第5話 ここはどこですか?

 真正面に広がる青い空、体をまめ回すような水の感触、磯の香りがする風、妙な夢だが、気持ち良いのでこのままでいよう、これなら夢から覚めた時すっきりしそうでいい……。


 あれ、おかしい夢から覚めたはずなのに、空は青いし浜で寝ているようだ、いや寝ている。上体を起こして周りを見ると九十九里浜と思えるほど延々と続く砂浜に遠くには島が見える、千葉にあんな大きな島はないしここは新潟か、


 体を見ると間違いなく俺の体で、全裸どうやら今賢者タイムに突入しているらしいので、賢者考察をする事にした。


 まず、俺の名前は山下洋(ヒロシ)、二十一歳独身男高校卒業に合わせて親が離婚し進学ではなく就職、入社四年目上司がクソで退職を決意して山の中のラブホテルに泊まって、気づいたらこうなってると。


 考えてもそこから先何も出てこないので、賢者タイムの痕を埋めて体を海水で洗いつつふと思う、これはもしかして所謂異世界転移とかゲームの中に入り込んだとかではないだろうか、と思っていろいろ試してみたが何もなかった。


 日本の様な気もするけどそうで無い様な気もする、実はやばいホテルで身ぐるみ剥されて捨てられた可能性も捨てきれない。身ぐるみは剥されたというか寝る時全裸だったので自分ではいだのではあるが……。


 仮にここが新潟県だろうと千葉県であろうとこの砂浜沿いに歩いていけば港町にたどり着けるはず、気になるのはどこまでも続く砂浜と草原、人工物が何一つないというのは現代社会ではあり得ない。


 そして、おなかから緊急事態を告げる音が鳴る、昨日の昼から何も食べていない日の位置から今はおそらく昼。


 裸足で草原は歩きたくないので、海に対して左、比較的安全そうな波打ち際を歩いて進む事にした。

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