なんかいけた。


 流れて来た広告はゴブリン戦に使った、あの広告だった。

 この広告は二回目(前の世界を入れると数十回)になる。相も変わらず、イケイケな二頭身の男キャラが姫を助けようと、幾つもある塔を攻略している。

 見ていて思うのだが、最後の999とカンストしているボスと戦っているところなど見たことがないな。大抵は、最初の雑魚に苦戦している。


「な!なんじゃ、これは!!」

「…え?あれ、武器屋にいる。前はあの部屋に飛ばされたよな?」


 なぜか俺は前の白い部屋に飛ばされていなく、あの広告は空中に浮かんでいる画面に、映し出されていた。

 しかもその広告は武器屋のおじさんに見えている様で、初めて見る広告にとても驚いていた。


「小僧!わしに、何かしおったか!畜生め!」

「え?あー…、なんていうかスキルの力っていうのか?俺の力なんで、別に大丈夫なんで。」

「スキルじゃとぉ?こんな奇怪なスキルもあるのか!初めて見るわい。」

 おじさんは興味深そうに画面を眺めていた。


 そしていつの間にかスキップが可能になっていた様で、俺は画面の左上を押す。


「ほっ!なんじゃ、もう終わりか?面白そうだったの!」

「いや、多分面白くはないと思うけど…。」

 おじさんはなぜかキラキラした目でこちらを見ていた。

 やっぱりこういうゲームみたいなものは、こちらの世界にはないのだろう。


 まぁ、そんなことより。

「やはり、出て来たな。もしかしてこの数字で強い武具を見極めろということか。」


 俺の目に映るのは、ゴブリン戦の時と同じ数字の群れ。

 あの時の木の棒は、数字が2だったり5だったりしたが、やはりちゃんとした武器は桁が違うみたいだ。

 100を超えるものが、ゴロゴロとある。

 流石に数字は武器屋のおじさんには見えていない様で、先ほどの様な驚きを見せていない。武具の見極めを再開した俺を、じっと見ていた。


「うーわ、マジか。なぁ!これとこれとこれって強い武器だろ!」

 そう言って俺が指したのは、壁に飾ってあった大剣と、その横の大斧。そして漆黒の防具。

 どちらも上の数字は、9999と表示されている。


「ほう!すごいな。確かにそれはワシの最高傑作と言っても過言ではない。」

「ふふんっ!やっぱりな。どうだ見極める事ができたろ!」

「じゃが、貴様に持てるのか?そんな細っこい体で。それらは、軽く100はあるんじゃぞ。」

「え?…あ。無理じゃん。」

 確かに帰宅部の俺にはどれも持てそうにない物ばかりだった。

 そんな俺を、おじさんは馬鹿を見るような目で見ていた。


「ぐぬぬ…!いや、でもこのスキルの力があれば!……ダメだ、スキルが切れたらどうするんだよ。棍棒の時もそうだったじゃん。」

 俺はそう独りごちて、別の武具を探すようにする。

 もちろん、なるべく軽そうなものだ。


 そう思っていると、俺の目にあるものが飛び込んできた。

 それは、数字が低い武器が纏められている棚の中にあった。

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