03.ワッハッハ!作るぞ日本の城を

 魔物が徘徊する森に、親によって捨てられた少年少女4人を救助し、築いたばかりの御殿に招き、温泉で体を洗った。緊張していた一同も、落ち着きつつあった。


 綺麗に洗ったミッシを風呂から上げ、奥書院の竈に移動する。

 異空間倉庫から紙おむつと湯浴み着、冬用のお包みを出してミッシに着せ、防寒対策。

 なんかグズりだしそう。

 ここで幼児から目を離す訳にいかないので、時間停止&空間移動でさっき倒した角狼達を回収、血抜き解体、毛皮を剥がし鞣し、肉の一部は塩漬けしたり燻製したりして保存。

 竈に火を入れ、少量をスープ用に取り出し鍋で野菜と一緒に炒めた後煮る。同じく異空間倉庫から小麦と酵母を取り出し発酵させ、膨らんだところでパン・ピザ用に設えた高温窯で焼く。

 みんな空腹が長かったので、収縮した消化器に負担を掛けない様、普通の食事の半分くらいで用意し、元の時間に戻る。

 ミッシがグスって「ふやあ、ふやあ」と泣き出した。1歳にしては力が無い泣き方だ。これからおいしい物いっぱい食べて、元気に大きくなろうな。


 浴衣に着替えた一同が、食事の匂いに気付いてダッシュして来たヤミーを先頭にやってきた。

 さあ、夕ご飯にしよう。もう陽も落ちて暗くなった。柱に付けた魔石に触り、灯りを点す。


「みんな長い間お腹を空かせているので、一度にいっぱい食べたらお腹が破れて死にます。少しづつ食べて、お腹が広がったら、普通に食べましょう」と、パン、スープ、デザートに摺り下したリンゴを出す。

「うわー!ごちそー!」目がビームを発射してるよヤミー。

「スゲー」語彙を磨こうなダン。

「こんなごちそう、お祭りみたい…」泣かないでくれステラ。

「それでは、頂きま・・」

「「「天に在します創造の神よ、我らを祝し、御恵みによりて…」」」

 農民であっても、祈祷は正しく教育されているのか。

 そんな教育より子捨てを罰する教育しろよ、と言いたくなるが、それはこの社会に属さない外野の者の声に過ぎないな。

 私も黙って、私の信仰する神に「この子達が幸福な人生を満喫できます様に」と祈った。

 ただ、その時、何か違和感を感じた。


 ヤミーの「ウマー!フワー!ウマー!アマー!」の絶叫を満喫し、一同の「もっと食べたい!」の声を遮り、

「今日はこれまで。寝る前に歯を磨くぞー!」と再びダンを実験台に、歯磨きを教えた。みんな乳歯に虫歯があったので、丁寧に磨き、ついでに虫歯部分を削っておいた。永久歯に生え変わる頃には歯磨きの習慣もしっかり付かせねば。

 最初は「にがー!にがにがー!」と嫌がってたヤミーも、うがいを終えたら「すはー!すはー!きもちいー!」と喜んでいた。

 私もミッシに幼児用歯ブラシで弱く歯磨きをした。「あやあや、あややや」と妙な反応をするミッシ、かわいい。

「「かわいい~」」とその様子をのぞき込むステラとヤミー。


 そして寝室。

「ふかふかー!ふかふかー!」ご満悦だな。

「すげー」またそれか。

「とってもやわらかいわ!」そうでしょう?

「じゃあ、みんな疲れただろう、お休みしよう」

 すると三人はこの世界の創造神への祈祷を唱えた。私の心の中で祈った。

祈りが終わると、みんな布団にもぐり、

「ふわふわー」「あったけー」「気持ちい・・」「くかー」「すぴー」

 忽ち寝入ってしまった。さっきまで生きるか死ぬかの狭間にいたのだ。疲れも酷かったろう。更には温泉効果だ。

 ミッシも腕の中で寝ている。私は下の間の灯りを消し、ミッシを抱いたまま書斎にする上の間に移った。


 薄明りの中で城の全体像を考える。明日からは魔物の侵入に備えて、せめて本丸と二之丸は堀で囲もう。

 現在我が城は、丘を削って平面を切り出し、大まかな塁線を削りだした本丸と二之丸、その本丸に奥書院と湯殿があるだけだ。

 幸い魔物は、森の真ん中やや東寄りに現れた裸の丘に駆け上ろうとは思っていないが、いずれ登って来るだろう。

 それに子供達も増える。捨て子は4人では済まない。冬も深くなれば、食料が不足した南の村から捨て子が続々と捨てられるだろう。御殿も食堂も拡充しなければ。

 本丸御殿の拡充と内郭となる本丸・二之丸の堀、石垣、そして水利を兼ねた水堀への湛水。

 将来的構想としては本丸御殿は、色々面倒ごとを運んで来る来客を圧倒するための迎賓館とし、子供達の住まいには倍の面積を持つ二之丸御殿を構える予定だ。

 だが先ずは防御の利がある本丸御殿だ。等と考えつつ、うつらうつらと休む事にした。


 そして夜中。

 「おきゃ、おきゃ、」それからが、久しぶりに大変だった。「ぽきゃあー」ミッシの夜泣きが始まった。力の入っていない小さな鳴き声だった。みんなが寝る下の間と少々離れているので、三人が目を覚ます事は無いだろう、かな?

 抱いて揺らすが、中々泣き止まない。そうだよね。ママに甘えたいんだよね。


「ミッシちゃん、ミッシちゃん、ぷ~よぷ~よ可愛い天使ちゃん。お空のお星が寝顔を見てる、ねんねんね~」

 と、なんだか即興で子守歌を歌い出し始めてしまった。それからは知っている子守歌を小声で歌いながら、廊下や土間、湯殿まで散歩しつつあやした。やがて、ミッシはすやすや寝入った。天使の寝顔だ。

 だが一、二時間程もすると、「おきゃ、おきゃ」と泣き出す。

 またお散歩。そして「おきゃ、おきゃ」。一歳とは思えない、まるで2~3ケ月の乳児だ。精神的に退行しているのか。鳴き声に力が入っていないのか。


 しかしあれだ、この夜泣き相手を一人でやったらホント苦痛だわ。天使の寝顔が悪魔に見えるだろう。まあ私は時間を操れるので小一時間の間に充分数時間寝られるので全然苦ではないが、

 昔残業続きで深夜に帰宅した時、まだ起きていた妻がやつれ果てた顔で娘を抱きかかえていたのを見て驚愕した事があった。

 あの時の申し訳なさは何千年経っても忘れられない。今目の前のこの子に一生懸命世話しても何のお返しにもならないんだけどね。せめて後悔を繰り返す事だけはしたくない。


 他の三人はどうだろう?空間魔法で探る。

 ヤミーとダンは深く寝ている。ステラは…いない。

 湯殿にいる。湯殿で裸でいる。鏡をじっとみている。女神の様な美少女だ。しかし、さっきまで醜く爛れていた脇や股間の斑点が彼女にとって呪いの紋章だったのだが。今や完全に消え、綺麗になっていた。

 更に体内を覗いても、う~ん根深い螺旋の害毒が完全に消え失せた様に見えはしたが、安心すべきじゃない。数日後、数か月後に病根の有無を探ろう。いかん、これじゃ出歯亀だ。意識を逸らそう。と思ったら、ステラが泣き崩れた。

「うっ、うっ、ありがとう。ありがとう!」

 謝意は本人に直接言うもので、遠い場所から何度も話しかけても通じ合わないよと思った。


*******


 この夜はミッシ一人のための子守歌リサイタルを何回か繰り返した後に明けた。

 が、朝日が昇った後。下の間から2人の鳴き声が聞こえた。

「おかあちゃん、おかあちゃん~」「ああー、とうちゃん!とうちゃんー!」

 7歳になったダンとヤミーだが、見知らぬ家で目が覚めて、「親に捨てられた」という事実を改めて感じたのだろうか。ステラが二人を抱きしめて、必死に慰めていた。


 赤の他人の私がそこに行っても出来る事はない。ミッシを背負い、ひたすら食事を準備する事にした。ミッシを抱っこ紐でゆっくり抱え、台所へ行き、パンの替りに細切れ肉、野菜、卵、そして麦を茹でたスタミナ粥を作る。食後にはミカンや桃の細かい果肉を果汁に浸した、ビタミンと糖分の多いお菓子も出そう。


「おかあちゃん!おかあ~~、あ、ごはんだー!」

 おいしそうなニオイに気付いたのか、一番の食いしん坊が下の間から台所へダッシュ。切り替えが鮮やかだ。ダンとステラが唖然とヤミーダッシュを見送っていた。

 土間の隣、下の間のテーブルに少しの食事を並べると、2人のお腹の虫が鳴く。遅れて3匹目の虫も鳴いた。ステラがこっちに降りて来た。

「頂きます!」と食事を始めようとすると「天に在します」と祈祷を始めた、あ、そうだった。


「いただきまーす!」と元気に言うチビッ子に「あ!ゆっくり食べなさい!ゆっくりだぞ!」と注意した。

 子供達に匙を配ると、「手で食べないの?」「道具を使うのはいけない事じゃないの?」

 そう、この世界では神の恵みである食事は手掴みで食べ、道具を使うのは野蛮と考えられていた。

「逆だ。手掴みだと手に着いた汚れがお腹に入って病気になる。それに、暖かい内に食べるのがいいんだ。手で掴んだら火傷するぞ?」

「おなかぺこぺこー」と言いつつ匙で掬い、スタミナ粥を食べつくすヤミー。

 ミッシには昨日と同じRUTFを少しづつ食べさせた。1、2週間もすればみんなと同じごちそうを食べられるだろう。


「次のご飯は鐘一つ後だぞ?」「えぇ~?いやー(涙)!!」

「じゃあ粥を食べ終わったら、甘い汁に果物を細かくしたのを入れたお菓子をあげよう」「お菓子?やったー!」

 ヤミーは見ていて飽きないなあ。因みに、鐘一つは約2時間。時間を知らせる鐘を作らなければ。


******


 朝の歯磨きを終えた後に。

「畑を造るって言ってももう冬よ?私達何をしたらいいの?」

「寒さが過ぎるまではここでのんびり、字を学んだり数を数えたりしよう。色々なお話も教えよう」

「お話?ドラゴン退治や戦争の話?すげー!」「えーつまんないー、お城でごちそう食べる話がいいー」

 二人ともブレないなあ。


「まあ、先ずは魔物が近寄らない様に、城を築くぞ」

「お城?!」「お城?!」チビッ子二人が目を輝かせる。多分全く別の事を考えてるだろうな。

「お城・・?」

「ああ。まあ、見てみるか?」


*******


 三人で馬に乗って工事現場へお出かけだ。先ずは雑に切り崩した本丸、二之丸の塁線を整えよう。そして堀、石垣、門に櫓に壁を築こう。

 今すぐ作るぞ日本の城を!ワッハッハ!


 昨晩考えた構想で、この城、いやこの地は、最大で2万人、最低1万人の人口を抱える事になる。なにせ初日で4人増えた。過去を覗いて見たところ、この地に捨てられ魔物の餌食となって死んだ子供は年間50人。酷い話だ。しかし過去の出来事に文句を言っても仕方ない。

 計画値の最低と最大の差が倍に開いているのは、将来この地で結婚し生まれた子供達がどこまで外の地へ旅立つか、それが不確定だからだ。勿論未来の事は解る。しかし、完全じゃない。今見える未来が分岐し、未来の運命を変える事だってある。


 築城は、平面プランを考える「縄張り」と、それを実現させ、土木工事を行う「普請」から始まる。黒田官兵衛とか、加藤清正とか、藤堂高虎が名手と呼ばれたのがこの平面プランや石垣造りに優れていたからだ。


 昨晩考えた城の平面プランは、本丸を中心に二之丸が、二之丸を三之丸が、さらにその外側に惣構が囲う「輪郭式縄張」とした。中心がやや北側にずれた形で、三之丸以外は何となく天正期の、豊臣家時代の大坂城に近い感じだ。

 このカルデラ、この大陸ではイニロトナス山とか魔の山と呼ばれる山の内側、城の東を川、同じくノキブル川と呼ばれる川が流れている。

 この流れを西側にも分岐させ、下流で合流させ惣堀とするがそれは後にしよう。


 二之丸を囲む中堀と壁面を空間魔法で掘って固め、斜面は石垣で守る。外輪山の巨大な花崗岩を空間魔法で切り取り移動し、二之丸外側に持ってきて切り出して積み上げた。

 布積みという、江戸初期、近世城郭の完成系の積み方だ。某荒地開拓ゲームみたいにズビズビ石が積み上がる。石は表面がある程度整えられた長方形で奥に長く、最奥部が方錐状にすぼんでいる。石積みと土の間は裏込め石という細かく砕いた石を詰め、水捌けを確保する。水捌けが無いと内部の土が孕み出して石垣が内側から崩壊する危険性がある。それが数百年、地震に耐えながらほとんどなかった日本の城は非常に優秀だ。


 二之丸の塁線は直線ではなく、至る所で鈎の手に屈曲している。直線状の防塁だと攻撃側と防衛側が1対1となるが、鉤の手の出っ張りがあると、攻撃側は出っ張った部分から側面攻撃も受ける事になる。

 この「横矢掛」という屈曲のため、日本の城は複雑で変化に富んだ塁線の美を作り出している。塁線の隅、突出した部分は石垣を他より1段高く積み上げ、隅櫓を置く櫓台とした。


 二之丸、禿山だった丘の中腹が、花崗岩の輝きで固められた。その高さ堀の底から11間(20mくらい)。

 僅かな時間で積み上がった巨石の壁を前に、「何よこれ…」「いしのかべなんかおいしそー」「すげー」「きれー」「すげー」「あぷー」と驚愕するステラと笑顔で見上げるチビ二人。ダンの語彙力を鍛えねば。そして何故美味しそうなんだよヤミー。

「一体、何が起きてるの?あの石一つで大人なんかより大きいじゃない?」と恐れるステラ。

「次はもっと凄いぞー!」と二人に言うと、「どーなるの~?」と期待に満ちた顔で聞いてくる。ちょっと嬉しい。

「門と櫓、壁を築くぞ!」「わーい!」「まだ何か出て来るの?!」

 その前に間食しよう。奥書院に戻ってまた少しづつ食事を摂り、現場へ戻る。お昼は外で食べようか?


*******


 これから先は、魔の森を素材とした木材や、土を使った壁、そして粘土を焼いた瓦を使った建物を建てる。空間操作魔法の産物だ。

 奥書院や湯殿を建てたのもそうだが、堀と石垣の「普請」に続いて、上物の建設を建てる「作事」に進む。

 徳川政権下で駿府城の一階・二階を御殿風にした天守や、江戸城の建築、とりわけ二之丸御殿の一部を内堀の上に張り出して釣り殿にした小堀遠州政一や、巨大天守を長大な心柱を遣わずに完成させた中井大和守正清の仕事が作事だ。

 そういや「安土城建てたのだれ?」「織田信長!」「ぶー、大工さんでしたー!」みたいなやり取りに出て来る大工さんとは、織田信長が尾張熱田神社の宮大工だったのをスカウトした岡部又右衛門だった。


 まずは城門。

 二之丸への出入りは南西と北の二か所。南西側は門の外に「馬出」という、掘で囲まれた小さい一区画を置き、その左右に桝形門を置いた。

 大坂冬の陣で有名な真田丸は、大坂城南端の門の前に置かれた馬出で、敵の攻撃を分散させ、守る側は左右から機に応じて攻め、攻城側が弱まったら両側がら挟撃できる、攻めるに難く守るに易い、ここから先の二之丸、本丸を守り切るための構えだ。

 二之丸南西側を馬出門、北側を将来給水路とするため水の手門と呼ぼう。

 馬出の東西にも門馬出東門、馬出西門を構えた。


 桝形門というのは、四角い桝の様に石垣で囲まれた区画で、城の外側に高麗門(二本の柱の裏側に一段低い控え柱を設けで門柱を支え、二本の門柱の間と、門柱と控え柱の間に梁を通し、その上を屋根で覆った門)を置く。

 桝状の門内を右に90度曲がると、道の両脇を石垣で固め、その上に長屋、堂々とした渡り櫓を置き、その下に頑丈な門扉を構える。高麗門を除く他の二辺も石垣と壁で囲まれ、壁の下端には外から見えにくい様に狭間(矢や鉄砲を撃つため、壁に開けて外を狙える穴)が開けられている。

 高麗門を破って侵入した敵は、渡り櫓と二辺の壁から矢を受ける。

 この桝形はキルゾーンになる。なお右に曲がるのは多くの人が右利きで武器を持ち、左側がガラ空きになるからだ。

 空間複写魔法で忽然と現れた城門に、「しろくておいしそー」「すげー」と歓声を上げる。


 塁線の角の櫓台の上に、空間複写魔法で櫓を立てた。櫓台は水平を保つ礎石を置き、全て均一な構造とした。

 二之丸の櫓は全て二層櫓、庇は千鳥破風(三角の飾り屋根)や比翼破風(千鳥破風を小さくし左右に並べたもの)、軒唐破風(庇の端が唐破風になっているもの)、据唐破風(唐破風が庇の端ではなく、二階の壁に付いたもの)等のバリエーションでズラーっと並べた。

 この櫓が防衛上の重要な拠点となる。この魔の森での主敵は魔物、角狼や巨大熊、更にはより巨大な魔物だ。

 コイツらを撃退するための強力な兵器を射出するため、この装飾用破風が俯射装置となっている。

 その強力兵器とは…後で考えよう。

 火薬は使いたくない、この世界に大量破壊兵器を、歴史を前倒しさせる様に作りたくはない。


 櫓の中を建物探訪。一階は櫓に詰める当番のために住居とした。窓は小さく土壁のため風通しはやや悪いが、上下水道、風呂トイレ付。

城内側の窓は大きく取ってある。

二層櫓の規模は5間×6間。皇居伏見櫓と同規模だ。櫓の間は、白壁で繋いだ。


 二之丸には東側に御殿、それも子供達が住む奥向きの空間を広く取った御殿を築く予定だ。南側は将来城内の農業、生産、防衛、教育、医療等を統括する人材のための拠点と屋敷を、西側には病院や学校を置こう。将来的には薬草園や試験農園にする予定の南西側を、当面は畑にして、そこで麦や野菜、果実を育てる事とし、一気に耕す。木材にした樹木の葉や枝を粉砕し時間を早送りして肥しとした。みんなが元気になったら、畑仕事を始めよう。


 二之丸馬出の外側、三之丸に移動して、昼のお弁当に作った狼肉の塩焼きをパンにはさんだ軽食を食べながら、二之丸の塁線を見渡す。

 白く輝く壁と、黒鉄色に輝く甍が立ち並んだ壮観に、チビっ子は「やぐら、きれー!」と大喜びで塁線に沿って走り出した。反応があると何か遣り甲斐が出るな。

「何か思ってた城と違うわー。しかも一日で出来るって、どういう力なのかもう…」

 チビっ子の有難い感動とステラの何か突っ込みめいた感想との差が寂しいものがあるなあ。

「ごはんの後のくだものないの~?」「俺もほしい!」「あ、あたしも」うん、観光よりおやつだよね。ちょっとガックリ来た。


 この日も、あちこち移動した所為か、興奮した所為か、温泉入って食事して割と早く寝た。

「すげーなー!」「おしろきれーだったねー」「そうね…」

 子供達の会話が落ちた。さあ、明日は本丸だ。


 その時、森の南端で、再び悲鳴が聞こえた。

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