第1話 山の中に捨てられた

「もうこんな会社辞めよう……」

夜の山中の国道で男がつぶやきつつ、今日の事を思いだす


今日から出張ということで机にある書類を整理していた時

「山ちたくぅ~ん、今週は僕の班でN県行くからN県」

そう言って話しかけてきたのは山神課長だ、活舌と言うよりは発音が少し変わった人だ。

「は、はい……」

正直この人はあまり好きではない、この会社に勤めて四年目であるが部下に対する扱い特に俺に対して酷いのである。

「山ちたくぅ~んそんなんじゃ今日もまただめだよ~。あ、川口君ちょっといいかい?」

 出社してきた川口君のところへ山神課長が行くとほっと胸をなでおろし仕事の準備に入た、この時からいつもの事だけど嫌な予感してたんだよな……。


 俺の仕事は、一般家庭に訪問して教材を売る訪問販売。今回は山下、川口、早田の三人で訪問を行い、課長の山神が契約するのだが……。

 今日は川口がアポ取れたと言う事で課長が契約に向かったのはいいが、時間がかかるかもしれないから歩いて帰れと言われたのである。


 帰れと言われても、俺の担当区は山の中で国道が近いと言えど駅は遠く、この時間はバスも走っていない川口は団地、早田は宿泊地近くの学校回りの配置から見ても最初からこのつもりだったのだろうと思う。


本音を言うと、会社は悪くないのだが上司がひどい、さらに言うと山神課長がひどい、とブツブツつぶやきながら歩いているとバスが走りすぎる。

 バス、あるじゃん

 心の中で叫ぶと走って追いかけていた。



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