第3話 生きる価値

義妹と俺は決別した。

何がきっかけかと言えば義妹が小馬鹿にしてくる事によるものだ。

そして俺の元彼女に浮気された事によるものでもある。

俺は精神がぶっ壊れた。

それで小馬鹿にしてきた義妹と決別したのだ。


「?」


そんな義妹と決別したその夜。

俺は仏壇が置かれている部屋の前を通る。

すると襖の隙間が空いていた。

俺はそこから電気の光を見つつ中を伺うと。


「お姉ちゃん。お兄ちゃんは素晴らしい人だと思います」


その様な感じで語り掛けていた。

姉の赤ん坊の写真に対して。

それから苦笑しながら、私、お姉ちゃんみたいに偉くはなれないみたい、と言い出してから写真を撫でる。


「馬鹿だよね。.....お兄ちゃんを傷付けて。私は傲慢で。.....何も理解してなかった」


義妹はそう言いながら写真を撫で続ける。

そして、私は何を考えているんだろうね、と話した。

お兄ちゃんが兄として好きなのに、とも。

俺はその姿を見ながら溜息を吐く。


「これからはお兄ちゃんに.....また.....笑顔を向けてもらえる様に頑張ります。だから見守っていてね。お姉ちゃん」


言いながら仏壇に手を合わせる義妹。

俺はその姿を再度確認してから。

そのまま階段を登ってから自室に戻る。


そしてまた勉強を始めた。

アイツの姉ってどんな感じだったのだろうな。

そんな事をふと思いながら。


〜〜〜〜〜


お姉ちゃんは優秀だったと思う。

赤ちゃんの頃しか生きてないけど。

でも色々な事が出来ていたらしいから。


だから私は天才だって思っている。

だけどそんな姉は生後3ヶ月で殺害された。

母親に、だ。


「.....」


私は特に母親を恨んだりはしてない。

今は、だ。

だけど昔は本当に虐待が酷く。

私も殺されるかと思った。

だけどお父さんが私を連れて逃げたお陰で死なずに済んだ。


姉が亡くなってから1年後に私は産まれたらしい。

意図しない妊娠だったそうだ。

そもそもその行為をしなければ産まれなかったものを。

何故してしまったのか分からない。

だからお父さんにも非はある。


でも私はこの世に生まれて良かった。

だってそうだ。

お兄ちゃんを愛せたから。

だけどそのお兄ちゃんには嫌われた。


生きている価値はないだろう。

だけど死ぬ根性も無い。

私は.....私自身を見直して生きるしか無いだろう。

思いながら私は数珠を置いた。

それから仏壇を閉める。


「お兄ちゃんに嫌われても。.....私は生きていかないといけない」


そんな事を呟きながら。

そして私は階段の先にあるお兄ちゃんの部屋を見ながら。

そのまま足を引き摺ってからそのまま台所に立った。

今はできる事をするしかない。

思いながら、だ。


「.....お兄ちゃんにお茶を持って行こう」


私はそう考えながら。

そのまま階段を登ってからお兄ちゃんの部屋のドアをノックしてから。

お茶とお茶菓子を置いてから。

そして階段を降りて行った。


私は嫌われて当然の事をしたが。

だから多少の罪滅ぼしになれば、と思う。

なのでこうしている。



ノック音がした。

俺はそのノック音を聞いてからドアを開けると。

そこにお茶菓子とお茶が置かれている。

額に手を添えながら俺はそれを持ってから。

そのまま中に入る。


お茶菓子はひよこだった。

俺はそのひよこを食べながら勉強をする。

テストが近い。

だから頑張らないといけない。

思いながら、だ。


「.....お茶は.....烏龍茶か。俺に気を遣ってんな」


そんな事を呟きながら。

俺は烏龍茶を飲んでからそのまま肩を回す。

それから、よし、と思いながら。

勉強を頑張る意味で向いた。


多少なりとでも何とかなれば、と思うから。

そう考えながら俺は頑張る。

アイツ以外にも養わなければならないだろう。

親は必ず俺達より先に死ぬのだから。

自立の事は鍛えないとダメだ。


俺は長男だから。

だから頑張らないといけない。

小馬鹿とこれは別だ。

俺の方が大人なのだから。


「.....にしても問題が難しいな」


そんな事を呟きながら居ると。

コップの下に手紙が挟まっているのに気が付いた。

それを取って開くと。

紙にこう書かれている。


有難う御座いました。


と。

その一文だけ。

俺は盛大に溜息を吐きながらその紙を机にほっぽり投げてから。

そのまま天井を向いて溜息をまた吐く。


どうしてアイツは俺を小馬鹿にしてきたんだ。

思いながら.....一瞬だけ考えてみるが。

答えは出ない。


「意味が分からないもんだな。まあ考えても仕方が無いけど」


これは情けじゃない。

そもそも.....アイツが悪いから情けもクソもない。

が。

気になる事は気になるものだ。

それが人間なんだろう。


「クソッタレが」


俺は思いながらそのまままた机に向く。

それから勉強をまた再開した。

だけどそれはそうでもアイツなんか気に掛けている場合か。

そう思いながら。

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