第7話 そんなものどうでも良いしね
俺を舐めていた輩を打ち消してから夢は俺を連れて学校を出た。
あまりに激し過ぎるイジメに.....流石に怒りしかない様だ。
だがどうすれば良いのだろうな。
思いながら俺は目の前に居る夢を見た。
「良いのか。お前。.....皆勤賞とかが全部パーになっちまうぞ」
「私はお兄ちゃんが大切。こんな私が言える立場じゃ無いけど。.....でもこんなので学校に行っても意味無い」
「それは確かにそうだが.....」
まさか小さないざこざがこんなに発展するとはな。
思いながら俺は目線を逸らせて空を見る。
それから溜息を吐いた。
すると、お兄ちゃん、と夢が言ってくる。
そうしてから、喫茶店に行かない?、と笑顔を見せる。
「お気に入りの喫茶店があるの」
「.....いや。それは良いけど.....良いのか。こんな時間から学生が.....」
周囲の目が気になる。
思いながら俺は眉を顰めた。
すると夢が俺を見てくる。
柔和な顔で、だ。
「.....私にはもうこれぐらいしか出来ないけど。楽しいじゃん。サボりってのも」
「生真面目なお前がな。.....珍しいこった」
「私は馬鹿にされるのが大嫌い。小馬鹿にしていた私が何言ってんだって感じだけど。私は.....理由.....があったんだけどね」
「理由があったのか」
「うん。.....でも言わない方が良いと思う。それが正しいのか分からないし」
それから俺を見てくる夢。
その目は少しだけ潤んでいた。
俺はその姿を見ながら、そうか、と返事をする。
そして俺達は喫茶店に移動を開始した。
☆
喫茶店のマスターは気さくな人だった。
説明するなり、ああ。幾らでも居て良いよ。問題ない、と受け入れてくれた。
俺達は言葉に驚きながら目を丸くする。
それから笑みを浮かべた。
「良い喫茶店だね」
「そうだな。インパクトがあるな」
「静かだけど.....輝く感じだね」
「ああ。落ち着く」
そして俺達は50代ぐらいの坊主のマスターを見る。
そのままコーヒーとパンケーキを食べたり飲んだりする。
そうしているとマスターが、これおまけね、と言ってくる。
それはパフェだった。
「え?!良いんですか!?」
「くっだらない世界なんて忘れて食べなさい」
「.....有難う御座います。すいません」
「.....僕もイジメを受けていたんだ」
マスターは言いながら苦笑いを浮かべる。
そして丸眼鏡をくいっと上げた。
俺達は驚きながらその姿を見てみる。
するとマスターは、驚きだろう?僕は.....有能じゃないからイジメられていたのさ、と告白してくる。
「嫌だったら何時でもこの場所に逃げておいでね。少年」
「.....はい」
「君もだけどね。此処はそういう場所でもあるから」
「.....有難う御座います」
互いの顔を見ながら笑みを浮かべるマスター。
そしてパフェにスプーンを添えてから。
そのまま去って行く。
俺はその姿を見ながらホッと息を吐く。
それから、良いなこの場所は、と呟いてみる。
「そうだね。こんなに良い場所だなんて思わなかった」
「.....何処で知ったんだ?此処」
「此処?此処はね.....花梨さんの紹介」
「.....ああ。成程な」
それから夢は笑みを浮かべる。
俺はその姿に胸に.....何かくるものがあった。
くるってのは.....何だろうな。
少しだけ氷が溶ける様な。
そんな感じの思いだ。
〜〜〜〜〜
お兄ちゃんにこんなに積極的にお世話をする私は本当に場を弁えないなって思う。
相手は私を嫌っているのに、だ。
だってそうだろう。
私は.....小馬鹿にして嫌われたんだから。
「お兄ちゃん。パフェを一緒に食べようか」
「そうだな。.....でもお前。間接キスになるぞ」
「.....あ」
か、か、か!!!!?
私は真っ赤になりながら、マスターさん!スプーンもう一本!、と目を回す。
最近私はやっぱりおかしいもんだ。
何故かと言えばこんな感じで熱くなるし。
お兄ちゃんを見ていると、だ。
それが本当にそれなのかは分からない。
だけど.....私は何だかそんな思いを感じる。
それってのは.....つまり。
恋、だ。
まさかな、って思うけど。
兄妹なのに?
「.....いけない」
今はそんな事を考えている場合じゃない。
お兄ちゃんの将来を見据えないと。
可哀想だ。
お兄ちゃんがあまりにも、だ。
だからどうにかしてあげたいのだ。
「その為には私は.....絶対に」
「どうした?食べないのか?」
「あ.....お兄ちゃん。ゴメンね。食べよっか」
「.....???.....何を考えていたんだ?夢」
「何でもないよ。お兄ちゃん」
私のとても大切な人をイジメているのは許せない。
絶対に許さない。
あの女。
今直ぐにでも刺し殺したりぶち殺してやりたい気分だ。
お兄ちゃんが嵌められたと小耳に挟んだ時。
私は全てを絶望した。
浮気では飽き足らずそんな真似をするとは思わなかったのだ。
だから私は思う。
もう二度とお兄ちゃんを.....離さない、と。
こんな身でも護れる何かがある筈だ。
そう考えたから。
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