな、と言いながら俺は腕を差し出した。

そして飛び込んで来る夢。

鞄を投げ捨てながら。

それから夢は号泣し始める。

お兄ちゃんに酷い事を言ったのを謝る、と言いながら。


俺はその夢をしっかり抱き締めてから。

そのまま頭を撫でる。

目黒先生は言っていた。

たまには前を見ろ、と、だ。

だから.....前を見てみる。

このまま止まるぐらいなら、と。


〜〜〜〜〜


お兄ちゃんの温もりは.....本当に暖かい。

どれぐらいかって言えば心臓がバクバクする。

安心する。

ホッとする。

そして何よりも.....思っちゃいけない感情が湧く。


最近.....私もちょっとずつだが理解してきている。

これは絶対に今の私達兄妹では絶対に持ってはならない有り得ない感情だが。

私はお兄ちゃんが好きなんだ、と。

それは異性として。

兄妹の次元を超えているが.....。

こんな優しい人を好きにならない方がおかしいのだろうきっと。


「お兄ちゃん」


「何だ?」


「.....イジメの件。話せた?目黒先生と」


「そうだな。.....まあ多少は話せたかもな」


「.....そうなんだね。良かった」


だけどまだ何も纏まってないからこれからだな、と言うお兄ちゃん。

私はその姿を見ながら目を逸らす。

複雑な顔で、だ。

まさか.....クラス崩壊が起こっているとは思わなかったから。


「お兄ちゃん。春香さんもイジメを受けているんだよね」


「.....そうだな。春香もそうだが友人もな」


「.....許せない。.....殺したくなる」


「止めろ。良いけど犯罪だから」


「そうだね。.....社会的に抹殺したい」


怖いな。

でもそこまで言ってくれるのは有難いが。

きっとアイツ。

鈴原も何かしらあったんだろう。


これは.....考えても仕方が無いけど、と呟くお兄ちゃん。

アイツが変わるきっかけが何かしらあった筈だ、とも。

その中で私は呟いた。


「お兄ちゃんの事が好きなのに。許せない」


「.....ふぁ?」


「.....あ」


口が滑った。

私はボッと赤面する。

それから大慌てで、それは兄妹としてね!!!!!、と絶叫する。

するとお兄ちゃんは、ま、まあそうだよな、とホッとする。

危なすぎる。


「す、すまない。俺が異性として好きなのかと思った.....」


「そ、そんな訳ないでしょ!」


「.....吃驚させんな」


「私も吃驚だよ!」


そして私は胸をバクバクさせるのを抑えながら。

危ない危ない、と言葉を選び。

そのまま告げる。

で。どうするの、と。

するとお兄ちゃんは顎に手を添えた。


「取り敢えずは春香と話す。南ともな」


「クラスアンケートをするって言ったけど.....2年生全生徒でするとも考えているらしいよ。校長先生が」


「それは有難いな。だけどそんな事をしても無意味だと思うから。.....先生達には申し訳ないけど本音を書けないのがアンケートだから」


「そうだね。.....お兄ちゃんがまた行ける様になるまで転校も視野に考えたいね」


「.....そんな簡単に転校出来れば苦労しないけどな」


「許せないもん」


絶対に許せない。

現状況が、だ。

アイツらは平然と.....今日も学校に行ってからヘラヘラしている。

その事が怒りだ。

私の大切な恋をしているお兄ちゃんがこんな目に遭っているというのに。


「.....何でお兄ちゃんだけが.....」


「.....仕方が無いよな。呪われているんだよ俺は」


「そんな事ない。お兄ちゃんは.....お兄ちゃんは.....正義の味方だから」


そんな大それたもんじゃないよ、と言うお兄ちゃんだが。

私にとってはヒーローだ。

だから.....姉が殺された悲しみも乗り越えた。

絶対にこのままでは終わらせれない。


「.....待ってて。お兄ちゃん。絶対に学校にまた一緒に行きたいから」


「ああ。期待しているよ。お前にも。先生にもな」


「うん。絶対に。.....それからお兄ちゃん」


「.....何だ?」


「私だけど来年.....生徒会長になる」


私の目標を告げると。

お兄ちゃんは驚愕した。

そして俺を見てくる。

それは俺の為にか?、とも。

私は頷きながら、学校改革だよ、と言う。


「.....このままで終わらせて良いわけが.....無いもん。だったら1から改革するんだ」


「.....迷惑掛けているな。お前には」


「そんな事ない。私のヒーローを蘇らせる為なら。何でもする」


「.....夢。有難うな」


お兄ちゃんは笑みを浮かべた。

この瞬間、私に夢が出来た。

大きな夢だ。


それは.....みんなの環境を整える。

その為には生徒会長にならないといけない。

そういう目標が、夢が、だ。

絶対に叶える。

お兄ちゃんが心から好きだから。

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