やっと冒険者になれた。


 あの後代わりの受付が来たのだが、ガンテさんが「俺がやる」と言ったため、俺たちは二階の個室へとやってきた。

 ソファに対面で座ると、ガンテさんが頭を下げてくる。


「いや、すまない!俺の教育不足だ!常日頃から市民には手を出すなと教えているのだが…。やはり依頼を受けて"やってる"と勘違いしたバカは現れるんだ。主にその依頼を受けて、生計を立てている冒険者が殆どなんだがな!!」

「いえ、その俺も少しイラっときて言い返してしまったんで…。」

 流石にイラついて、俺より強い冒険者に言い返すのはマズかった。

 後先考えない行動はやめるようにしないと。


「いや、少年の言っていたことは正しかったぞ?私も気持ちは分かる。」

「え?ミールさん、見てたの?」

「いや、スキルの力でな。[千里眼]と言って、スキルに登録した者をいつでも視れるんだ。」

「やっばぁ…。反則じゃんか。」

「いや、まぁ制限もある。登録できるのは4人までだからな。」

「それでも反則じゃねぇかよ、お前のスキルは!それに魔法も剣も得意だろ?やっぱテイルの護衛より俺んとこ来いよ!」

「俺んとこ…?」

「何度も言っているが、私はテイル様の護衛。区兵にはならない。それに貴様のところは野蛮な奴ばかりだから、嫌なんだ。」

 なんか二人が揉め出した。

 俺の冒険者登録の話はまだしないのだろうか?


 そう考えていると、隣にいるテイルが話しかけてきた。

「ガンテは区長なんだ。」

「ん?」

「王都は広いだろ?だから、区ごとに別れていて、それぞれに長がいる。そのうちの一人がガンテなんだ。そして、その部下である区兵にミールは前から誘われていたんだ。」

「あー、そういう…。」

 そう話していると、やっと話し合いが終わってガンテさんが俺に向き直った。


「今日もダメだったか…!…すまない、待たせたな。」

「あ、いえ。」

「改めて、俺はガンテ。西区の区長にしてこのギルド〔夜明け〕のギルドマスターをしている!よろしくな!」

「あ、ユウヒです。宜しくお願いします。」

 ガンテさんの手を取る。

 この人の握る力が強くて、段々と握手の手が痛くなってきた。


「あの…。」

「ん?あぁ…、あれだな!なんかユウヒは弱っちぃな!ちゃんと飯食ってんのか!!」

「あ、はい。食べてます。」

「ふーん、まずはその敬語やめてくんねぇか?むず痒いったら、ありゃしねぇぜ!」

「え、うん。あの…登録は?」

 中々話が進まないため、俺が登録のことを言うとガンテさんは思い出したように手を叩いた。


「あぁ、そうだ!そうだ!忘れてた、登録に来たんだったよな!よし、いいぞ!ユウヒはF級からのスタート!!」

「え?」

「じゃあ、下に行って受付から説明聞いてきてくれるか!」

「あ、は…はい。え、いいんですか!?冒険者になって!そのこんな適当な感じ…。」

「ん?いいぞ、別に。それに適当に決めてはないぞ?まぁ見る目はある方だからな、俺は。お前は冒険者になれる。それは保証してやるよ。まぁ、どう活動するかは本人次第だがな。強くなるのも、途中で諦めるのも。」

「…。」

「何で冒険者になりたいのかは知らんが、見た感じ何か目的があるんだろ?なら頑張れよ。」

「あ、ありがとうございます!!」

「おぅ!」

 俺は部屋を飛び出して、急いで下に降りていく。


 これで俺は、やっと冒険者になれた。

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