彼は言った。



『女神から、全て聞いた。…こんなこと初対面のやつ言うのはどうかと思うが。あんたらは一体何をしてるんだ?人と違うからなんだ?自分達と姿形が違うと悪なのか?自分達が一番だと?その為なら他の奴らを虐げてもいいと思っているのか?』


 待ちに待った勇者召喚。

 召喚陣から現れた男は、俺たちを刺す様な目で見据えてそう言った。

 召喚に同席していた俺たちは、勇者のその言葉を聞いた途端、自分達へと嫌悪の感情が溢れ出してくる。

 この現象は魔王を見た時と同じだ。彼の感情が流れ込んでくる。

 その場に泣き出す人が続出した。


『…あんたが、巫女か。女神が悲しんでたよ。だが、簡単にはここには降りられないから見てるしかないって。』

 彼がそう言って見たのは、巫女だ。

 言われた巫女は、その目から逃げる様に俯いていた。


 彼女は、当然問題の矢面に立たされたが、他種族の事以外の国への災害などは正確に伝えてきており、国への貢献はされてきたとの意見も出ていた。

 その為、安易に処罰するのはどうかと、魔王の問題を解決するまでは彼女の扱いを決めかねていた。


『………まぁ、部外者の俺がとやかく言うのは違うか。俺の目的は魔王を倒して向こうに戻る事だからな。』



 ーーーーーーーーーーーー



「彼はそう言って、召喚陣から降りてきた。そして、そこからは勇者の仲間を募り、君も知っての通り魔王は倒された。いや、魔術が破壊されたと言ったほうがいいか。」


「そうだったのか…。なぁ、一ついいか?」


「ん、どうした?」


「森でさ、魔王は生み出した存在じゃない。操る存在だって言ってたじゃん?でも、今の話聞く限り魔王っていう魔術で、魔物が生み出された様に思うんだけど。」


「あぁ、俺たちもそう思っていたよ。だが、違った。勇者とその仲間が魔王キールを追い詰めた時、やつは言ったそうだ。『これは仕組まれた事だ。』ってな。」


「仕組まれた?じゃあ、他にも黒幕がいるのか?」


「…多分。いや、俺たちにもわからないんだ。最初は何を言っているんだと無視していたそうだよ。だが、魔王は倒されたのに森でも見た様に魔物は未だ蔓延っているだろう?だから、魔王が言ったことも強ちウソではないのか。まぁ、それも今となっては分からないがな。」


「そう、だったのか。」


「さて、長々と話したが本題に入ろうか。君には魔力がないため、ミールは魔王だと思った。理由は話した通り、魔王にも魔力は無かったからな。だが、魔王は死者だったから無いんだ。この世界の生きとし生けるものには魔力があり、死者は魔力が空気中へと還元され無くなる。これが常識なんだ。」


「でも、俺は生きてる…。」


「そう。ユウヒは生きてる。まぁ、そんな事考えても俺たちには分からん。だから、まずは門をくぐる方法を考えよう。」

 そう言うとテイルは立ち上がり、ミールさんの方へと歩いていった。

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