第10話 教師になった理由と誰かを好きという感情
目黒先生と一緒に水族館に来た。
館内を歩きながら目黒先生は小魚や魚やクラゲなどを見ながら、これでも生きているのだからな.....不思議なもんだ、と呟いている。
それは確かにな。
でも不思議と争いは.....というかこんな俺の様なイジメはそんなに起きないよな。
「時に君は.....喧嘩したそうじゃないか。自らの幼馴染と」
「.....そうですね。喧嘩はしました。何というかです。でもこんなに大きな現象まで招くとは思いませんでしたけど」
ふむ。まあ.....喧嘩は若いうちなら幾らでもして良いが。
仲違いはするなよ、と言ってくる目黒先生。
俺は?を浮かべながら目黒先生を見る。
目黒先生は苦笑した。
「仲違いをした為に後悔のある人生を歩んでいる奴が目の前に居るからな」
「.....目黒先生が?」
「そうだ。初恋だったな。.....だけど仲違いで.....全て失った」
「.....それはどっちが悪かったんですか」
私だな、と言う目黒先生。
今の性格が形成されたのはその時期からかもしれん。
最上の様な.....そんな簡単なものじゃないけどな、とも言う。
私は相手をイジメから守り切れなかった。
それどころか悪い様に動く様な感じで嵌められたんだ、とも。
「.....それで相手の男の子とは仲違いになった。そして引っ越して行った。その先の連絡先などの情報は無いからもう二度と会えない。まあでも教師になったきっかけにはなったけどな」
「クラスメイトに嵌められたのが似てますね」
「.....そうだな。だから今の状況は正直.....私には少々キツイ。鈴原とはそれなりに話す予定だ」
「期待してます」
そんな会話をしながら歩いていると。
目の前に大きな水槽が現れた。
俺が幼い頃に来た時よりも変わっている。
つまり改築されたのだろう。
思いながらその水槽を見ていると。
シュモクザメとかが居た。
「鈴原は.....彼女も過去に傷を負っている様だ」
「.....それは.....初耳ですね」
「教師として教えて良いものじゃないが。.....彼女も過去は相当なものと受け止めている。.....今の高校も.....それなりで選んだ様だ」
だがそれであってもイジメは良くないが。
そう呟きながら手すりを持つ目黒先生。
そして目の前の青々した水槽を見る。
水槽には巨大なサメとかが占めている。
この水槽は社会の縮図だな、とも呟いた。
「.....社会の縮図っての理解出来ます」
「皮肉なものだな。この水槽など人間が人間の縮図を作り上げる様な感じなのは」
「そうですね。かなりの皮肉ですよね。それは思ってました」
すると目の前を見ていた目黒先生が俺を見てきた。
それから笑みを浮かべる。
そして聞いてくる。
「時に君は好きな人は居るのかね」
「.....好きな人っすか。.....居ないですね」
「.....そうか。君なら居るかと思ったのだが」
「まあ理由としては親父の死ですね」
「その件については本当に.....御愁傷様と言える。.....すまない。これ以上の事が言えなくて」
彼の死は衝撃的だった。
私の元教え子だから元気だったからな、とも。
そして複雑な顔をする。
俺はその姿を見ながら水槽を見た。
すると、私は.....君の将来を楽しみにしている、と言ってくる。
「俺の将来っすか?」
「ああ。君は偉大になる。私が言うのだからな。だから今は休息期間だ」
「.....そんな事は無いっすよ。的が外れてます」
「君は何時もそう言うが。もう少し周りに視線を向けてみてほしい。.....君は本当に良い子だぞ」
「.....そんな事は無いっすよ」
確かに良い子だとは言われた。
昔から義妹から全員から。
だから俺は良い子をしていたのに。
神は裏切り親父は死んだ。
だから俺は良い子を捨てたのだが。
それでも目黒先生は俺を良い子だと言う。
そんなもんかね。
「.....君はもうちょっと自分に自信を持ちたまえ。そして.....目の前を見つめるんだ」
「.....そうですね」
「君は.....私の自慢の生徒だからな」
「有難う御座います。そう言ってくれて嬉しいです」
よし。それじゃあこれは置いて。.....取り敢えずは戸松と山部の話をしようか、と言ってくる目黒先生。
俺はその言葉に眉を顰める。
すると、取り敢えずはクラスにアンケート調査をしようと思う、と言ってくる。
そしてそれから対策を立てようとは思うが、とも。
「.....進路指導部の先生と学年主任の先生に協力を仰ごうと思う。もう既に事態は動いてはいるがね」
「.....南と春香はどうなりますか」
「取り敢えずは学校は休ませる事にしようと思うが。そこら辺は三者面談などだな。まだまだ課題は山積している」
「.....話しても良いんですか?そういうの」
私は常識から外れている教師だからな、と言ってくる目黒先生。
それは駄目だろ、と思いながらも。
そういうのがあるから信頼に置けるんだな、と思える。
すると目黒先生はスマホを見て驚愕した。
ハッとした感じだ。
「いかん。戻らないとな。.....付き合ってくれて有難う。最上」
「.....先生。歩いて帰るんで良いっすよ。送らなくて」
「そういう訳にはいかん。きちんと送る。.....何。多少は遅れても問題は無い」
「あると思うんですが.....」
その場合は言い訳をするから、と言いながら笑顔を浮かべる目黒先生。
いやそれも駄目だろ、と苦笑いで思ったが。
俺は言葉に甘える事にした。
そして俺は帰宅する。
その際に.....考えていた。
夢との接し方。
そして将来の事を。
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