ギルドだ。
「数字が、ない…?いや、これは増えていくのか?」
[ーーー]と表示されている一本の細剣だった。刀身に紫の線が入ったそれを見た俺はなぜか、心が突き動かされる感覚がした。
「これだ。これにする!」
「…お主、なぜそれを選んだ?」
「これを見た途端に何故だか分からないが、これしか無いと思った。」
そう言うと、不服そうに武器屋のおじさんは
「…ふん!一応は合格じゃな!持っていけ。ワシの作った物じゃないのは癪じゃが、その方が小僧に合っているだろう。それは持ち主と共に強くなる剣。今はまだカスみたいな剣じゃが、使えば使うほど切れ味は増し、手に馴染むようになる。それに刃こぼれもせん。刀身に刻まれた銘は〔
「斬永…。」
「わしゃ信じとらんが、お主がそれを取ったのは運命かもしれんな。現にそれを取ったのは主が初めてじゃ。その棚は初心者のやつがよう見よるが、誰もその剣にゃ触れんかったからの。」
「この剣はもらっても良いんだよな?」
「約束じゃからの。それと…ほれ!」
「お…っと!……これって、もしかして。」
おじさんが投げて来たのは、胴と腕、そして膝下あたりまでを守る用の防具だ。
そして俺の手にある斬永と同じように、所々に紫の線が入っており、数字の欄には[ーーー]と表示されていた。
「おそらく、それと出処は同じもんじゃろ。一緒に紛れとったもんじゃ。銘は[
「…ありがとう。」
「ふん!まぁ、不良在庫だったからの。処分出来てスッキリしたわい!」
「…。ふっ、だな。確かに受け取った。それに、はい。」
「なんじゃ、これは。」
俺はカウンターに金が入った袋を置いた。
「これは、まさか金貨か!?タダでやると言っとるじゃろうが!貴様、わしに恥をかかすつもりか!」
「うん、なんかこのままもらうの腹立つし。それに良いものにはお金を払わなきゃじゃん。…でしょ?」
「…勝手に、せい!」
「ん、勝手にする。あと、また来るからな。この剣と鎧を強くして。」
俺はそう言って、武器屋を後にした。
「あやつ、案外化けるかもの。最初はいつもの冷やかしかと思ったが。まぁ、流石は勇者と同郷の者ってところかの。」
ーーーーーーーーーーーー
やって来ました。ギルドです!
外観は少しボロいけど、なんか風格があってちょっと圧倒されるかも。
いや、俺は冒険者になって向こうに帰るんだ。こんなとこで、立ち止まるつもりはない。
俺はギルドの扉を開けて、中へと足を踏み入れた。
だいぶ視線を感じる。
なんかヒロキはここで先輩冒険者に絡まれると言っていた。少し警戒するとしようか。
だが、そんな俺の警戒を他所に、窓口のところへはすぐに辿り着いた。
「あの、冒険者になりたいんですけど…。」
「…えぇ?ふーん。はぁ…、はいはい、これね。…ったく。どうせ…無理だろうに。」
俺が受付嬢の人に話しかけると、気だるそうに俺を見た後、なぜかため息をついて紙とペンを渡して来た。それに何かモゴモゴと小声で言っていた。
少しだけイラっとしたが、これを書いたら冒険者になれると思うと、そんなものは関係なく思えた。
すると、斜め後ろ側から数人の不愉快な声が聞こえた。
「なぁ、アイツ冒険者になるんだってよ。」
「あぁ、あんなナリでなれると思ってるのかな?今日も賭けるか?」
「じゃあ、俺はすぐ死ぬに銅貨五枚。」
「アタイは二回はもつに銀貨三枚。」
「いや、無理だろ。俺は、その前に逃げ出すに賭ける。」
俺は賭けの対象になっているようだ。
しかも、失礼なことを言っている。これがヒロキの言っていたテンプレというものなのだろうか。
その声がする方をチラッと見た。
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