ギルドだ。


「数字が、ない…?いや、これは増えていくのか?」

[ーーー]と表示されている一本の細剣だった。刀身に紫の線が入ったそれを見た俺はなぜか、心が突き動かされる感覚がした。


「これだ。これにする!」

「…お主、なぜそれを選んだ?」

「これを見た途端に何故だか分からないが、これしか無いと思った。」

 そう言うと、不服そうに武器屋のおじさんは


「…ふん!一応は合格じゃな!持っていけ。ワシの作った物じゃないのは癪じゃが、その方が小僧に合っているだろう。それは持ち主と共に強くなる剣。今はまだカスみたいな剣じゃが、使えば使うほど切れ味は増し、手に馴染むようになる。それに刃こぼれもせん。刀身に刻まれた銘は〔斬永ざんえい〕。出処はわしゃ知らん。二十年前に、いつの間にかその棚に紛れとったもんじゃ。」

「斬永…。」

「わしゃ信じとらんが、お主がそれを取ったのは運命かもしれんな。現にそれを取ったのは主が初めてじゃ。その棚は初心者のやつがよう見よるが、誰もその剣にゃ触れんかったからの。」


「この剣はもらっても良いんだよな?」

「約束じゃからの。それと…ほれ!」

「お…っと!……これって、もしかして。」

 おじさんが投げて来たのは、胴と腕、そして膝下あたりまでを守る用の防具だ。

 そして俺の手にある斬永と同じように、所々に紫の線が入っており、数字の欄には[ーーー]と表示されていた。


「おそらく、それと出処は同じもんじゃろ。一緒に紛れとったもんじゃ。銘は[綺望きぼう]と言う。決して、汚れず。決して、傷付かず。斬永と同じように持ち主と共に強くなる。同じもんは揃えとったほうがええじゃろ。」

「…ありがとう。」

「ふん!まぁ、不良在庫だったからの。処分出来てスッキリしたわい!」

「…。ふっ、だな。確かに受け取った。それに、はい。」

「なんじゃ、これは。」

 俺はカウンターに金が入った袋を置いた。


「これは、まさか金貨か!?タダでやると言っとるじゃろうが!貴様、わしに恥をかかすつもりか!」

「うん、なんかこのままもらうの腹立つし。それに良いものにはお金を払わなきゃじゃん。…でしょ?」

「…勝手に、せい!」

「ん、勝手にする。あと、また来るからな。この剣と鎧を強くして。」


 俺はそう言って、武器屋を後にした。


「あやつ、案外化けるかもの。最初はいつもの冷やかしかと思ったが。まぁ、流石は勇者と同郷の者ってところかの。」

 


 ーーーーーーーーーーーー


 やって来ました。ギルドです!

 外観は少しボロいけど、なんか風格があってちょっと圧倒されるかも。

 いや、俺は冒険者になって向こうに帰るんだ。こんなとこで、立ち止まるつもりはない。


 俺はギルドの扉を開けて、中へと足を踏み入れた。

 だいぶ視線を感じる。

 なんかヒロキはここで先輩冒険者に絡まれると言っていた。少し警戒するとしようか。

 だが、そんな俺の警戒を他所に、窓口のところへはすぐに辿り着いた。


「あの、冒険者になりたいんですけど…。」

「…えぇ?ふーん。はぁ…、はいはい、これね。…ったく。どうせ…無理だろうに。」

 俺が受付嬢の人に話しかけると、気だるそうに俺を見た後、なぜかため息をついて紙とペンを渡して来た。それに何かモゴモゴと小声で言っていた。

 少しだけイラっとしたが、これを書いたら冒険者になれると思うと、そんなものは関係なく思えた。


 すると、斜め後ろ側から数人の不愉快な声が聞こえた。


「なぁ、アイツ冒険者になるんだってよ。」

「あぁ、あんなナリでなれると思ってるのかな?今日も賭けるか?」

「じゃあ、俺はすぐ死ぬに銅貨五枚。」

「アタイは二回はもつに銀貨三枚。」

「いや、無理だろ。俺は、その前に逃げ出すに賭ける。」


 俺は賭けの対象になっているようだ。

 しかも、失礼なことを言っている。これがヒロキの言っていたテンプレというものなのだろうか。

 その声がする方をチラッと見た。


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