助かった。



「あの、これって幾らくらいで買えますかね?」

「ん?あぁ、こりゃ売りもんじゃないよ。ただのサンプルさ。今から作るからちょっと待っとくれ。」

「あ、分かりました。ありがとうございます。」


 腹が減っては戦はできぬ。

 森にいた時から思っていたが、俺は今とても腹が空いていた。

 その為、まずは腹ごしらえとしてとても美味しそうな肉を焼いている店に来ている。

 これは何の肉だろうか?細いケバブみたいな見た目をしているソレを眺めていると、焼き終わったみたいだ。


「はいよ、屑貨三枚だ。」

「え、はい。えっと、これでいけますか?」

「ちょっと!?あんた、こんな大金…!うちではお釣りが出せないよ!!」

「え?あ、どうしよ。」

 金貨を出したら、お店のおばさんに怒られてしまった。

 やっぱり、このお金じゃ無理なのか。どうしよう、すごい腹減ってるんだけどな…。


 そうやって、今からテイル達を追いかけようか等と考えていると、俺の横からスッと手が差し伸べられた。


「おばちゃん!これ、うちとこの子の分ね!」

「え?」

「おー、みっちゃん。また来てくれたのかい。でも、良いのかい?」

「大丈夫!これでも、稼いでるからね!」

「そうかい?なら先にアンタの分ね。はい、これ!」

 俺の隣から黒ローブを着ているからよく分からないが、声的に女の子だと分かる子がお金を出している。


「いや、そんな申し訳ないですよ!」

「んー、いいよ別に。これも何かの縁。それに初めてでしょ、この世…ここに来るの。」

「え、うん。よく、分かったね。」

「あー…まぁ、分かるよ。それに困ってる子はほっとけないよー。それじゃ!」

 その子は何か慌てた様子で、俺の前から去っていく。


「また来なよ、みっちゃん!」

「んー!また色々終わったらくるねー!」

「あ、ありがとうございます!!」

「兄ちゃんも頑張ってやー!…あ、やばいやばい。」

「やー…?」

 彼女は人混みを掻き分けて、去っていった。

 てか、やー!って…。


「…んた!あんた!」

「んぁ!はい!?」

「ほら、あんたの分だよ!あの子に感謝するんだよ?それと、それしかお金がないんならどっかで両替して来な!」

「あ、すいません。あの、ちなみに両替ってどこで…?」

「あそこを曲がったとこに、緑の大きい看板があるから。そこに銀行があるよ。そこだったら両替してもらえるさ。」

「あ、そうですか。ありがとうございます。あの、また来ます。すいませんでした。」

「あいよ!」


 店のおばさんにお礼を告げ、案内された銀行に行く。

 そこで金貨五枚を両替してもらうと、俺は再度街を歩き出す。

 さて、次は…。


「あの、ギルドってどこあるか分かります?」

「あー、ギルドだったらあそこだよ。あの少し高い建物さ。」

「ありがとうございます!」

 腹を満たした俺は、目的であるギルドへと向かうのだった。


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