第2話 痛み
信じられなくなった。
どうしたものか、と思いながら俺はそのまま窓から外を見る。
義妹が思いっきり駆け出して行く姿が見えた。
だけど俺はその姿をただ睨むだけで。
特に何も感情が湧かない。
「.....心が真面目にバキバキだな。何時以来なのか知らないけど。.....マジにいつ以来だ?」
俺は思いながら目の前を見てみる。
そこには3年前の俺と義妹が出会った頃の写真が置かれている。
本当に出会った当初の写真だ。
これを撮ったのはこの家の玄関だが。
「ふざけている」
そんな悪態を吐きながら居ると直後に雨が降ってきた。
それからそれは簡単に土砂降りになる。
俺はその光景を見ながら、ふむ、と思う。
そうしているとゆっくりと玄関がギギギとでも音を立てて開く様な音がした。
どうやら雨で義妹は引き返した様だが.....ああまあもう義妹じゃない。
「忌々しいな。勉強でもするか」
俺は考えながらその勢いでイヤホンを着けてそのまま勉強を始める。
すると下の洗面所で物音がし始めた。
どうやら風呂にでも入る様だが。
まあどうでも良いか。
〜〜〜〜〜
本当に全てが誤算だった。
何が誤算かといえばアスファルトで躓いて雨で滑り思いっきり転び傷を負ってしまい。
かなり深い気がする。
切り傷が痛くて血が止まらない。
痛みで目の前が歪む。
こんな痛みと全ての心の叫びは母親から虐待されて以来かと思う。
だけどこんな時にでも側に居てくれたお兄ちゃんは居ない。
私が全ては悪い。
絶望の中で血で染まったスカートと血だらけの靴下を脱ぐ。
「.....足.....全体かな.....」
酷く転んだ。
消毒は軽くはしたけど。
でもこんな痛みすらもお兄ちゃんには及ばないだろう。
私はどうするべきなのだろうか。
この先から。
「.....お兄ちゃん.....」
私は涙を拭ってから上着を脱いでからそのまま下着を外してヨロヨロと洗面所に入る。
それから泥だらけになった身体をそのまま洗うが激痛走る。
ちゃんと絆創膏を貼ったのに。
効いてない。
「.....」
痛い。
本当に痛すぎる。
でも私がした事による天罰だと思えば。
全くと言っていいほどに何でもない感じだ。
逆にこれで良かったと思える。
罰なのだから。
☆
私は風呂からゆっくり上がってから。
そのまま傷口に絆創膏を貼る。
大きなものを直接5枚ぐらい貼った。
その痛みで思いっきり目が覚める。
そして絶望が襲ってくる。
涙が溢れた。
「私は一体何をしているんだろう。」
思いながら私は足を引き摺りながらゆっくりと家事をする。
お兄ちゃんには完全に嫌われた。
だからもうどうしようもない。
だからこそ。
本当に反省するしかない.....。
結局だが私は死神なのだろう。
全てを奪ってしまう死神なのだろう。
絶望だ。
お姉ちゃんも私が殺したと言われ続けていたからきっと私は死神だ。
お兄ちゃんにも全て嫌われた。
あまりにショックすぎて死にたい。
でも今は死ねない、私が死ぬ訳にはいかない。
お母さんが殺した大切なお姉ちゃんの分まで生きるって決めたから。
この先も生きる事を、だ。
「.....ただ前を向こうかな」
私はそう決意しながら家事を進める。
それからあっという間に2時間が経過した。
足の痛みは全く取れない。
さっきも確認したが傷口が深いのだろうやはりであるが。
〜〜〜〜〜
足元に血がポツポツと落ちていた。
拭き損ねた様なものがある。
何だこれは、と思いながらリビングにそのまま入る。
するとそこには泣き腫らした様な顔をした痛みでだろうか眉を寄せた義妹が居た。
傷だらけの足を引きずっている。
いやちょっと待て。
何だこれは.....何が起こっている。
「.....」
「えっと。お兄ちゃん。その.....ご飯はどうしますか.....」
「作ったんだろ。明日からは迷惑が掛からない様に俺が作るから。もう何もするな」
「はい.....」
一気にその言葉に涙目になる義妹。
それはそうと。どうしたんだその足は、と俺は聞くと。
義妹は口を噤んだ。
そして黙ってしまう。
それから数秒してからこれはアスファルトに思いっきり転けました、と答える義妹。
俺は!と思いながら義妹を見る。
アスファルト?にしては派手な傷だが。
義妹は首を振って、全然痛くないです、と笑顔で答えた。
「貴方に比べたら。.....私がやってきた事を思えば痛くないです」
「そうか」
「私が適当にします。だから大丈夫です」
「そうだな。まあお前と馴れ合うつもりは無いけど。.....その傷だけは治療してやるから足出せ」
俺は言いながら救急箱を取り出す。
それから、早くしろ、と言う。
この何というか傷の感染で死んでもらっては困るので。
思いながら驚いていた義妹のか細い足に消毒液を掛けてから。
痛みに耐える義妹を見つつ治療する。
「その.....有難うございます.....」
「死ぬ事だけはするな。面倒だから。死ぬと面倒い」
「そうですね。うん。.....死んだ人の気持ちが分かりますので。.....はい」
「それはお前の母親と姉の事か」
「.....はい」
言いながら義妹はヨロヨロと立ち上がる。
それから俺にゆっくり頭を下げてきた。
有難う御座いました、と言いながら。
俺は後ろ姿のその姿を見ながら息を吐いた。
どんな転けかたすりゃあんなボロボロになるんだか、と消毒液のケースを救急箱にうざったくぶち込んで思いながら、であるが。
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