第6話 悪夢が歩み出す時

俺と夢の間には相当な溝が生まれた。

そして夢じゃないが。

山部春香という俺の幼馴染とも溝が生まれた。

思いながら俺は翌日になって登校を始める。

その際に山部が声を掛けてきた。


「な、渚。流石に冗談だよ。あれは。御免なさい」


「.....」


「無視.....」


「.....」


何も言えないまま元幼馴染は足を止める。

それから暫くしてまた追い掛けて来る。

コイツも流石に許せない。

昨今の事だが。


「.....その。御免なさい。本当に.....馬鹿だった。だけどそんな.....そんなに怒るとは思わなかった。ゴメン。本当に私が.....」


「俺が浮気されたの知っているか」


「.....え.....い、いや知らない.....御免なさい」


「その影響でな俺は人格が壊れた。.....だからもう話し掛けるな。お前とは他人同士でいく」


「.....そ、そんな.....」


わ、私の.....え.....嘘、と言いながら立ち止まってから泣き始める山部。

俺はその姿を見捨ててそのまま登校した。

そして目の前を見ると。


最低だねぇ、と声がした。

それは.....俺の元カノ。

つまり浮気したクズだった。

黒髪の女。

名前を鈴原御幸(すずはらみゆき)という。


「何だお前は」


「いやいや。幼馴染ちゃんを捨ててるなんて何してるの?」


「.....お前に言われたくはないな。.....お前の事をバラしてやっても良いんだが」


「そんなの別に問題無いけど。私の事は浮気されたって事を周りに周知したしね」


「とことんのクズだな。お前という奴は」


そしてコイツにホイホイ告白されて付いて行った俺も馬鹿だが。

クラスメイトに嵌められてしまった事になる。

人は権力者から一度流れた噂を信じると他の噂は信じれなくなる、とはこの事なのだろうか。

俺が幾ら説明しても信じてくれなかったしな。

リア充は流石最低だな。

思いながら俺はそのまま鈴原を見捨てる感じで歩き出す。


「アンタさ。あのままで良いの?」


そもそもに歪んだ原因はコイツなのだが。

俺は思いながら鈴原を思いっきり睨む。

それから、全てお前のせいだが、と告げると。

あはははは!!!!!、と爆笑した。

コイツマジにクズだわ。


「何言ってんの?全部浮気したアンタが悪いんだから」


「.....」


濡れ衣を被せられて頭が痛い。

コイツと話していると何もかもが絶望的だ。

思いながら俺はその場から去った。


それから教室に向かうと。

噂は噂を呼び。

俺に対して冷たい反応になっていた。

どれぐらいかと言えば。

無視も陰口も酷い。


=====


私は愚かすぎたと思う。

何がと言えば渚に対して私は酷い事を言った。

だけどそれは置いてしても教室はあまりに酷い有様である。

渚に対してイジメが酷い。

それに言い返すのも疲れている様に見える。


「.....酷い状態」


「.....そうだね」


私の友人の戸松南(とまつみなみ)はそう言う。

学級委員をしている。

その渚の状態に先生に訴えたりしてくれた。

今も止めたりしているが。

キリが無い。


「取り敢えずは渚くんと話した?」


「.....何も出来てない。私が火蓋を切ったから」


「ダメよ。そんな状態じゃ。何か話さないと」


「でも話しても無視される.....」


どうしたら良いのだろうか。

そう思っていると。

教室のドアが蹴り破られる様に開く。


それからかなり厳つい顔の義妹ちゃん。

つまり渚の妹さんが入って来た。

そして教室に声が枯れそうなぐらいに絶叫する。


「私のお兄ちゃんをイジメるな!!!!!」


と。

そして夢ちゃんは自らの兄の所に向かう。

教室は固まっていた。

それから、夢、と言う渚の手を握る夢ちゃん。

そして、帰ろう。くっだらない、と吐き捨てる様に言いながらそのまま鞄を手に持ってから去ろうとする。


「今日は学校に来なくて良いよ。お兄ちゃん。この火が消えるまでは」


「いやいや。何言ってんだ.....お前」


「ダメ。お兄ちゃんの身が心配だから」


それから夢ちゃんは一緒に帰ろうとする。

そんな夢ちゃんに向いた。

そして、夢ちゃん!、と声を掛ける。

すると夢ちゃんは?と私を見る。


「春香さん.....」


「任せて良いかな。渚の事。.....私じゃどうしようもないから」


「.....そうですね。事情は知っていますので」


「うん。頼んだよ」


そして私はクラスメイトを見渡して見る。

特に.....ゲラゲラ笑う人を見た。

それは渚を振ったとされ。

そして渚に罪を被せた女.....であり私の敵である女を。


じわっと涙が浮かんだ。

私が.....悪いとは言え。

でも渚を傷付けた3割ぐらいはあの女が悪い。

大嫌いだ。

そうしていると南ちゃんがゆっくりと耳打ちをしてきた。


「.....春香。あまり怒らないで。私が何とかするから」


「うん。私も頑張るけど.....お願い」


今はどうしようもない世界かもしれない。

だけど私にも何か出来る事がある。

今だと思う。


後悔してもしきれないが。

私が悪いのは事実。

きっとある筈だ何か出来る事が、だ。

私は.....好きを隠す為に.....渚を小馬鹿にしていたのもあるから。

好きだからこそ.....やってしまったから。

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