なんか違うの出た。


「よう?弱虫野郎。」

「お前は…。」

「どうする?」

「あ?何が?」

 前に立っていたミミが勝ち誇った様子でこちらを見てくる。

 その隣には拳を鳴らしながら、ハゲ冒険者が立っていた。コイツの顔も見下したように見てくる。


「今すぐ土下座して、それから私たちをギルドに戻すように言ってくれたら、痛めつけるのはやめてあげる。」

「おいおい、勝手に決めんなよ。俺はコイツのこと殴りたくてしょうがねぇぜ…!」

「あら、そう?なら半殺しで勘弁してよね?殺しちゃったら、ギルドに戻れないじゃない。」

「分かってるよ。…おい、どうするよ?ふっ、まぁ答えは分かってるけどなぁ?お前みたいな弱虫の勇者もどきにゃぁ、俺様みたいな強者にへりくだってる姿がお似合いだぜぇ…!?」

 そう凄んで俺にハゲが言ってくる。

 というか、コイツ今…。


「今、勇者もどき…つったか?」

「あぁ?当たりめぇだろ。黒髪黒目にするのはいいが、テメェはあの勇者様にはなれっこねぇぞ。」

「…そうか。」

「ダンテの奴もバカなことをしたもんだ。こんな奴を冒険者にするより、俺のランクを上げる方がギルドの為になんのによぉッ!!ほら、早く土下座しろよ!!俺が優しく半殺しにしてやっからぁッッ!!!」


「[広告ガチャ]発動。」

    これから広告が流れます。

      30秒後にスキップできます。



 ウァッ!ウァッ!ヘールプ!

    彼にコインをあげよう!!



「ん?なんかいつもと違うのが出た。」

「あぁ?んだ、これ…?」

「きゃあっ!なに!?」



 いつもの広告とは違い、空中に映っているのはピンが刺さった檻に囲まれた男性。

 その上にはマグマとコインがあり、二つともピンに堰き止められていた。

 すると、指が現れてそのピンを抜いていくが、

 前の広告と同じようにわざととしか思えない失敗をして、その男性にマグマが降り注いだ!


 グァァァァ‼︎ヘールプ!ヘールプ!!!

 男性は、グジュグジュに溶けていった。



「……グロッ!!」

「テメェ!何しやがった!!」

「何!これ!!」

「え?」

 ハゲと元受付嬢の慌てた声がしたため、そちらを向くと広告と同じように二人が檻に閉じ込められていた。


「え、てことは…。マグマ?いや、流石にそれはやばくない?」

「おい、テメェ!何ブツブツ言ってやがる!」

「そうよ!こっから出しなさい!今なら許してあげるわ!!」

 二人はそう喚いていたが、檻に次々とピンが刺さっていく。

 そして、その上にはさっきハゲが隠れていた木箱が置かれた。


「あぁ、そういう。なら大丈夫か。×ボタン押して…っと。よし、始めるか。」

 そう言って俺はピンを操作していく。

 上から降ってくるのは木箱しかないので、全て外せば確実に当たりだ。


「おい!おい…!何してッ…!」

「やだ!やだ!出して!お願い!!」

 二人とも、あの広告とピンを操作しているのを見て、漸く俺が何をしようとしているのか察したのか、凄く騒ぎ出した。

 受付嬢の目には涙が浮かんでいる。


「えっと。こうの、こうの…。こうかな?」


「やだぁ!!やだ、お願い!もう、ギルドにも戻らなくていいから!助けて!」

「ちょっ、おい!お前!…あの!俺も助けて、助けてください!!」

「五月蝿いわね!元はと言えばアンタが誘って来たんでしょ!!アイツに復讐しようって!」

「テメェも乗ってきただろうが!俺一人のせいじゃねぇよ!あの、本当に!ヤダ!ヤダ!!」

 二人は醜い争いをしている間に、俺はピンが後一本というところまできた。


「多分、これを抜かないと終わらないんじゃないかな?俺にこれを途中で止める方法はわかんないわ。……それじゃ、いきまーす。」


「ちょ!まっ…!」

「キャァッ…!!」


 俺が最後のピンを抜くと、二人の上に木箱が降り注ぐ。それは二人の頭にぶつかると、ガシャッと大きな音を立てて砕け散る。

 幸い中身が入っていない空箱だったようで、気絶だけで済んだようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る