第5話 一歩

私はお兄ちゃんの気持ちは何も分からない。

と言うか.....本当に最低過ぎる女の子なんだと思う。

私は助言が欲しかった。

こんな私が救われる様な.....そんな助言が大人の人から。

だから私は知り合いの所に行った。


髪の毛を切ってみた。

すると凛花さんは私に笑顔を浮かべながら話を気軽に聞いてくれてから。

私は気が楽になった気がする。

馬鹿な私が少しは学んだ気がする。


「凛花さん。私は.....どうしたら良いと思いますか」


「.....うん。そうだね。.....今は何も言えないけど。徐々にやり直していくしかないよね。例えば.....ちょっとした事でもサポートしてあげるとか、さ」


「そうですか。でも確かにそうですよね。私.....浮かれすぎていましたから」


「夢ちゃんのやった事は罪深いけど。.....でもしっかり反省はしている。その気持ちを伝えるのも大切かな」


「そうですよね。.....私.....本当に情けないです」


私は沈黙しながら涙を浮かべる。

すると私の頭を凛花さんが撫でてくれた。

そして、落ち込みばかりじゃ駄目だよ。前を向いて歩かないとね、と言ってくれる。

私は心底励まされた気がした。

今の私に出来る事.....。


「.....お兄ちゃんには今はずっと謝る事しか出来ないです。.....でも反省も兼ねてですが今から前を向こうかと思います」


「そうだね。.....それはとても大切だと思う。私は応援するよ」


「昔の事を忘れない様に髪の毛を切って整えて。.....それから頑張ります」


そんな事を言いながら私は前を見た。

そこには整えられた髪の毛の少女が居る。

ボブよりも少し短い感じで.....整った感じで、だ。

私は鏡の私に頷いた。


「焦らず。ゆっくりだね」


「.....そうですね。.....私は.....反省してゆっくり進みます」


それから私は美容室にお金を払ってから。

そのままゆっくりと家に帰る。

すると目の前にお兄ちゃんが立っていた。

私を待っていたかの様に、だ。

ビクッとしながらその姿を見る。


〜〜〜〜〜


許した訳じゃない。

そもそも許せないのだから。

だけど話も聞いてやっても良いんじゃないかって思う。


多少なりとでも、だ。

小馬鹿にしていた理由とか。

そういうのを。


「夢。話がある」


「.....な、何でしょうか.....」


「正直。お前とは話もしたくないが。.....だけど俺も大人なんだ。それなりに話は聞かないといけないかと思ってな」


「.....!」


俺を見ながら驚愕してから涙を浮かべる夢。

そう。

何時迄も捻くれては居られないだろう。

ガキじゃないんだから。

思いながら俺は夢を見つめる。


「.....でも私はそんな資格は無いから。.....今は.....」


「なら良いか、と言いたい所だが。.....あくまでお前は義妹だ。年下だ。だから義務があると思う」


「お兄ちゃん.....」


「何で小馬鹿にしていた。俺を」


「.....私が愚かだったって事です。.....ただそれだけです」


ただそれだけ。

と言いながら俺に対して夢は涙を浮かべて流した。

本当に反省しかなかった、と言いながら。

俺はその姿を見ながら、それだけか。本当に、と聞く。


「.....なんで?」


「お前が小馬鹿にしていたのは.....何かを隠す為じゃないのか」


「.....私は何も隠してないよ。ただ馬鹿だったの」


「そうか」


言いながら上がって行く夢。

その髪の毛はかなりバッサリ切っていた。

俺はその姿をまた確認しながら足を見てみる。

絆創膏だらけの足を。

相変わらずだ。


「苦痛だったよね。お兄ちゃん。私は.....本当に愚かだった」


「.....」


そんな事を言いながらそのまま戻って行く。

俺は家事をまた再開する義妹を見ながら溜息を吐いた。

それから俺はリビングに戻る。

そしてドアを開けた。


〜〜〜〜〜


お兄ちゃんは私の姿に酷く驚いていた。

そんなに切ったつもりはない。

だけど驚いていたから。

相当だったんだろうな、って思う。

私はやっとお兄ちゃんの少しの下の立場になれたかな、と思った。


「.....頑張らなくちゃ」


私はそう考えながら家事を進める。

お兄ちゃんが天使なら。

私は堕天使だ。

それぐらい差がある。

だからいつか天使になれる様に。


私はいつかまたお兄ちゃんの隣に立てる様に頑張りたいと思う。

思いながら私は目の前を見る。

そして拳を握った。

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