ダメだった。
「何で、ここに…。」
「やはりユウヒのことが心配でな。まぁ、俺たちの用も済んだから、探していたんだが…。こんなことになっているとは…。」
テイルはそう言うと、周りの冒険者を睨み出した。
「よりにもよって、こっちのギルドに来るとはな。」
「こ、こっち?」
「あぁ、言い忘れていたが。王都にはギルドが二つあって、こことは離れたところにもあるんだ。そこにはこんな呑んだくれた輩はあまりおらん。真面目な者が多いんだ。」
「もしここにユウヒが来ていたらどうしようかと、急いで来たんだ。そしたら案の定、これだ。すまないな、俺のミスだ。ちゃんと伝えておけばよかった。」
「い、いや。別に謝る必要はない。」
謝るテイルに手を振って、大丈夫だとアピールした。
「い!いでぇ!!いででででッ!!離して、離してください!!」
安堵した様に俺を見たテイルは、掴んでいた手をさらに捻り上げる。
痛がっている声を無視し、ミールさんが話しかけて来た。
「少年はもうギルドには登録したのか?」
「いや、まだ。」
「ほう?なら登録前の平民に手を出したことになるのか。その場合は…。」
「冒険者の資格を剥奪した上で、牢獄行きかと。ですが、未遂のため罰金刑になると思われます。」
「そうか。まぁ、ただ見ていた冒険者にも同じ風にしたいが…。コイツだけでいいか。」
そう言ってテイルが辺りを見回すと、さっきまで面白そうに囃し立てていた冒険者たちは、黙って目を逸らしていく。
それを見てつまらなそうに鼻を鳴らすと、今度は受付嬢へと話しかけた。
「君、名前は?」
「あ…!て、テイル様!私の名前はミミって言います!テイル様の活躍はとてもよくお聞きして、この前の
先ほどまでの俺への態度とは一転し、声色を変え色目を使うように話していく受付嬢。
だが、テイルはそんな受付嬢にも冷たい目を向けていた。
「そんなことはどうでもいい。貴様、ユウヒが絡まれているのを黙って見ていたな?殴られそうになってもだ。」
「え?あ、それは…。その!その子も悪いんですよ!?冒険者に口答えして、煽るように話していたんですから!」
「なら何故止めない?」
「え?」
「ユウヒが口答えした。それに吊られるようにコイツが向かっていった。それは今更いい。だが、それを何故止めようとしなかった。君はその現場を見ていたんだろう?」
「え、あ、私は!女ですから、冒険者に向かっていくなんて、とても出来ることでは…!」
「少年が絡まれている間、他の人を呼ぶ時間くらいはあった筈だが。それすらせずに、そこでニヤついて見ていただろう?私は知っているぞ?見ていたからな。」
「あ、いや。その。」
「君も受付嬢ならミールのスキルくらい知っているだろう?俺たちはずっと外から[千里眼]で見ていたんだよ。今更言い逃れられると思っているのか?」
「…す、すいません。」
流石に言い逃れできないと思ったのか、素直に謝った受付嬢。
だが…。
「いや、もう遅いぞ。ミール。」
「はっ!スゥー……、ガンテ!!!今すぐ下へ降りてこい!!!!」
鼓膜が破れるんじゃないかという位の大きな声で、ミールさんは誰かの声を呼び出した。
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