再び会った。
「あ?何見てんだよ。」
「いえ、別に。」
「はっ、やっぱ見た目通り弱虫なやつだ。」
「だねぇ。アタイもすぐ死ぬ方に賭けたらよかったかな?」
「おい!家に帰ってママにでも養ってもらえよ!テメェみたいな、弱虫の雑魚には冒険者なんか出来っこねーぞー!!」
「だな。帰れ、帰れ!!」
こういう輩は無視した方がいい奴らだ。
相手するだけ時間の無駄。
だが、そんな奴らはこちらの事情などお構いなしで、こちらへとニヤニヤしながら近づいて来た。
「おいおい。何無視してんだよ?先輩の助言はちゃんと聞いた方がいいぞ〜?」
近くまで来てわかったが、顔も赤く強いお酒の臭いが漂ってくる。
まだ夕方にもなっていないのに、依頼もせず飲んだくれてる奴の何が冒険者なんだろうか。
「あの、どっちなんですか?」
「あ?何がだよ?」
「だから、さっきは弱虫は帰れって言いましたよね?なのに先輩冒険者の助言は聞けと、まだ一般人の俺に言う。俺のことを弱虫の平民として見ているのか、冒険者として見てるのか。どっちかはっきりしてくれません?」
「んだと?」
「冒険者の先輩としても人生の先輩としても、そんなにハッキリしない態度ってどうかと思いますが。」
「…テメェ。」
言ってしまった。だが、今の俺はすごくムカムカしていた。
テイルの様な冒険者に憧れてギルドに来たのに、こんな呑んだくれを見たことにだ。
「お前、俺様にそんな口聞いていいと思っているのか。」
「別にあなたのことは知りません。あの、早く登録したいんです。ご覧の通り弱虫なんで、絡まれても困るんですが。」
「んだとぉ!?」
相手のハゲは興奮した様子で、俺の胸ぐらを掴んでくる。あれ、これやばいな。
ていうか、受付嬢は何をしているんだろうか。冒険者にまだ登録しに来ただけの一般人が絡まれているというのに。
チラッと受付嬢を見ると、気怠そうに自身の爪を見ている。というか、あいつも俺のこと見てニヤついてないか?
こうなったら…。
「[広告ガチャ]発動。………あれ?」
「あぁ?」
「[広告ガチャ]。[広告ガチャ]!…何故、発動しない?壊れた。いや、そんなことあるか?え、どうしよ。」
「てめぇ、さっきから何ブツブツ言ってやがる。」
ハゲがなんか言っているが、それどころではない。何故か俺のスキルが発動しないのだ。
「さっきから舐めた真似しやがって!!!」
「あ、ちょ!待って!待って!!」
「ウルセェ!!」
そうこうして焦っていると、ハゲが拳を振りかぶって来た。
だが、いつまで経っても衝撃は来ない。
恐る恐る目を開けてみると、ハゲの手を誰かが掴んで止めていた。
「貴様、一体何をしている?」
「あ!?何だ、て、めぇ…!……あ、いや。あの。あ、はは…。」
「て、テイル…?ミールさんも。」
「少年、大丈夫か?」
ハゲの手を掴んだのは、門の前で別れたはずの二人の姿だった。
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