第7話

「今週の仕事は散々だった」

 駅前の居酒屋で川口が下を向いてぽつりと言うと、

「でも山下さんほどではないっすよ」

 早田がすごく暗い顔をして俺の方を見てくるので、不安になり

「早田さん、いつもの事なのでそんな顔しないでくれ、不安になるじゃないか」

 その言葉に川口は上体を起こし驚いた表情で俺を見て

「山下さん、今週何があったか覚えてないんですか」

 突然の川口の反応に身じろぐと

「だって、今週の山下さんは……。」

 青ざめた顔をして言う早田に恐怖を感じ自分の体を見ると


自分だけ裸だった、しかも陰茎がない


 衝撃の事実に、慌てて手で触って確かめるが感触が無い、ここは居酒屋で人もたくさん入っていることを思い出した俺はふと我に返って見渡そうとすると……。


 真っ暗で何も見えない。どうやら夢を見ていたようだ、上体を起こして周りを見てもかすかに何か見えるようだが暗すぎて何もわからない、だが手の平から伝わってくる乾いた砂の感触が俺を不安にさせる。


 鼓動が早くなる、手のひらから伝わってくる砂の感触に海辺での記憶がフラッシュバックする。何もない砂浜どこまでも続く海岸線そして【昆布】。一瞬寒気がするほどの恐怖を覚え股間に手をやると。


無い


 喰い千切られたわけでも切られたわけでもない、つるつるで女性器の様なものがあるわけでもなく毛もない。飛び起きて尻の穴も確認するが無い、暗闇の中で一人の男の慟哭が響く。

「なんじゃこりゃー」

 周りを見回しても何かがうっすらと見え部屋の中にいる事しか解らない、膝をついて手でまさぐっても布きれが一枚と乾いた砂をかくだけだった。


 これは、悪い夢だ寝て起きればすべて嘘だと思ってもなかなか眠れない、目も慣れてきたがここが何の建物で何の部屋なのか見当もつかないまま時間は過ぎていった。


 

 


 

 

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